跳舞猫日録

踊る猫

文字の大きさ
上 下
20 / 58

2023/01/12 BGM: b-flower - Both Sides, Now

しおりを挟む
今日は休みだった。古田徹也『いつもの言葉を哲学する』を読む。この本は「ぼくらの時代の文章読本」として読めると思った。「やさしい日本語」、つまり主に外国人向けに記されたわかりやすい日本語について書かれたところが目を引く。私の知り合いにも日本語教師の方が何人かおられるから、その人たちにもお勧めしたい本だと思ったのだ。古田はこの本で、「やさしい日本語」の意義を認めた上でそれがジョージ・オーウェル『1984年』に登場する「ニュースピーク」になりうる可能性について記している。「わかりやすく書き直された言葉」が孕む暴力性について古田は考察する。これはなかなか深いと唸った。

「ニュースピーク」をつまり、「多様な/オルタナティブな書き方」を排した「暴力的なほどわかりやすい言葉」「誤読の余地がないほどシンプルな言葉」と理解すると(ただし、私は不勉強にも『1984年』を読んでいないので誤解があればご指摘下さい)、その「ニュースピーク」と「やさしい日本語」の相違は見えてくる。「やさしい日本語」は決して「これが絶対的な書き方」「こう書かねばならない」と他を排除するものではないからだ。私のこの文章のような悪文にも存在意義があることを認めた上で、なお伝わるように「オルタナティブな書き方」な試みとして存在するのが「やさしい日本語」だと理解する。

「やさしい日本語」は、ゆえに日本語を活性化させる斬新さ/新鮮さを備えていると言えないだろうか。もちろんそれが古田が懸念するように他の書き方を排除する方向に働いてはまずいわけだが、私はそんな危険性を感じない。ただ、だから古田がナンセンスとかそんなことを言いたいわけではなく、古田が懸念する現象は、別の形での粗暴なわかりやすさの中に表れていると思う。例えば逐一(神経症的にさえ感じさせられる)テレビ番組やYouTube動画などで登場するテロップ。あるいはカタカナ語の氾濫(これは古田も別の節を設けて論じている)。そのあたりを私なりに考えてみたいと思わされた。古田の他の本と同じく好著だと思う。

夜、オンラインミーティングに参加する。そこで私が巷で使われている「タイムパフォーマンス」「タイパ」という言葉とミヒャエル・エンデ『モモ』について話した。時間を節約してムダを省くことを追求する姿勢を意味する「タイパ」という言葉だが、私の人生においてもムダはあったわけで(「大学時代の4年間を遊んで暮らした」「酒に溺れて金と時間を浪費した」など)、それを後悔しても始まらない……『モモ』に登場する「時間貯蓄銀行」の人間なら「実にムダだ」と私をなじるかもしれない。だが、その「ムダ」をこの身体を通して身に沁みる形で体験しないとわからなかったこともある。そう考えれば今の私にとって「ムダ」ではない。それを再確認することができて、楽しいひと時だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...