5 / 8
「大丈夫」
しおりを挟むその日りこはクラスの子たちに『この話を聞いた人のところに出るんだって』という怪談話を聞かされた。それまで家でそれなりの霊体験をしていたが、本質的には怖がりで出来ればその手のものに関わりたくないというのが本音だ。
(……きたら、どうしよう)
聞かされた内容が頭をぐるぐるとめぐる。
その日は一人で寝るのが嫌で、母親の布団に潜り込んだ。両親の寝室が一番安全だと体感で知っていたのもある。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
母親に宥められながらも、りこはぶるぶると震えていた。やがて、宥めてくれていた母から寝息が聞こえてくるのに気付いて、更に震えが大きくなる。
(やだ、やだ、やだ、こわい……!)
ぎゅうっと母親にしがみついて、目を瞑る。布団にもぐりこんで、顔も隠す。見つかってしまわないように、ぎゅうっと。
――すると、声が聞こえた。
『――もう来ないから、大丈夫』
瞼の裏がぱっと明るくなって、――気付けば朝だった。母は既に起きていて、父のいびきだけが部屋に響いていた。
あの声は母ではなかった。母ではない、若い女性の声。その声はもう大丈夫と言った。
(――守護霊さまだったのかな)
りこが怖がりすぎていた為、いたたまれなくて話かけてきてくれたのだろうか。
何にせよ、まだ起きるにはまだ早い。りこは布団をかぶって二度寝することにした。
1
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
機織姫
ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
餅太郎の恐怖箱
坂本餅太郎
ホラー
坂本餅太郎が贈る、掌編ホラーの珠玉の詰め合わせ――。
不意に開かれた扉の向こうには、日常が反転する恐怖の世界が待っています。
見知らぬ町に迷い込んだ男が遭遇する不可解な住人たち。
古びた鏡に映る自分ではない“何か”。
誰もいないはずの家から聞こえる足音の正体……。
「餅太郎の恐怖箱」には、短いながらも心に深く爪痕を残す物語が詰め込まれています。
あなたの隣にも潜むかもしれない“日常の中の異界”を、ぜひその目で確かめてください。
一度開いたら、二度と元には戻れない――これは、あなたに向けた恐怖の招待状です。
---
読み切りホラー掌編集です。
毎晩20:20更新!(予定)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる