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第一王子に転生したのに、毎日お仕置きされる日々を送る羽目になった

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 ある日ボクは見知ら国の第一王子になっていた。
 休日の街を歩いていたら強い衝撃に襲われて、目が覚めたら中世のヨーロッパのお屋敷みたいな所にいて、そこには医者がいて、馬車の事故で数日眠っていたと言われたけど、さっぱりその記憶はない。
 鏡を見れば元の顔のボクがそこにいた。相変わらずの美少年だ。元々街を歩けばボーイッシュな女の子に間違われて芸能事務所にスカウトされるような容姿をしている。
 これがいわゆる転生と呼ばれるものなのだろうか。実際なると混乱してしまう。しかも、どうやらボクがいる世界は日本とは全く違う世界。ゲームや漫画でしか見た事のないファンタジーな異世界だ。
 夢かと思って色々と試してみたけど、それにしてはまったく醒めない夢だ。信じられないくらい大きな城に執事やメイドがいる生活。そう、ボクはこの国の王子様になっていた。
 
 憧れの豪華で贅沢な生活。誰もがボクにかしずく。あれがしたいこれがしたいと言っても誰も止めない。両親である王様も、王妃様も忙しくしているせいで、ボクはこの城の中でそれこそ王様のように扱われた。最高だ。  
 鏡に映るボクは元々のボクのまま。世界と身分だけが変わったのだ。
 醒めない夢を見ているだけかもしれないけど、もとの世界じゃ自慢できるのは顔が天才ってくらい。特に趣味もないし、やりたい事も無い。心残りになるような家族もいない。母親は早くに死んでいたし、父親は飲んだくれのクズだ。
 ふふふ、ボクはこんな世界に転生させてくれた神様に感謝した。そう、ベッドから起き上がり、一週間ほどが過ぎて、稽古や勉強が再開されるまでは。  

「殿下、今までは病み上がりでしたから口煩い事は申しませんでしたが、マナーが悪くおなりですよ?今日からまた今まで通りきちんとマナーは守っていきましょう」

 ボクの躾係という執事長が朝の着替えの後、そう言ってきた。意外と年若く三十路まではなっていないみたい。背筋がピンと伸びていて、きりりとした凛々しい顔。日本ならイケメンと呼ばれる部類だけど眼鏡が厳しそうに見せている。まぁ関係ない。ボクの方が顔は天才だ。可愛い。

 ふん、大体この城の王であるボクにそんな事言うんだ?ボクは分かってる分かってると軽く流して朝食をとる為に食堂へと向かった。しかし、朝食が始まると横に控えた執事長が事ある毎に口出しをしてくる。煩いなぁ。

「殿下、どうされたのです?スープを飲む時は音を立ててはいけませんね。幼少の頃からそう申しているはずです。ああ、ナイフを使う時は静かに食器に強く触れさせてはいけません」

 いけません、いけません、いけません。あれもだめ、これもだめ、ボクの中には朧気ながらこの世界の第一王子としての知識があるにはあるが、元のボクとしての意識がかなり強い。
 ただの一般人の日本人だったボクからしたら貴族のマナーなんて頭でわかっても身体がついてこない。クソが。

「ああ、もう分かってるって!煩いなぁ!今日はもういい!」

 八割ほど食事を終えたところでボクの堪忍袋の緒が切れた。他のメイドたちは顔を蒼褪めさせている。ボクが怒ったからか、第一王子がそんな口の利き方をしたからか。あるいは、その時は気づかなかったけど、執事長の目が細く鋭くなっていたからか。

「そうですか、結構です。では、お部屋にお戻りください。お話がありますので」

「言われなくても…!」

 今日まで執事長以外はボクのやる事に文句をつけた事がない。半分は事故の後という事で大事を取ってベッドで寝ていた事もあるだろうが、窘めようとはしてもボクが命令やお願いをすると了解してくれる。
 そりゃそうだろう、ボクはこの国の第一王子だ。この国の上から三番目くらいに偉い人間だ。執事や執事風情が口ごたえなんかあり得ないはず。

「何だよ、もう。ごちゃごちゃ煩いんだから…」

 ドスドスと怒りを床にぶつけながら、慌てるメイドたちを置き去りにボクは足早に自分の部屋に戻って篭る。問題なくこの世界の文字は読めるので、頼んであった小説本を鷲掴みにするとベッドに身体を投げ出し、ペラペラと捲っていく。そうして苛立ちを追いやろうとしてると扉がノックされた。

