35 / 87
35:クラスのひねくれ者(2)
しおりを挟む
「なんでもいいだろ。中学の文化祭なんてしょせんはお遊びだ」
発言者は、私の席の斜め後ろに座る男子、小金井《こがねい》くん。
下の名前は知らない。正直に言って、それほど興味もなかった。
「なんでこんなくだらない行事が授業の一環なんだろうな。日本の官僚は馬鹿ばっかりだ。英単語の一つでも覚えたほうがよっぽど有意義だっていうのに」
少しぼさついた黒髪に、縁のない眼鏡。
ひょろっとした細い身体。
彼は物事を斜めに捉えるのが美学とでも思っているのか、度々こうした空気を読まない発言をし、敵を作っている。
休憩時間中は誰とも話すことなく、自分の席でずっと勉強し続けている。
勉強熱心なこと自体は問題じゃない。
でも、彼は自分よりも成績の悪い人間、つまりクラスの大半を見下していた。
高学歴で教育熱心な両親にそうと教え込まれたのか、彼は学業以外に価値も関心も見出さない。
成績こそが全てだと信じ切っている。
一学期の中間テスト30点で先生に怒られちゃった~と笑う女子に向かい、30点なんて僕なら恥ずかしくて死んでるね、と言い放ったのが強烈な反感を買い、彼に声をかけるクラスメイトはいなくなった。
心の距離感を示すように、彼の席の周囲の空間は他の席に比べて空いている。
誰だって自分を不愉快にさせる人間に好んで近づきたくはない。
私だって、嫌な人だと思わないといったら嘘になるけど、いじめみたいに無視するのは、なんか違うよね。
せっかく同じクラスになったわけだし、さ。
「そんな冷めたこと言わないで、楽しもうよ。せっかくの文化祭なんだし」
「ふん」
振り返って声をかけると、小金井くんはそっぽ向いた。
「小金井に声をかけるなんて物好きね」
後ろの席の女子にそう言われて、苦笑いするしかない。
その後も続いた話し合いで、私たちのクラスの出し物は、
第一希望:カジノ(主にトランプゲーム)
第二希望:喫茶店
第三希望:演劇
ということになった。
希望が通るかどうかは、数日後に行われる文化祭実行委員全体会議の結果次第だ。
発言者は、私の席の斜め後ろに座る男子、小金井《こがねい》くん。
下の名前は知らない。正直に言って、それほど興味もなかった。
「なんでこんなくだらない行事が授業の一環なんだろうな。日本の官僚は馬鹿ばっかりだ。英単語の一つでも覚えたほうがよっぽど有意義だっていうのに」
少しぼさついた黒髪に、縁のない眼鏡。
ひょろっとした細い身体。
彼は物事を斜めに捉えるのが美学とでも思っているのか、度々こうした空気を読まない発言をし、敵を作っている。
休憩時間中は誰とも話すことなく、自分の席でずっと勉強し続けている。
勉強熱心なこと自体は問題じゃない。
でも、彼は自分よりも成績の悪い人間、つまりクラスの大半を見下していた。
高学歴で教育熱心な両親にそうと教え込まれたのか、彼は学業以外に価値も関心も見出さない。
成績こそが全てだと信じ切っている。
一学期の中間テスト30点で先生に怒られちゃった~と笑う女子に向かい、30点なんて僕なら恥ずかしくて死んでるね、と言い放ったのが強烈な反感を買い、彼に声をかけるクラスメイトはいなくなった。
心の距離感を示すように、彼の席の周囲の空間は他の席に比べて空いている。
誰だって自分を不愉快にさせる人間に好んで近づきたくはない。
私だって、嫌な人だと思わないといったら嘘になるけど、いじめみたいに無視するのは、なんか違うよね。
せっかく同じクラスになったわけだし、さ。
「そんな冷めたこと言わないで、楽しもうよ。せっかくの文化祭なんだし」
「ふん」
振り返って声をかけると、小金井くんはそっぽ向いた。
「小金井に声をかけるなんて物好きね」
後ろの席の女子にそう言われて、苦笑いするしかない。
その後も続いた話し合いで、私たちのクラスの出し物は、
第一希望:カジノ(主にトランプゲーム)
第二希望:喫茶店
第三希望:演劇
ということになった。
希望が通るかどうかは、数日後に行われる文化祭実行委員全体会議の結果次第だ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
コボンとニャンコ
魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。
その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。
放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。
「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」
三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。
そばにはいつも、夜空と暦十二神。
『コボンの愛称以外のなにかを探して……』
眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。
残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。
※縦書き推奨
アルファポリス、ノベルデイズにて掲載
【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23)
【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24)
【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25)
【描写を追加、変更。整えました】(2/26)
筆者の体調を破壊()3/
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

迷宮階段
西羽咲 花月
児童書・童話
その学校にはある噂がある
「この学校は三階建てでしょう? だけど、屋上に出るための階段がある。そこに、放課後の四時四十四分に行くの。階段の、下から四段目に立って『誰々を、誰々に交換』って口に出して言うの。そうすれば翌日、相手が本当に交換されてるんだって!」
そんな噂を聞いた主人公は自分の人生を変えるために階段へ向かう
そして待ち受けていたのは恐怖だった!
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
R:メルヘンなおばけやしき
stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。
雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。
ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる