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しおりを挟む「いやっ、あの、これは…!」
喉から上手いこと声が出ないそんな俺をオルキスは呆れたように見つめ、リオナはネオハルト公爵の元へと駆け寄った。
「お父様!」
「あぁ、リオナ……誰だ?その薄汚い女は」
明らかにミーシャのことだろう。確かに、当たり前ながら質素な服は黒く汚れており、埃を被っている。どうやら本格的に侵入してきたようだ。
「さぁ?エドワード様のお知り合いの方ではございませんの」
そう言ってにこりと笑うリオナ。きっと結婚したら、俺は尻に敷かれるのだろうな、なんて想いながら少し俺は嬉しくなったり……言っとくけど、別にそういう趣味じゃないからな?
(て、やばい…!)
このままではそんな夢物語すらも思えなくなる。
「…アンタ、その女の父親なの?」
ーー絶句した。公爵令嬢であるリオナをその女扱いし、公爵をアンタなどと、平民ごときが。
「ふざけんじゃないわよ、私とエドワードの家から出ていって!」
そう言ってネオハルト公爵の腕をミーシャが掴んだ途端、何かがぶちっと切れる音がした。それは俺のものではない。
「…汚らわしい手で触るでない!!!」
パチン、とまで甘くない。バチンと平手打ち。
ネオハルト公爵は潔癖で有名だ。平民が触れたことに対してではなく、埃まみれの手で、汚い言葉を使って、ネオハルト公爵とその娘の公爵令嬢を罵ったのだ。
「なっ!ぼ、暴行罪で訴えてやる!!!」
それこそ夢見がちな言葉に、その場にいたミーシャ以外の人間は何いってるんだコイツ?という顔をして呆然としている。
「今では貴族も罰せられるのよ!そんなことも知らないの!?ふん、やっぱり私の方がエドワードに相応しいわね!」
ーー今更感じる、俺の愚行。
「…エドワード君」
ネオハルト公爵の視線が痛い。
「…はい」
「…驚きだよ。君はもう少し賢いと思っていたが」
「…はい」
「ねぇエドワード、目を覚まして!!」
覚ましてるさ。お前のおかげで目がパッチリだよ、ミーシャ。
「…貴族が裁かれるようになったというのは、不平な税の徴収であったり、理不尽な殺人のことだ。公爵が平民一人を平手打ちしたところで犯罪になるわけがない」
「なっ、そんなのってないわ!不公平よ!!」
「それが階級制度というものだ!!!」
そんなことも知らずによくこの国で今まで暮らしてこれたこと、奇跡じゃないのか?
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