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11 六歳の王子の「クッション代わりの」守護精霊
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領都ベルゲンまで、もう少しだ。開けた平野の向こうにそびえるティエルマ山を視界にとらえ、ルイとミレーヌが期待で目を輝かせた。
あの山の裾野に領都があるはずだ。街道沿いにも、大きな街がいくつもあったけど、領都はその何倍も大きいと聞く。大きなお城を中心に、たくさんの住居が立ち並び、街全体をぐるっと高い壁が取り囲んでいるらしい。
途中で立ち寄った街でさえ、目を丸くするほど、人であふれかえっていた。大きな街をいくつも集めたより、たくさんの人が住んでいる領都なんて、田舎育ちのわたしたちには、想像もつかない。
今まで、村から一歩も出たことのなかったふたりだけど、すっかり旅にも慣れたようだ。立ち寄った村で買ってもらった、大きなアメを舐めたりと、ずいぶん余裕が出てきた。
キアラが親身になって、ふたりの世話をしてくれていることも大きいだろう。辺境伯の姪で護衛隊長という立場にもかかわらず、キアラはふたりの面倒をあれこれと見てくれている。
「いつもは、領都に着くころには、打ち上げられた魚のようにぐったりしているのだがな。いやいや、快適このうえないな」
荷馬車に驚いて飛び立った白い鳥に目をやりながら、キアラは誰に話しかけたというわけでもなく、のんびりとした声を出した。
この三日というもの、キアラはずっと上機嫌だ。魔獣が荷馬車を襲ってこなくなったことが、よっぽどうれしいらしい。もちろん、闇の魔術師が魔獣に気がつく前に、わたしが倒してしまっているせいだけど。
この前は、たまたま通りかかった風の精霊が、魔獣を倒したんだろう、ということになった。だけど、何度もそんな偶然が起こるはずがない。目立たないようにと、わたしは先手を打つことにした。
ただ、魔獣の襲撃がまるっきりないとなると、それはそれで不審に思われたようだ。さらに、荷馬車がガタガタ揺れているにもかかわらず、ルイとミレーヌが平然としていることに、キアラが気がついた。
つい先日まで、馬車なんて乗ったことのなかったふたりだ。揺れに揺れる荷馬車に、お尻や背中を打ちつけられ、がまんの限界なんてとっくに超えていた。
いろいろと気に病むのが面倒になったわたしが、ふたりに風をまとわせて、衝撃がからだに伝わらないようにしたのだ。
わたしの存在がばれないように、気を使ったのだろう。キアラは乗っていた馬車の荷室から、ルイとミレーヌ以外を、他の荷馬車に移動させた。
「魔石の運搬に使っている荷馬車は、速度と耐久性を重視して作られているからな。揺れがひどいんだ」
荷室に三人しか乗っていないのに、キアラはあたりを見回して、独りごとかのようにつぶやいた。
「慣れているわたしでも、あちこち痛むし、気分が悪くなることもあるんだよ」
ルイとミレーヌが申し訳なさそうに、ひきつった笑みを浮かべた。ルイが、お願い、という目でわたしを見た。ふたりも三人も同じだ。ついでに、キアラも風で包んで浮かせた。
よほど快適だったのか、ルイとミレーヌに対するキアラの態度が、よりいっそうやわらかくなった。ひょっとしたら、わたしが密かに魔獣を倒していることへの謝礼も、含まれているのかもしれない。
まあ、いいか。さし当たって、キアラは敵ではない。ふたりにも好意的だ。近寄ってくる魔獣を倒しに出かけるとき以外、わたしは三人のクッションになった。
旅は快適かつ、順調に進み、三人はずいぶん親密な間柄となった。予定していたよりずいぶん早くに、終着点が見えてきた。
ふむふむ、あれが領都か。大都会だねと、ぽふっと息を吐き出した。その時だった。
空気が変わった。どうやら、精霊のなわばりに入ったようだ。ひたすら進み続ける、荷馬車の隊列の進行方向から、何かがこちらに向かってくる気配がした。
何だろう? 今までに感じたことのないほどの強い力に、わたしは三人から離れて、様子をうかがった。荷馬車を出て、地面すれすれを、速度をあわせてゆっくりと翔ける。
馴染んでいたクッションがいきなりなくなった三人が、びっくりして腰を浮かした。ミレーヌとキアラが何事かと、ルイに目をやる。ルイは並んで翔けるわたしを見て、不思議そうに目を瞬いた。
敵……ではない。まだ遠いけど、領都の向こうの山から、まっすぐにこちらに向かっている。
うん? 精霊? そうだ、精霊だ。火の精霊だ。ずいぶんと強い精霊だな、と思いながら、なおも翔けた。
前方から、闇の魔術師が大きな声をあげた。
「精霊様だ。ティエルマの精霊様がこちらに向かってる」
隊列にいる闇の魔術師は、わたしのことを感知できない。
火の精霊だから? それとも強い力を持っているから? 不思議に思っていると、キアラが屋根に登って目を凝らした。
「伝令! ゆっくりと速度を落としつつ、道の脇に馬車をとめろ! 武装はすべてはずせ! ティエルマの精霊様に感謝を捧げろ!」
どうやら、見えるらしい。人には精霊は見えないと聞いていたけど、キアラは火の属性だから、火の精霊が見えるのだろうか?