「いいよー、どうぞ」

「失礼いたします」

 む。入ってきたのは執事長。多分またお小言を言いに来たのだろう。ボクは深い溜息をついて胡乱気な目を執事長に向けた。

「なんだよ?またお説教?」

「今日からきちんとなさってくださいと申し上げたはずですが?先ほどの態度、言葉使い、そして今のだらしない格好はなんですか?」

「あー、もう煩い煩い。知らないってば」

 ボクは向けていた顔を執事長から顔を背けた。怒っているのが分かってちょっと気まずい。こんな風にきちんと叱られるのは小学校の先生以来だ。

「…病み上がりと思い、少し甘やかし過ぎてしまったようですね。今日は厳しくお仕置きをしてさしあげましょう」

「はぁ?お仕置き?なにそれ」

 この国の第一王子たるこのボクに何する気?晩御飯抜きとか?そう思って肩越しに執事長を見るとすぐ傍まで来ていた。

「わぁ!?」

 執事長はベッドに腰かけると、ボクの腰をがっちりと掴んで軽々と持ち上げた。そして、そのまま膝の上にボクの身体を腹ばいにした。え、これってもしかして……お尻ペンペン?

「殿下、幼少の頃より畏れながら弟様のように思い大事に、厳しくお育て申し上げたというのに事故に合ってからというものこの体たらく。第一王子としての心構えはどうされたのですか。躾係として情けのうございます。久しぶりにたっぷりとお仕置きして差し上げましょう」

「まっ、ちょまっ、わ、わ、わ!待ってよ!」

 細身に見えた執事長の力は恐ろしく強く、あれよあれよという間にボクのズボンをずり下げて、パンツを膝まで下ろしてお尻を剥き出しにされてしまった。
 その上腰をしっかりと掴まれ引き寄せられて、お尻は高く突き出すように位置を調整させられた。生まれて初めてされたこの体勢は恥ずかしいに決まっている。ボクは顔が熱くなるのを感じた。嘘でしょ、本当にお尻ペンペンする気?

「ちょ、ボクは第一王子だぞ!?」

「もちろん存じております。だからこうして躾させて頂くのです。さぁ、良くご自分の行動を反省なさいませ!」

 何を言っても無理。今になって王族のマナーの厳しさを知った気がする。ボクは何も気にせず普通の日本人のように振舞ってしまったけど、それはかなりまずかったとようやく気づいた。

「わ、分かった!これからちゃんとする!って、痛ぁいっ!?」

 パァンッ!

 びりっとした電気がお尻に走って、それが痛みだと気づくのに数瞬かかった。本当にお尻を叩かれるなんて。そう思っていると次々と執事長の平手がお尻に降ってきた。

 パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!

「痛っ!あっ、ま、待って!ちょっ!」
   
 お尻ペンペンなんてされた事がない。クズ親はボクの事をまったく顧みず、酒浸り。躾なんて怒鳴られて殴られるか、蹴られるかだ。それが夢か現かこの異世界で王子様になってから躾でお尻を叩かれる事になるなんて。
 ボクはスタイルも完璧だからお尻は小さく丸い。つまり、肉が少ないって事だ。そこを思いきり平手で叩かれるとこんなにも痛い。そして四つん這いみたいに突き出してるお尻が死ぬほど恥ずかしい。もういいよね?ボク反省した。うん、やめて貰おう。
   
「あぅ!わ、わかったから!もういいよ!反省した!だからもう…痛いぃっ!?」
 
 パァンッ!
  
「いけません。王族らしくお仕置きも毅然とお受け下さい」
   
 パァンッ!
   
「いったぁいっ!?」
   
 お尻の割れ目に思い切り平手が振り下ろされてボクは子供みたいに叫んでしまう。必死に手を伸ばしてお尻を庇いながら膝から逃げようとしたけど、執事長はボクの細い腰をしっかりと掴んで逃げられないようにした。執事長は信じられないくらいの馬鹿力だ。そう言えば護衛も兼ねていると言っていた気がする。騎士上がりか何かなのかもしれない。めちゃくちゃ痛い。
   
 パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!
   
