上 下
33 / 90
転機

031話 夏季休暇予定

しおりを挟む
 それからは普通に学校に通って夏季休暇がやって来たんだ。でも、日本とは違って夏季休暇は7月20日から9月15日までとかなり長い。それに、宿題が無かった…… まあ宿題は読み書き計算が出来る者が免除されてるんだけどね。出来ない人には宿題が出てるんだよ。
 僕としては自由研究をやりたかったけど、無いなら仕方ないよね。

 で、僕は考えたんだ。せっかく陛下から領地を頂いたのだからその領地を知る必要があると! 領地を先ずは見てみたいというのもあったんだけどね。
 名案でしょ。早速思いつきをセバスに相談してみたんだ。

「なるほど、それは非常に良い考えですな。しかしながら、先ずは陛下か、王太子殿下にお話を通しておく必要があるかと存じます。なに、そちらは私が手配致しますので許可が出たら出発できるように、トーヤ様や一緒に行かれる方はご準備を進めて下さい」

 僕はセバスの返事を聞いてから、ガルン伯爵夫妻に先ずは声をかけたんだ用件を書いたメモ。そしたら、何とサカキ侯爵家から一度顔合わせをしたいと言われたそうで、リラ共々2日後にサカキ侯爵家の領地に行くらしいんだ。期間は1週間だからしょうがないよね。僕は2人に分かったって頷いたんだよ。

「悪いな、トーヤ様。本当はそっちに行きたいんだけどな」とはガルン伯爵。

「私はトーヤ様とご一緒しようかしら? リラはお父さんと一緒なら大丈夫よね?」とはラメル伯爵夫人。

「えっ? それならお父さんがトーヤと一緒に行って、お母さんは私と一緒に来て欲しい」とはリラの言葉。

 リラの言葉にズーンッて擬音が聞こえるほどにガルン伯爵は落ち込んでいたよ。僕はそんなリラにダメだよって意思を込めて肩をポンポンと叩いたよ。

「もちろん、冗談だよー。お父さんも連れて行かなきゃ侯爵様が是非会いたいって言ってるから」

 その言葉に落ち込んでたガルン伯爵が復活して、更に思い出したように僕に言ってきた。

「そうだった、トーヤ様。トウシローさんも連れて行っていいかな? 侯爵様がトウシローさんにも会いたいって言ってるんだが」

 ああ、そう言えばサカキ侯爵家は元を辿ればトウシローと同郷なんだってね。僕は頷いて了承したよ。
 それからフェルちゃんの部屋に向かった僕は、フェルちゃんに領地視察に行かないか聞いてみたんだ。え? 先ずは婚約者に先に言うべきだって? そんな小さな事(話す順番)を気にする人じゃないよ、僕の婚約者は。まあ、種を明かせばフェルちゃんの部屋に行くまでにガルン伯爵夫妻の部屋があるってだけなんだよね。

「まあ、トーヤ様。それは素晴らしいですわ。是非ともご一緒させて下さい。それで、いつ出発致しますの? レミも一緒でよろしいのでしょうか?」

 僕は頷きながら一言だけ付け加えたよ。頷きはレミさんが一緒でも構わないという意思表示だね。

「王家の許可」 

 という僕の短い言葉で全てを悟ってくれるフェルちゃんは本当に凄いと思うんだ。

「まあまあ、セバスさんなら早ければ明日にでも許可を取ってきて下さいますわね。レミ、早速準備しましょう!」

「はい、フェル様。私も楽しみです」

 2人が楽しそうに準備を始めたので、僕は部屋を出てハレに会いに行ったんだ。何人かの侍女も一緒に来てもらおうと思ってね。
 ハレに領地視察の件を伝えて、今回はトウシローはガルン伯爵家と一緒にサカキ侯爵家の領地に行くから、何人かの侍女に一緒に来てもらいたいと言うとハレは悩み始めた。

