18 / 37
18
しおりを挟む少しだけ気まずかった雰囲気を見事壊したのは、オルキスの方だった。
「父上は、私が嫌いなんだ」
「まさか」
即答してしまう。さっきのあの様子からして、嫌いなんてことあり得ない。むしろ噂通り溺愛しているだろう。
「母上が死んだのは、私が生まれてきたからだからな。きっと恨んでいるのだ」
「…そうなんですか?」
「難産でな、私のせいで体調が悪くなった母上はあっけなく死んだらしい。その時の父上の悲しみようは散々だったと聞いた」
「……それは…」
正直、想像は出来ない。自分のせいで母親が死ぬなど、そういう経験は滅多にないだろう。けれど。
「自分の子供を憎む親なんて、いませんよ」
これは自分にも言える話だ。馬鹿なことをしてリオナを傷付け、伯爵家を潰そうとさえもした。そんな俺は両親に怒鳴られ罵られ見放される覚悟だったけれど、母様の「腐っても私たちの息子」という言葉にどれだけ救われたか。まぁ、微妙な気持ちになったけれど。
思考回路が少しの間腐っていたことは確かなので、反論は出来ない。
「そんなのは、お前に母親がいるから言えるんだ」
「…そんな……それに、例え貴方のせいで亡くなったとしてもそれだけでローレンス公爵は、」
「男に襲われるんだ」
「……は?」
間抜けな声が出たのはこの際許して欲しい。
「ホモが寄ってくるんだ、私に!隙あらば襲おうと、押し倒してくる!!」
「ほ、ホモ?」
「父上にももちろん報告がいってる。…公爵家の面汚しの私を父上は憎んでいるのだ」
「面汚しって……え、最後までされちゃったんですか?」
あまり違和感がないのは、それほどの美少年だからだろう。
「わ、私は悪くないぞ?ただ、私を可愛いというから、可愛くなんてないもんって」
もん!!?この人本当にあのオルキス殿か!?
「ただ、私を認めてくれるヤツがいるなら、誰だってよかったのだ……」
「…それは…」
ぷくっと頬を膨らますオルキス殿やばい、これ襲われても仕方ないだろ。ていうか襲ってくれって言ってるようなもんだろ!!?
「っ…つまり」
ダメだ、俺にはリオナがいるんだ。ダメだダメだダメだ!
しかも俺はホモじゃない!!のに、身体が勝手に動くし!!
「…アンタは認められるために、こういうことも厭わないってことか?」
気が付けば押し倒してしまった。本当に恐ろしい。
「お、おい?お前、リオナのこと…」
「…そうやって簡単に押し倒されちゃ、ダメだろ…」
「え?」
「押し退けるくらいしろよーー…」
はあっとため息をついてしまう。何をやってるんだ、俺は。…いやでも!!俺はホモじゃないし、別に、この男になにか特別な思いがあるわけでもないし!
「ーー何をなさってらっしゃるのかしら?エドワード様」
ビクリと自分の身体が不自然に揺れてしまった。恐る恐る後ろを見るとーーにっこりと笑いながらも目が全く笑っていないリオナがいた。
誤解だ、と言おうとする前に頭に鈍痛がする。
「私のオルキスに何をやってるこのクズがぁ!!!」
その声と共に、俺は意識を手放した。
0
お気に入りに追加
2,029
あなたにおすすめの小説
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
正統王家の管財人 ~王家の宝、管理します~
九條葉月
ファンタジー
王太子の婚約者であったリリーナは政争に巻き込まれ、婚約破棄。30歳以上も年の離れた『オーク公爵』と無理やり結婚させられた。
さらには夫の死後、今度は義理の息子により公爵家から追い出されてしまう。
しかし彼女は持ち前のポジティブさで今後は自由に生きようと決心して……。なぜか、王家の財宝を管理する『管財人』に任命されてしまうのだった。
侯爵様、今更ながらに愛を乞われても
cyaru
恋愛
オルランディ侯爵家の当主夫妻。夫はアルマンド、妻はティタニア。
仮面夫婦、契約夫婦、偽装夫婦色々あるけれど、アルマンドとティタニアは仲が良い訳でも悪いわけでもない。2人は期間限定の夫婦である。
期間限定と言っても貴族の婚約や結婚は家と家との事業などが絡んでいて当人の意志とは無関係に結ばれるもの。2つの家は30年事業という長期間の事業を円滑に行うために結ばれており事業が終わるまでは離縁も出来ない。
のだが…夫のアルマンドには婚約前からフェリシアという恋人がいて、ティタニアはアルマンドに「彼女以外は女性に見えない」とまで言われてしまった。
さしたる問題もなく、2人は取り決め通り結婚し初夜こそ一緒の部屋で過ごしたが同衾はナシ。
その後は華麗な別居生活に突入し、どうしても夫婦で出席せねばならない夜会などで顔を合わせるだけ。
そんなある日、第2王子の婚約発表パーティでいつも通りアルマンドと入場し、王族への挨拶を済ませたティタニアだったが、別行動になってから会場の熱気にあてられバルコニーで涼もうと外に出た。
そのバルコニーで風に癒されていると痴話喧嘩が聞こえる。
これは距離を取らねばと静かに去ろうとした時、喧嘩をしていた女性が近づいてきて手を伸ばしてきた。咄嗟に避けようとしたティタニアはバランスを崩し3階のバルコニーから転落してしまった。
奇跡的に大きな怪我も無かったのだが、目覚めたティタニアの元にアルマンドがやって来て不思議な事を言う。
「ニアが目覚めるまで生きた心地がしなかったよ」
ティタニアは思った。
「もしかしてバルコニーから落ちたのは私じゃなく、アルマンド?」
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★3月23日投稿開始、完結は3月24日22時22分<(_ _)>
★男性に守られる女性をご希望の方はブラウザバックを強く推奨します。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!
Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥
財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。
”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。
財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。
財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!!
青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!!
関連物語
『お嬢様は“いけないコト”がしたい』
『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中
『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『好き好き大好きの嘘』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位
『約束したでしょ?忘れちゃった?』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位
※表紙イラスト Bu-cha作
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。
アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。
捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!!
承諾してしまった真名に
「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる