それなりに怖い話。

只野誠

文字の大きさ
上 下
188 / 298
むしのしらせ

むしのしらせ

しおりを挟む
 男が仕事帰りに夜道を歩いていると、一匹の虫、緑色で金属光沢があるむし虫、カナブンが一匹、道の上でひっくり返って死んでいるのを見た。
 普通のことだ。
 虫が道の上でひっくり返って死んでいるだけだ。
 何のことはない話だ。

 だけれども、男にはそれがどうしても気になって仕方なかった。
 なぜだか、妙に印象に残ってしまったのだ。

 翌日、男が仕事で会社に行くと妙に慌ただしい。
 話を聞くと社長が急病でなくなったということだ。
 体調が悪いとは言ってたが、昨日は普通に出社していたし、話もしていた。
 男も随分と目をかけてもらっていただけに男はショックだった。

 慌ただしい一日が終わり、その日は男も家に帰る。
 社長がなくなったことも確かにショックだが、社長のワンマンで動いていた会社だ。
 これからどうなるのか、それは男も不安だった。
 自然と暗い気持ちになり、ため息も出る。
 
 そこで気づく。
 昨日、カナブンがひっくり返っていた場所に、今日は蝉がひっくり返っている。
 
 男は猛烈に嫌な予感がする。

 道の端を通り男は蝉をよけ、帰路を急いだ。
 家に帰ってすぐに電話がかかってくる。
 男が電話に出ると、男の母親からで親戚のおじさんが死んだと教えられる。

 そこで、男は気づく。
 虫だけに、虫の知らせだったのでは、と。
 何をバカなことを、と男は自分で思いつきはするものの、二度も続くと何とも言えない気持ちに男はなる。

 次の日、会社に行くと週末に社長の御通夜があるから、と言われるが、その日は親戚の御通夜でもある。
 流石に親戚を優先すべきだが、お世話になった社長でもある。
 長居は出来ないだろうが顔だけでも出していこうと男は思う。

 その日の帰りだ。

 カナブン、蝉と続いて落ちていた場所に、大きなカブトムシがひっくり返っている。
 男はそれを見た時、ゾワゾワとしたものを感じる。

 次は誰が、と男は不安に思う。
 やっぱりこれは虫の知らせなんだ、と男は確信する。
 虫の知らせで、実際に虫が死骸で知らせてくれるとは思いもしなかったが、きっと近いうちに誰かが死ぬ。
 男はそう確信していた。

 次は誰だ、次は誰だと、男が心配していると、男の目の前が急に明るくなる。
 それは飲酒運転をしていた車のライトだった。

 次に死んだのは……


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

意味がわかると怖い話

Kisaragi_2624
ホラー
意味がわかると怖い話です。

短編怖~い話1話完結

ムーワ
ホラー
昔、筆者が学校の先生から聞いた話や都市伝説などにもなっている怖~い話や筆者自身の恐怖体験なども踏まえて紹介していきます。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

【本当にあった怖い話】

ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、 取材や実体験を元に構成されております。 【ご朗読について】 申請などは特に必要ありませんが、 引用元への記載をお願い致します。

処理中です...