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根拠のない推論

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 今回の事件、黒幕はグラズ家かと思っていたが、彼らはただ鉱石を加工し、魔法鎧を作り、それを誰かに売ろうとしていただけだった。

 つまりは、グラズ家は金儲けをしていただけに過ぎず、その裏に魔法戦力を蓄えようとしている別の勢力がいる。

 それが、私の結論だった。

 魔法工場の奥で目にした黒装束の男には、戦う力がなさそうだったことから、彼はただの橋渡し役だと思われる。

 その後ろにいるのはいったいどんな集団だ?

 私は自分の部屋で一人考える。

 一つだけ、心当たりがあった。

 私がグラズ家とあまり交流したことがなかったのは、貴族派閥の関係だ。

 グラズ家の上には、その親玉的な貴族家がある。

 ベルドロール家。

 私の家と昔から対立関係にある巨大な貴族家だ。

 平和を求める私たちと、常に戦力を保有することを第一に行動するベルドロール家は、長らく交流を行っておらず、その傘下の貴族たち同士もあまり仲が良くない。

「ベルドロール家が、裏で魔法戦力を整えようとしている……?」

 だが、それは根拠のない推論だ。

 何か決定的な証拠がなければ、調査をすることはできないだろう。

 グラズ家は現在、王国騎士団によって調査中だが、もし取引相手がベルドロール家ならば、痕跡を残すようなヘマはしていないはずだ。

「しばらくの間は様子見をするしかないか……」

 まだベルドロール家の関与が決まったわけでもない。

 だが、誰かが透明石粒を買おうとしたことだけは事実だ。

 私はもやもやしたまま、ベッドにごろんと横になった。

 騎士団が現れたので、さっさと帰ってきてしまったが、明日はギルドに顔を出して、受付のお姉さんにお礼を言わなくては。

 そんなことを思っているうちに、私は眠ってしまっていた。
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