ふーむ? と首を捻っていると、とまった馬車から、ぞろぞろとみんなが下りてきた。みんなびっくりした顔で、空を見上げ、慌てて腰を折ってひざまずいた。
どうやら、誰にでも見えるみたいだ。燃えてるからかな? まあ、たしかに、あんなに派手だと、人にも見えるんだろう。
あれだけ燃えてて、よく形を保ってられるもんだねと感心していると、ルイとミレーヌも馬車から下りて、ひざまずいた。
キアラがひとりで、街道の真ん中にひざまずいて、こちらに向かってくる火の精霊を待ち受ける。
「どういうことだ? 魔獣もいないのに」とか、「大丈夫なのか? ひょっとして魔石か?」とか、「いや、わからん。なんだろう?」と、みんながひそひそと、近くの人と視線を交わす。
そういえば、領都はティエルマ山の火の精霊のなわばりの中にあるって、聞いた覚えがある。
つまり、トロムス村にとっての、ボーデ湖の水の精霊さんみたいなものだ。領都の人にとっては、とってもおえらい精霊様なんだろう。
とりあえず、ルイの上空でふわふわ浮いていると、キアラを素通りした火の精霊が、わたしの前までやってきた。
暑苦しいほどの熱気を振りまいて、燃えている人のような姿を、大きくふくらませた。
思わず、みんながうずくまるほどの威圧感を振りまいた後、火の精霊はうやうやしくおじぎをした。
『これはこれは、風の精霊殿。ようこそいらっしゃいました。むさ苦しいところではございますが、ごゆるりとご滞在ください』
じりりと、わたしとの距離を詰め、燃えさかる手を差し出した。
ああ、そういえば――。わたしは水の精霊さんの言葉を思い出した。
『水の精霊と火の精霊って仲が悪いの?』と聞いた時だ。
水の精霊さんは、不機嫌そうにからだを泡立て、湖面いっぱいにさざなみを起こした。
『決まってるじゃないか。あんな暑苦しい奴ら、見ただけで気分が悪くなるよ。あんたも気をつけたほうがいいよ。連中は風の精霊が大好きだからね。見つかったら、ずっと付きまとわれるよ』
あの山の裾野に領都があるはずだ。街道沿いにも、大きな街がいくつもあったけど、領都はその何倍も大きいと聞く。大きなお城を中心に、たくさんの住居が立ち並び、街全体をぐるっと高い壁が取り囲んでいるらしい。
途中で立ち寄った街でさえ、目を丸くするほど、人であふれかえっていた。大きな街をいくつも集めたより、たくさんの人が住んでいる領都なんて、田舎育ちのわたしたちには、想像もつかない。
今まで、村から一歩も出たことのなかったふたりだけど、すっかり旅にも慣れたようだ。立ち寄った村で買ってもらった、大きなアメを舐めたりと、ずいぶん余裕が出てきた。
キアラが親身になって、ふたりの世話をしてくれていることも大きいだろう。辺境伯の姪で護衛隊長という立場にもかかわらず、キアラはふたりの面倒をあれこれと見てくれている。
「いつもは、領都に着くころには、打ち上げられた魚のようにぐったりしているのだがな。いやいや、快適このうえないな」
荷馬車に驚いて飛び立った白い鳥に目をやりながら、キアラは誰に話しかけたというわけでもなく、のんびりとした声を出した。
この三日というもの、キアラはずっと上機嫌だ。魔獣が荷馬車を襲ってこなくなったことが、よっぽどうれしいらしい。もちろん、闇の魔術師が魔獣に気がつく前に、わたしが倒してしまっているせいだけど。
この前は、たまたま通りかかった風の精霊が、魔獣を倒したんだろう、ということになった。だけど、何度もそんな偶然が起こるはずがない。目立たないようにと、わたしは先手を打つことにした。
ただ、魔獣の襲撃がまるっきりないとなると、それはそれで不審に思われたようだ。さらに、荷馬車がガタガタ揺れているにもかかわらず、ルイとミレーヌが平然としていることに、キアラが気がついた。
つい先日まで、馬車なんて乗ったことのなかったふたりだ。揺れに揺れる荷馬車に、お尻や背中を打ちつけられ、がまんの限界なんてとっくに超えていた。
いろいろと気に病むのが面倒になったわたしが、ふたりに風をまとわせて、衝撃がからだに伝わらないようにしたのだ。
わたしの存在がばれないように、気を使ったのだろう。キアラは乗っていた馬車の荷室から、ルイとミレーヌ以外を、他の荷馬車に移動させた。
「魔石の運搬に使っている荷馬車は、速度と耐久性を重視して作られているからな。揺れがひどいんだ」
荷室に三人しか乗っていないのに、キアラはあたりを見回して、独りごとかのようにつぶやいた。
