第二次戦国時代

豆大福

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大阪編

第4話 酒のお供

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 太陽が沈み出したと同時にサラリーマンという夜行性の生き物が活発になってきている。夜の街灯や看板が鮮やかに光り始めるとそれに群がるように賑わって来たのだ。私達はその群れを突破して路地裏へと侵入したのだが表通りとの差は広く、人が全くいないのだ。それをお構いなしに歩いているとある蛍光灯で光っている看板と先ほど聞いた楽しげな声もそこにはあった。

「いらっしゃい!2名様ね。お好きな席にどうぞ」

「スーツは壁にフックがあるから、かけときや」

「はい!」

今では珍しい座敷に座ると、私たちの間には大きな鉄板とお好み焼きのソースがあった。

「お好み焼きですか?」

「そうや。みんな好きやろ、お好み焼き!」

「ご注文はお決まりですか?」

「まずは生を1つ、、、飲むか?」

「私は烏龍茶でお願いします」

「ここは無礼講なんやで。生飲みたいなら遠慮すんな」

「それなら、生を2つ」

「お好み焼きは後から頼むわ。まず飲みたいから先に持って来てくれ」

「分かりました。では」

(まさか、早速知事と飲みに行くなんて、嬉しいのやら辛いのやら。でも知事の機嫌を良くしないと、今このいい雰囲気?を壊してはいけない!)

「お前さん、なに食うんや?」

「へぇ?」

「なんだ、まさかたこ焼きでお腹いっぱいなのか」

「いえ、すみません。考え事をしてて、、」

「なんや、考え事って。まさか俺の機嫌とかかハハハ!気にせんでもええて。もう一回言うが無礼講なんや。好きなこと話してかまへんぞ」

「わ、分かりました。」

(待って、なんで今読まれたの?嘘、そんなに顔に出やすいの!まず話を切り替えないと)

「ところでメニューはどこにあるのですか?」

「ここは結構古くてな、壁紙にしか貼ってないねん。まぁ定番は豚玉だか俺のおすすめはシーフードや」

(本当だ。結構いろんな種類があるんだな。モダン焼きにとん平焼き、マヨコーン焼きもあるんだ)

「決まったか?」

「はい、最初なのでまずは定番の豚玉にします」

「よし、そんなら、、、おい兄さん注文ええか?」

「はい!大丈夫ですよ」

「豚玉とシーフードを一つずつ、あの紅生姜もくれへんか」

「豚玉とシーフードですね。分かりました。それと最初に頼んだ生ビール2つです」

店員から生ビールが置かれると知事が私に中ジョッキを手渡すと

「よし、ほんなら今日は山城美香初めての社会人の記念や。乾杯するか」

「はい!」

そして、中ジョッキ天に掲げて大きくぶつかり合った。
「乾杯‼︎」

「ゴクゴクゴク、、、、ぷはーーー。
これやこれ、最高やな!」

「はい、とても!」

「いやー、でもお前さんと一発目から飲みに行けて嬉しいわ。最近はみんな飲み会とかしなくなったせいで寂しかったわ」

「私もあまり飲む機会がありませんでしたので、、、、あの、今頃になって悪いのですがお名前は?」

「お、言い忘れてたわ。海原利家や。よろしく!」

「はい、こちらこそ!」

「お待たせしました。豚玉とシーフードですね!」

「ええとこに。ほんなら食べますか」

鉄板の上にはソースがまだないせいで大きな豚肉が油を垂らしてカリカリになっており、反対にはエビやイカ、ホタテが見えてどれも美味しそうだった。そこにたっぷりとソースをかけ、マヨネーズ、青のり、そして鰹節をかけると食べるのには勿体無いほどの作品が存在している。こてで食べやすい大きさに切り、そのまま口に放り込むと

