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▼【第二十七話】 二人で一つの買い物かご。
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一通り平坂さんとのチャットを楽しんだ遥さんは僕の膝の上から立ち上がってしまう。
もう少しこのままで僕は居たかった。未だに遥さんのぬくもりが残る膝を名残惜しそうに僕は見つめる。
「タコパの買い出しに行くんですよね」
平坂さんとのチャットに満足したのか、もうゲームには興味なさそうに遥さんはそう言った。
やっぱり遥さんはゲームは好きじゃないのかもしれない。そうか……
「はい、近くにそこそこ大きなスーパーがあるので、そこで」
僕がそう言うと、遥さんは目を丸くして喜んだ。
「おおー、お買い物の立地も良いんですね、駅からも近いし、ほんと良い家ですね」
あなたが望めば、この家だって僕は差し出せるのに。と、そう思いはしたが僕はそれを口に出さない。
一度断られている。何度も言うのはきっと迷惑だから。
「はい」
僕は、騒然としているギルドチャットに買い物してきます、とだけ書き込み、返事も見ずにそのまま席を立つ。
「ゲーム、そのままでいいんですか?」
「はい、街中ですので」
そもそも、遥さんが興味ないなら……
でも、ギルドの皆にはお世話になってるしなぁ…… と、少しだけ迷う。
「よくわからないけど良いなら、お買い物行きましょうか」
その声に僕は笑顔で頷く。
二人で一つの買い物かごを持つ。
なんだ、これは。
僕はこれも一つの幸せの形だと言うことを知る。
直接触れ合っているわけでもないのに、何かこう満たされていくのを感じる。
タコ焼き用の粉があったのでそれをかご中に入れる。たこ焼きソースも入れる。
タコはもう用意してあると伝え、他の具材もかごに入れる。
小さいウィンナーに、六ピースチーズ、一口サイズの茹でたエビなんかを。
鰹節と青のりも忘れずに。
天カス、紅ショウガも。
最後にマヨネーズを遥さんがかごに入れる。
「こんなところですかね? 二人だとこれでも多そうですけど」
そう言って遥さんが僕に微笑んでくれる。
僕も、多分ぎこちなかったけど、笑顔で返事を返す。
「そうですね、残ったら僕が食べますので大丈夫ですよ」
しばらく夜はたこ焼きなるだろうけど、今日のことを思い出して食べれば飽きることもないだろう。
こんな幸せを思い出しながら食べれるんだから。
「ふふっ、なんだか楽しいですね」
「はい!」
今度は僕も自然な笑顔で返事ができる。そもそも本当に僕は幸せなのだ。自然と笑みがこぼれてくる。
彼女が楽しんでくれている。
それだけで僕は嬉しくなれる。幸せになれる。笑顔で居られる。
会計を済ませ、買ったものを袋に詰める。そして袋を僕が持つ。
フラッと遥さんが寄ってきたと思ったら、袋の片方だけの持ち手を僕から奪う。
ここでも二人で一つの袋を持つ。僕は身勝手ながらにも、まるで夫婦じゃないか。と思ってしまう。
そんなことを考えていたからだろうか、僕は、
「遥さん、あの…… あっ、す、すいません、つい名前で……」
つい、遥さんの名を声に出して呼んでしまう。
心の中で無遠慮にも遥さんって呼んでいたせいだ。
「良いですよ。そのまま名前で呼んでください。あっ、田沼さんの下の名前、私まだ聞いたことないです」
「誠一郎です。田沼誠一郎」
「誠一郎ですか。名は体を表すって奴ですね。似合っていると思いますよ、誠一郎さん」
口から心臓が飛び出るかと思った。
まさか僕の名前を呼んでくれるとは思わなかった。
「わ、和歌月さん、あの……」
「遥。遥ですよ。私の名前」
「す、すいません。実は最初に知ったのが下の名前だったので、心の中では…… ずっと、その、は、遥さん…… と呼んでました」
慌てて僕は言い訳をする。
嘘ではないが、多分僕はずっと名前で彼女を呼びたかっただけなのかもしれない。
「ああ、そうか。茜が呼ぶときも下の名前で呼んでましたね」
と、遥さんは僕の言い訳に納得してくれる。
「で、あの、そのは、遥さん……」
「はい、なんですか?」
「…………」
「どうしたんです?」