「慣れているわたしでも、あちこち痛むし、気分が悪くなることもあるんだよ」
ルイとミレーヌが申し訳なさそうに、ひきつった笑みを浮かべた。ルイが、お願い、という目でわたしを見た。ふたりも三人も同じだ。ついでに、キアラも風で包んで浮かせた。
よほど快適だったのか、ルイとミレーヌに対するキアラの態度が、よりいっそうやわらかくなった。ひょっとしたら、わたしが密かに魔獣を倒していることへの謝礼も、含まれているのかもしれない。
まあ、いいか。さし当たって、キアラは敵ではない。ふたりにも好意的だ。近寄ってくる魔獣を倒しに出かけるとき以外、わたしは三人のクッションになった。
旅は快適かつ、順調に進み、三人はずいぶん親密な間柄となった。予定していたよりずいぶん早くに、終着点が見えてきた。
ふむふむ、あれが領都か。大都会だねと、ぽふっと息を吐き出した。その時だった。
空気が変わった。どうやら、精霊のなわばりに入ったようだ。ひたすら進み続ける、荷馬車の隊列の進行方向から、何かがこちらに向かってくる気配がした。
何だろう? 今までに感じたことのないほどの強い力に、わたしは三人から離れて、様子をうかがった。荷馬車を出て、地面すれすれを、速度をあわせてゆっくりと翔ける。
馴染んでいたクッションがいきなりなくなった三人が、びっくりして腰を浮かした。ミレーヌとキアラが何事かと、ルイに目をやる。ルイは並んで翔けるわたしを見て、不思議そうに目を瞬いた。
敵……ではない。まだ遠いけど、領都の向こうの山から、まっすぐにこちらに向かっている。
うん? 精霊? そうだ、精霊だ。火の精霊だ。ずいぶんと強い精霊だな、と思いながら、なおも翔けた。
前方から、闇の魔術師が大きな声をあげた。
「精霊様だ。ティエルマの精霊様がこちらに向かってる」
隊列にいる闇の魔術師は、わたしのことを感知できない。
火の精霊だから? それとも強い力を持っているから? 不思議に思っていると、キアラが屋根に登って目を凝らした。
「伝令! ゆっくりと速度を落としつつ、道の脇に馬車をとめろ! 武装はすべてはずせ! ティエルマの精霊様に感謝を捧げろ!」
どうやら、見えるらしい。人には精霊は見えないと聞いていたけど、キアラは火の属性だから、火の精霊が見えるのだろうか?
ふーむ? と首を捻っていると、とまった馬車から、ぞろぞろとみんなが下りてきた。みんなびっくりした顔で、空を見上げ、慌てて腰を折ってひざまずいた。
どうやら、誰にでも見えるみたいだ。燃えてるからかな? まあ、たしかに、あんなに派手だと、人にも見えるんだろう。
あれだけ燃えてて、よく形を保ってられるもんだねと感心していると、ルイとミレーヌも馬車から下りて、ひざまずいた。
キアラがひとりで、街道の真ん中にひざまずいて、こちらに向かってくる火の精霊を待ち受ける。
「どういうことだ? 魔獣もいないのに」とか、「大丈夫なのか? ひょっとして魔石か?」とか、「いや、わからん。なんだろう?」と、みんながひそひそと、近くの人と視線を交わす。
そういえば、領都はティエルマ山の火の精霊のなわばりの中にあるって、聞いた覚えがある。
つまり、トロムス村にとっての、ボーデ湖の水の精霊さんみたいなものだ。領都の人にとっては、とってもおえらい精霊様なんだろう。
とりあえず、ルイの上空でふわふわ浮いていると、キアラを素通りした火の精霊が、わたしの前までやってきた。
暑苦しいほどの熱気を振りまいて、燃えている人のような姿を、大きくふくらませた。
思わず、みんながうずくまるほどの威圧感を振りまいた後、火の精霊はうやうやしくおじぎをした。
『これはこれは、風の精霊殿。ようこそいらっしゃいました。むさ苦しいところではございますが、ごゆるりとご滞在ください』
じりりと、わたしとの距離を詰め、燃えさかる手を差し出した。
ああ、そういえば――。わたしは水の精霊さんの言葉を思い出した。
『水の精霊と火の精霊って仲が悪いの?』と聞いた時だ。
水の精霊さんは、不機嫌そうにからだを泡立て、湖面いっぱいにさざなみを起こした。
『決まってるじゃないか。あんな暑苦しい奴ら、見ただけで気分が悪くなるよ。あんたも気をつけたほうがいいよ。連中は風の精霊が大好きだからね。見つかったら、ずっと付きまとわれるよ』
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