側室だって恋がしたいのです。

2

「ミリア様。食事の用意が出来ましたが」
「あらそう」
　横目で粗末な飯を見る。持ってきた侍女二人はクスクスと笑っている。どうやら何か…虫かゴミか、とりあえず何かが仕込まれているようだ。
「今日は結構よ」
「はい？」
　相当手を込めたのか、表紙抜けた顔をする侍女にニッコリと笑いかける。
「食欲がないの」
　それを聞いた途端の侍女の顔といったら。それはそれは嬉しそうに、「そうですか」と言って下がった。このパターンはあれか、三日くらい飯を持ってこないで、「食欲がないそうなので」とか言うパターンか。
　別にいいけどね。
「あの子達は知らないんだろうなぁ…」
　私がこの部屋の秘密を知ってしまったのは、少し前のことだった。


　昔々、あるところに、可哀想な隣国のお姫様がいました。この国に嫁いできたそのお姫様は、好きな人がいたにも関わらず、無理矢理この部屋に側室として押し込まれていました。
　そんな彼女がどうにか息の詰まるこの部屋から出ようと奮闘した結果、この部屋に秘密の通路を作ったのです。


「そ、れ、こ、そ、がっ！これだー！」
　てれれてっててー、隠し通路～。
　寝所の屏風の向こう、少し壁を押せば。あら簡単、扉になっていました～。いやぁ、いつに出来たものかは知りませんけど。ありがとう、ここに住んでたお姫様。因みにこの仕掛けは、この前私が部屋を掃除していたら手紙を見つけまして。そこに書いていたものでございます。タイトルは『囚われた貴女へ』。いやぁ、笑いましたね。ユニークなお姫様。
　そしてここを通ってずっと進めば、なんと、城の塀の外ーー街へ出ることが出来るのです。いやもう、最高ですね。

　というわけで。
　前に出たときに宝石を売り払ったお金で、普通にまともなご飯を食べに行こうと思います。れっつごー。