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社内報にまわすべき?
しおりを挟む正月は毎年実家に帰っている。そこでボードに行く兄貴にクルマを貸し出して、実家でのんびりしている。帰りは電車だ。
でも今年はほっけがいるから、日帰りで帰ってきた。実家の猫もかわいいけど、ほっけが一番だなぁ。
年末年始の休みが短いあたしと違って、長い休みの兄貴は、あたしが仕事に出ている間にクルマを返しに来る。クルマの中に信州産のお茶漬けだったり地酒だったりがお土産として入ってるんだけど、お嫁ちゃんがもっと気の利いたものを直接渡すべきだと不満に感じているのを、あたしは知っている。いいお嫁ちゃんを貰ったよね、兄貴ってば。いいんだよ、年始は仕事が忙しいからなかなか会うなんてできないもん。お土産を買ってくるようになっただけ、兄貴も成長したわけなんだし。
短い正月休みが明けて、数日ぶりに出勤をする。
世間はまだ正月気分に満ち満ちていて、毎年のこととはいえ、なんだか損をした気分になる。それでも、現場にいた頃はもっと短かったから、文句は言えない。
商品管理課のフロアに足を踏み入れると、いつもと変わらず、課長は既に仕事を始めていた。
「あけましておめでとうございます」
PCと睨めっこしている課長に、新年のあいさつをする。
「おめでとう。今年もよろしく」
「よろしくお願いします」
軽く会釈をして、フロア内にあるロッカーにかばんを入れる。ここの支社は制服を着る必要がないから、ロッカールームなんてものはない。
「あの子、年末に手術したんだ。うまくいったって。まだ病院のケージの中で管に繋がれてるらしいけど」
出社しているのはあたしと課長だけなせいか、背中にそう声をかけてきた。
「そうですか。よかったですね。ひと山越えましたね」
「ああ。年末はちょっと取り乱して、悪かったな」
「いえ。課長の親バカっぷりが見れて、貴重でしたよ」
「ははは。忘れておいて」
乾いた笑いでそう照れている課長の姿。おお、これは……天然記念物並みだ。写メ撮って社内報にまわすべき? 一瞬しかなかったチャンスに、半分真剣にそう思ってしまった。
給湯室でお茶の用意とかいつもの準備をしている間に、みんなが出社してくる。毎朝の「おはよう」が「あけましておめでとうございます」に変わるだけで、年末年始の休み期間で溜りに溜まった伝票に追われる日常が待っているんだ。
休みは嬉しいけど、その間に発生したトラブルとか伝票とかを考えると、あんまりありがたくない。
若いときは、それでも休みは弾けまくってたんだけどな。よこちゃんのぷるるんとした肌の透きとおったつやを見ると、羨ましくてならなくなる。
はぁ~、新年早々溜息ついちゃった。
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