「すいません、名前を呼んでもらった衝撃で何を言いたかったのか、全部忘れました……」
相変わらず僕は馬鹿だ。
でも、こんな馬鹿なら僕は馬鹿が良い。
もう少しこのままで僕は居たかった。未だに遥さんのぬくもりが残る膝を名残惜しそうに僕は見つめる。
「タコパの買い出しに行くんですよね」
平坂さんとのチャットに満足したのか、もうゲームには興味なさそうに遥さんはそう言った。
やっぱり遥さんはゲームは好きじゃないのかもしれない。そうか……
「はい、近くにそこそこ大きなスーパーがあるので、そこで」
僕がそう言うと、遥さんは目を丸くして喜んだ。
「おおー、お買い物の立地も良いんですね、駅からも近いし、ほんと良い家ですね」
あなたが望めば、この家だって僕は差し出せるのに。と、そう思いはしたが僕はそれを口に出さない。
一度断られている。何度も言うのはきっと迷惑だから。
「はい」
僕は、騒然としているギルドチャットに買い物してきます、とだけ書き込み、返事も見ずにそのまま席を立つ。
「ゲーム、そのままでいいんですか?」
「はい、街中ですので」
そもそも、遥さんが興味ないなら……
でも、ギルドの皆にはお世話になってるしなぁ…… と、少しだけ迷う。
「よくわからないけど良いなら、お買い物行きましょうか」
その声に僕は笑顔で頷く。
二人で一つの買い物かごを持つ。
なんだ、これは。
僕はこれも一つの幸せの形だと言うことを知る。
直接触れ合っているわけでもないのに、何かこう満たされていくのを感じる。
タコ焼き用の粉があったのでそれをかご中に入れる。たこ焼きソースも入れる。
タコはもう用意してあると伝え、他の具材もかごに入れる。
小さいウィンナーに、六ピースチーズ、一口サイズの茹でたエビなんかを。
鰹節と青のりも忘れずに。
天カス、紅ショウガも。
最後にマヨネーズを遥さんがかごに入れる。
「こんなところですかね? 二人だとこれでも多そうですけど」
そう言って遥さんが僕に微笑んでくれる。
僕も、多分ぎこちなかったけど、笑顔で返事を返す。
「そうですね、残ったら僕が食べますので大丈夫ですよ」
しばらく夜はたこ焼きなるだろうけど、今日のことを思い出して食べれば飽きることもないだろう。
こんな幸せを思い出しながら食べれるんだから。
「ふふっ、なんだか楽しいですね」
「はい!」
今度は僕も自然な笑顔で返事ができる。そもそも本当に僕は幸せなのだ。自然と笑みがこぼれてくる。
彼女が楽しんでくれている。
それだけで僕は嬉しくなれる。幸せになれる。笑顔で居られる。
会計を済ませ、買ったものを袋に詰める。そして袋を僕が持つ。
フラッと遥さんが寄ってきたと思ったら、袋の片方だけの持ち手を僕から奪う。
ここでも二人で一つの袋を持つ。僕は身勝手ながらにも、まるで夫婦じゃないか。と思ってしまう。
そんなことを考えていたからだろうか、僕は、
「遥さん、あの…… あっ、す、すいません、つい名前で……」
つい、遥さんの名を声に出して呼んでしまう。
心の中で無遠慮にも遥さんって呼んでいたせいだ。
「良いですよ。そのまま名前で呼んでください。あっ、田沼さんの下の名前、私まだ聞いたことないです」
「誠一郎です。田沼誠一郎」
「誠一郎ですか。名は体を表すって奴ですね。似合っていると思いますよ、誠一郎さん」
口から心臓が飛び出るかと思った。
まさか僕の名前を呼んでくれるとは思わなかった。
「わ、和歌月さん、あの……」
「遥。遥ですよ。私の名前」
「す、すいません。実は最初に知ったのが下の名前だったので、心の中では…… ずっと、その、は、遥さん…… と呼んでました」
慌てて僕は言い訳をする。
嘘ではないが、多分僕はずっと名前で彼女を呼びたかっただけなのかもしれない。
「ああ、そうか。茜が呼ぶときも下の名前で呼んでましたね」
と、遥さんは僕の言い訳に納得してくれる。
「で、あの、そのは、遥さん……」
「はい、なんですか?」
「…………」
「どうしたんです?」
「すいません、名前を呼んでもらった衝撃で何を言いたかったのか、全部忘れました……」
相変わらず僕は馬鹿だ。
でも、こんな馬鹿なら僕は馬鹿が良い。
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