「領地視察、侍女」

 って言葉で分かるハレも凄いけどね……

 アレ? ひょっとして何人か抜けたらこの屋敷の仕事がしんどくなるのかな? そう思った僕はハレに、

「1人?」

 と言ってみたら、

「違いますよ、トーヤ様。コチラが手薄になるからではなくて、みんなが行きたがるので誰を選べば一番良いのか悩んでいるのです…… トーヤ親衛隊は益々トーヤ様とフェル様、それにリラ様に首ったけになっておりますから、下手をしたら血を見る事になりますので……」

 と言われてしまった。何、ソレ…… いや、おかしいでしょ身内で争うなんて。僕の目に浮かんだ恐怖に気がついたハレは直ぐに笑顔になってこう言った。

「申し訳ございません、トーヤ様。でも、10歳になられてお三人ともとても見目麗しくなられましたので、しょうがないと私とセラスも諦めております。でも、血で血を洗うような争いが起こらないように何とかしてみますのでご安心下さい。取り敢えず2名でよろしいですか?」

 ハレの言葉に全然安心出来なかった僕は、くれぐれも頼むよという意図を込めて頷いたよ。
 そして夕食の時にハレから親衛隊特攻隊長のナーガと副隊長のメレンが同行する事になりましたと教えられたんだ。
 待機してる侍女たちをチラッと見たら、勝ち誇った顔をしたナーガとメレン。そして悔しそうに2人を睨む他の侍女たちを見て即座に目をそらしたよ。
 夕食の途中でセバスが王宮から戻ってきたって聞いたから食べながら聞くよと頷いてセバスに来てもらった。

「トーヤ様、領地視察は陛下から了承頂けました。いつ向かっても構わないそうです。それから、陛下から案内役として領地出身の者を付けて下さるとの事でしたので、出発日時を王家にお知らせする必要がございます。いつになさいますか?」

 僕がフェルちゃんを見たら、フェルちゃんが返事をしてくれた。

「今日の明日というのは急過ぎると思いますから、明後日の10の時に出発するというのはどうでしょうか?」
 
 フェルちゃんの言葉を聞いて僕は頷いて了承したんだ。セバスもそれを確認して返事をした。

「かしこまりましたトーヤ様、フェル様。王家にお知らせしておきます。また今回は私は同行致しませんが、ロッテンが同行致しますので、よろしくお願い致します」

 やった、ロッテンが来てくれるなら安心だね。何か名産品とかがあれば良いなって思ってたけど、ロッテンなら色々と教えて貰えるよ。
 僕は笑顔でセバスに頷いて了承したよ。
 
 陛下に領地を与えると言われた時にセバスやロッテンに頼んで領地の事を少し調べて貰ってたから早く見に行きたかったんだよね。
 そこは王都から3キロしか離れてないけど、随分な田舎で街じゃなくて村しかないそうだけど、僕が前世で大好きだったものがある筈なんだ。セバスやロッテンの出してくれた調査報告書を読んで間違いないと思ってるんだけど。
 そこに住む人たちは気味悪がって近づかないそうだけど、僕は確信してるんだ、そう、温泉があるってね! 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります

ねこ鍋
ファンタジー
光の勇者として幼い頃から横暴の限りを尽くしてきたエリー。荷物持ちの俺は奴隷のように扱われていたが、それでも彼女の力になれるのだからとガマンしてきた。しかしある日、エリーの気まぐれで俺は命を落としてしまう。 その後、勇者の力で復活させられたが、それを見ていた女神様がついに愛想を尽かし、エリーから勇者の資格を剥奪してしまった。 世界最強の勇者から、一転して世界最弱の無能冒険者に成り下がったエリー。このままでは死んでしまうと怯えるエリーに、俺はこう提案した。 「俺と奴隷契約を結ぶなら助けてやろう」 こうして横暴幼馴染を奴隷にした俺は、さらに<奴隷化>という伝説のスキルが発現していたことも発覚する。これは相手を屈服させれば勇者でも魔王でも奴隷にできる最強スキル。しかも奴隷と仲良くなるほど俺も奴隷も強くなるため、エリーを愛しまくっていたらエリーも俺が好きだと発覚した。 これは奴隷にした勇者を愛しまくり、やがて嫁にするまでの物語。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

処理中です...