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05:間がもたない!
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「毎日、本当に暑いよね」
「夏だからな」
「でも、この一週間、ずっと猛暑日だよ? いくら夏でも、今年の暑さは尋常じゃないよ。こんなに暑いと参っちゃう」
「実際に参ってたしな」
「う……そ、それは、大変ご迷惑おかけしました。以後気をつけます」
「謝ってほしいわけじゃない」
会話が途絶えた。
からからと自転車のタイヤが回る音だけが流れる。
「……え、えーっと、夏休みが始まって一週間経ったけど、私は家の手伝いばっかりしてて、友達と遊んだことすらないんだよね。漣里くんは、どこか行った? 夏らしく、海とかさ」
「どこにも行ってない。家で引きこもってる」
「あー、うん、暑いもんね」
……あ、話題が元に戻っちゃった。どうしよう。
私が話を振らないと、漣里くん、黙ったままだし。
ちらりと漣里くんを見る。
彼は私と視線を合わせようとはせず、前を向いていた。
表情がなければ大抵、人は怒っているように見えるけれど、彼の表情は静か。
怒りも悲しみも見当たらない、全くの無だった。
うう、気まずい。
どうにか話題を……話題を……ああ、思いつかない。
葵先輩、助けて。
仲良くしてほしいと言われましたし、できればそうしたいのはやまやまなんですが、私にはこの溝を埋める手段が思いつきません……
内心で頭を抱える。
あの後。
葵先輩は漣里くんに「心配だから真白ちゃんを家まで送ってあげて」と頼んだ。
私は断ろうとしたんだけど、漣里くんはさっさと外に出て行ってしまった。
慌てて追いかけようとした私に、葵先輩は不思議なことを言った。
「ねえ真白ちゃん。試しに、漣里のこと褒めちぎってみて。きっと面白いものが見られると思うから」
……あれは、どういうことなんだろう。
漣里くんを褒めたら、どうなるというんだろう。
試してみたいけど、とてもそんな雰囲気じゃない。
いまは会話にすら困っている有様だ。
漣里くんだって、いきなり褒められても全然嬉しくないだろう。
むしろ不気味に思われそうだ。
ますます溝が開いちゃうよ。
「…………」
いなくなってしまったのか、セミの声がしない。
車の音と、人の声を聞きながら、私は男の子と二人、こうして並んで歩いている。
漣里くんが押している自転車のかごの中にあるのは私の鞄。
送ってもらえるのはありがたい。
でも、それよりも、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
私はまた彼のお世話になっている。
どうすればいいんだろう、この状況。
年下の美少年と仲良く会話を繰り広げるスキルなんて、私は持ってない。
何を話せばいいの。
それとも黙ってるべきなの、どうしたらいいの。
間が持たない……!
困り果てていると、ようやく漣里くんが口を開いた。
「夏だからな」
「でも、この一週間、ずっと猛暑日だよ? いくら夏でも、今年の暑さは尋常じゃないよ。こんなに暑いと参っちゃう」
「実際に参ってたしな」
「う……そ、それは、大変ご迷惑おかけしました。以後気をつけます」
「謝ってほしいわけじゃない」
会話が途絶えた。
からからと自転車のタイヤが回る音だけが流れる。
「……え、えーっと、夏休みが始まって一週間経ったけど、私は家の手伝いばっかりしてて、友達と遊んだことすらないんだよね。漣里くんは、どこか行った? 夏らしく、海とかさ」
「どこにも行ってない。家で引きこもってる」
「あー、うん、暑いもんね」
……あ、話題が元に戻っちゃった。どうしよう。
私が話を振らないと、漣里くん、黙ったままだし。
ちらりと漣里くんを見る。
彼は私と視線を合わせようとはせず、前を向いていた。
表情がなければ大抵、人は怒っているように見えるけれど、彼の表情は静か。
怒りも悲しみも見当たらない、全くの無だった。
うう、気まずい。
どうにか話題を……話題を……ああ、思いつかない。
葵先輩、助けて。
仲良くしてほしいと言われましたし、できればそうしたいのはやまやまなんですが、私にはこの溝を埋める手段が思いつきません……
内心で頭を抱える。
あの後。
葵先輩は漣里くんに「心配だから真白ちゃんを家まで送ってあげて」と頼んだ。
私は断ろうとしたんだけど、漣里くんはさっさと外に出て行ってしまった。
慌てて追いかけようとした私に、葵先輩は不思議なことを言った。
「ねえ真白ちゃん。試しに、漣里のこと褒めちぎってみて。きっと面白いものが見られると思うから」
……あれは、どういうことなんだろう。
漣里くんを褒めたら、どうなるというんだろう。
試してみたいけど、とてもそんな雰囲気じゃない。
いまは会話にすら困っている有様だ。
漣里くんだって、いきなり褒められても全然嬉しくないだろう。
むしろ不気味に思われそうだ。
ますます溝が開いちゃうよ。
「…………」
いなくなってしまったのか、セミの声がしない。
車の音と、人の声を聞きながら、私は男の子と二人、こうして並んで歩いている。
漣里くんが押している自転車のかごの中にあるのは私の鞄。
送ってもらえるのはありがたい。
でも、それよりも、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
私はまた彼のお世話になっている。
どうすればいいんだろう、この状況。
年下の美少年と仲良く会話を繰り広げるスキルなんて、私は持ってない。
何を話せばいいの。
それとも黙ってるべきなの、どうしたらいいの。
間が持たない……!
困り果てていると、ようやく漣里くんが口を開いた。
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