「あっ!痛いっ!いたいってばっ!、お、王子なのにぃっ!」
   
 お尻ペンペンがこんなに痛いなんて。お尻がとても熱い。顔を顰めてわぁわぁと叫ぶ。視界が潤んでぼやける。ボクは涙目で子供のように両足をジタバタとさせてしまっている。
   
 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
   
「いたいぃいたいぃっ!やめろっ!この馬鹿ぁっ!」
   
 おかしい。せっかく何もかもが思いのままの夢みたいな生活を手に入れたはずだったのに。これだけ痛かったら絶対に夢じゃない。あり得ない転生とあり得ない生活とあり得ないお仕置きが今のボクの現実。
 漫画やアニメに出てくる子みたいに剥き出しにされた丸いお尻の右へ左へ、真ん中へと次々平手を落とされる。
   
 パシィンッ!
   
「いったぁいっ!わ、分かった!ご、ごめんなさいっ!反省しましたっ!だからもう止めて!」
   
 ボクはあまりのお尻の痛さに涙声で必死に謝った。もうそれしかない。第一王子で顔は可愛くて天才で何もかもが思いのままのはずなのに、情けない声で懇願しているのが現状だ。だけど、死ぬほど恥ずかしいし、お尻がヒリヒリとした火傷みたいに痛い。
 
「これくらいの数では終わりませんね。もっとお小さい時からお尻叩き百回が普通でしたでしょう?さぁ、もっとお尻を出して。いきますよ」

「ひゃ、ひゃくぅ!?むりむりむり!」

 パァンッ!
   
「いっ!?」
    
 そこから始まったびゅんびゅんと風切音が聞こえそうな強烈な平手の連打。ぱんぱんというボクのお尻を叩く甲高い音が部屋中に響き渡る。絶対に部屋の外まで聞こえているはずだ。他の執事やメイドたちにもボクがお尻ペンペンされていると分かるくらいだ。
 だけど、もうそれどころじゃなくなっていた。息が詰まって身を捩る。お尻が痛すぎて思い切り目を閉じた。目尻に溜まっていた涙がどんどん溢れ出す。
    
「あっ!痛いぃっ!いたぁいぃっ!ヤバいヤバい、これむり!」
    
 到底王子様とは思えない喚き声が口から吐き出される。ひぃひぃと泣き叫び、ジタバタと暴れたけど、執事長はまだ許してくれそうもない。

「殿下、何ですかその情けないお姿は。まったく、しっかりと反省できるまでお尻を叩きますよ」
 
「やだってばっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいってっ!」

 パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!

「んんっ!ひっ!いたいいたいぃっ!痛いぃ…!」

 もうお尻全体が痛い。せっかくの自慢の形の良い丸いお尻は見なくても分かるくらいに真っ赤に腫れ上がっていると思う。その上からさらに平手を何度も何度も重ねられてボクは、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらお尻を晒し続けるしかない。

 パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!

「ごめんなさぃっ!ごめんなさぁいっ!」

 ボクは執事長の膝の上で剥き出しのお尻を晒しながら許してもらおうと必死に叫び続ける。ひりひりとした痛みがお尻全体を満遍なく覆う。ちょっと調子に乗り過ぎていた。そのせいでこんな厳しいお仕置きをされてしまうなんて。
 結局ボクが泣こうが喚こうがきっちりと百回お尻を叩き終えるまで執事長はゴリラみたいな力でお仕置きを続けた。
 ようやく膝の上から下ろされて、お説教をされてどうにか許して貰えた。ボクはこれ以上お尻を叩かれてはたまらないと、大人しく謝ってこれからはちゃんとすると約束をした。
 後で聞いたところあんな華奢な身体でやはり元騎士だそうだ。片手で野党の頭を潰せるくらいの剛力。
 おい、そんな所だけファンタジーしなくていいんだよ。ボクは真っ赤に腫れ上がったお尻を姿見に写して、大きなため息をつく。

「はぁ……パンパンに腫れてる…いたた…教育方針が鞭で躾けて当り前の時代だったとは…」

 今頃になって身体が何となく思い出す。そう言えばお尻叩きで躾けられていたのだと。

「贅沢はできるけど、振る舞いには気をつけないと…またお仕置きかぁ…」

 我が儘放題、贅沢三昧出来るかと思ったけど、やり過ぎればさっきの通り。躾係の執事長が飛んでくる。ボクは明日からの事を思ってお尻を擦りながらまた溜息をついた。
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