「美味しい!」
「うまい!」

この余韻に浸りながら、生で流し込むと

「くぅーーーー!」
「あぁーーーー!」

2人とも幸せそうな声が漏れてしまうのであった。

「にしても、あんたいい飲みっぷりやな。多分お酒に結構強いやろ」

「いえ、そこまででも」

「またまたー!にしてもあんたとは気が合いそうだわ」

「え?」
(やったーーー。好印象もらったぞー!これで私の官僚人生も薔薇色だわ!でも油断は禁物よ)

「この生ビールのために働いた甲斐があるってもんだな」

「ええ。そうですね」
(と言っても仕事なんてしていないじゃない、、、)

「あんな、誰も興味もなくてつまらないことでもお金がたくさん貰えること考えると嬉しいわ」
(今なんて言ったの?つまらない、、、、)
普通なら酔うはずの私でもその一言を聞いて一気に冷めてしまった。

「あーあ、もっと早く仕事終わらないかなー」
(、、、、、、、、、、)

「お前さんもそう、、、、」

「あの!」
私がいきなり大きな声を出したため、びっくりしたのか、

「お、おう。」
と動揺していた。

「、、、、まだ私は働いたことがないので言える立場ではありませんが、そんな気持ちで仕事をしてはいけないと思うんです」

「なんでや?仕事とはそういうもんやぞら。みんな面白くてしているやつなんて少数派だぞ」

「私が働くことはどんなにつまらない"仕事"でも真面目にするんです。ましてやこと大阪を率いる大事な立場にいながら、つまらないや早く終わらないかななんて言語道断です!私たちは皆さんの生活の平和と安定を保障しなければならない!何故なら海原知事。貴方は府民から選ばれた知事ではないのですか!」

「、、、、なに大声あげとんや。周りの人見てみ、ドン引きやぞ」

我に帰った私はつい大声だったため客や店員の視線が集中していた。
「せっかく仕事を忘れ飲みに来たのに雰囲気を壊ししかも、無礼講とはいえ知事に怒鳴るとな」

「、、、、、、、、すみま、、せん」
その時私は泣きそうだった。
(なんてことをしたのか、せっかく連れて来てもらったのに雰囲気を壊してしまった上に怒鳴ってしまった。もう、、、、消えたい、、、)
私は下を見ることしかできず、知事はじっと私を見つめ店内が気まずい状態になってしまう。

「、、、早く食い終わろう。皆に迷惑や」

そこからせっかくの美味しい味も無味となり、生ビールなんて戻しそうになっていた。
2人とも食べ終わると支払いはまたもや強引に知事が支払い、私は外に出ている。
その時、本当に消えていなくなりたかった。今私はもうこれからの生活が一変して怖くなり、怒るのか、呆れてしまうのか、それともみんなに言い広めるのか、どれも恐ろしくて仕方ない。逃げ出そうとした時

「待たせたな」

「、、、い、え」
まずは謝らないと、もう覚悟を決めよう。

「あの、、、、本当に、、、申し訳ありませんでした」
と深く頭を下げた。

「いや、あれは俺も悪い。ネタで言ったことがここまで本気だとわ」

「私ったら、知事という重要な地位にいながら怒鳴るなんて、、、、本当、、」

「、、、、、俺は別に怒ってなんかいない。それよりも驚いているんだ。君が"そういう人"とは思わなくてね」

(そういう人、あぁもうやばい人認定されてしまった、、、、どうしよう、どうしよう)

そんなことを考えている最中、知事は黙り込んでしまった。そして何か決めたのか

「よし、君にはちょっと伝えなくちゃならないことがあるな」

(左遷かな、それとも、、、、クビ、)

「本当にすみませんでした!けど、どうか、どうなクビだけは、、、」

「君をクビなんてしないよ」

「なら、左遷ですか」

「ハハハ、ちゃうちゃう」

「え、なら、、、」

「別に強制ではないのだが、、、、、
山城美香。俺の右腕、秘書官として一緒に働かないか」
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