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 それは、実家からの一本の電話だった。

「和希くんのお母様が、どうしても香織にお会いしたいって」

 母親の声音も戸惑ったようだったけれど、それ以上に香織も戸惑っていた。

「な、なんで…?」

 もう何も関係ないのだけれど、それでも焦ってしまう。

 私はあの人が嫌い…というよりも、怖かったのだ。





 初めて和希の両親に挨拶に行ったのは、結婚相手として連れていかれた時だ。和希はそれまで香織のことを話したことはなかったらしく、向こうの両親が驚くのは当たり前のことだった。
 私は自分のためにも、仲良く出来たらと思っていた。まさか反対されるなんて思っていなかったから。

 反対された理由は、ただ私が気に入らないかららしい。結婚しても仕事を続けると言った私に、専業主婦になるのが当たり前だと言った。だから仕事を辞めると言ったら、そんなに簡単に辞められる仕事なのかと責められた。
 人間だし相性もあるから、仕方ないことだと割り切っていた。けれど会うたびに文句を言われて、とうとうあの人が怖くなってしまったのだ。

 だから望んで会うなんて、考えられなかった。

            
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