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11:一緒にお出かけ(1)
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手当てを終えた私は救急箱を片付けて厨房に向かった。
すると、私と入れ替わるようにお母さんは厨房から出た。
漣里くんに「娘を助けてくれてありがとう」とお礼を言っているみたい。
お礼の他にも何か言われたのか、漣里くんはちょっと困っているように見えた。
「漣里くんに何か変なこと言ってないよね?」
厨房に戻ってきたお母さんに、私はジト目で聞いた。
「別に何も? いやーあんた、成瀬くんがあんなイケメンだなんて聞いてないわよ? さっきもなーんか良い雰囲気だったし、もしかして実は彼氏だったりする?」
お母さんは何故か楽しそう。
「そんなわけないでしょ! 漣里くんとは学年も違うし、ついこの前知り合ったばかりなの! そう、だから、本当にただの知り合い!!」
皿洗い中だった私は大慌てで泡塗れの両手を振った。
お母さんってば、声が大きい!
漣里くんに聞こえる!
迷惑に思われる!
「まあ、ただの知り合いとか言って、『漣里くん』なんて呼んじゃって、まああ。下の名前で呼ぶってことは、やっぱりそういうことじゃないの」
「いや、名前で呼んでるのは時海に三年生のお兄さんがいるからだよ! 苗字で呼んだらややこしいからって言われたの!」
「あんなイケメンを落とすなんて、我が子ながらやるわねー。ねえお父さん」
「お父さんは認めんぞ。どんなに成瀬くんがイケメンだろうが、中学生で彼氏なんて早すぎる。しかも一年生って、ついこの前までランドセルを背負っていたような子どもじゃないか」
お父さんはハンバーグを焼きながら不機嫌そうに言った。
「あら、真白だって二年前まではランドセル背負ってたわよ? たった二年なのに、なんだか遠い昔のように感じるわよねー月日が経つのは早いわー」
「話を聞いてよ二人とも!?」
親子で騒いでいる間、漣里くんは無表情でスマホを弄っていた。
「うるさくしてごめんね……」
三十分ほど後。
私は漣里くんを見送るため、外に出ていた。
「いや、別に。賑やかな家族だなって思っただけ。おいしかった。ごちそうさまでした」
「おいしかった? だったら良かった」
夏の生温い風を頬に受けながら微笑むと、漣里くんは少し沈黙してから言った。
「……本当に迷惑じゃなかったんだな」
「え?」
「社交辞令で来て欲しいって言ったのかと思ってたんだけど。先輩の対応を見る限り、そうじゃなかったみたいだ」
「それはそうだよ。本当に来て欲しかったもの。だから、今日漣里くんが来てくれて凄く嬉しい」
「そうか。手当てもしてくれて、ありがとう」
漣里くんは小さく頭を下げた。
「どういたしまして。良かったらまた来てね」
私は微笑んだ。
これでお別れかと思いきや、漣里くんはじっと私を見つめて。
何か考えるような顔をしてから、言った。
「……あのさ。パンケーキ、好き?」
「? うん、好きだよ」
「なら今度、一緒に食べに行かない? 手当てのお礼に奢るから、付き合ってほしい」
すると、私と入れ替わるようにお母さんは厨房から出た。
漣里くんに「娘を助けてくれてありがとう」とお礼を言っているみたい。
お礼の他にも何か言われたのか、漣里くんはちょっと困っているように見えた。
「漣里くんに何か変なこと言ってないよね?」
厨房に戻ってきたお母さんに、私はジト目で聞いた。
「別に何も? いやーあんた、成瀬くんがあんなイケメンだなんて聞いてないわよ? さっきもなーんか良い雰囲気だったし、もしかして実は彼氏だったりする?」
お母さんは何故か楽しそう。
「そんなわけないでしょ! 漣里くんとは学年も違うし、ついこの前知り合ったばかりなの! そう、だから、本当にただの知り合い!!」
皿洗い中だった私は大慌てで泡塗れの両手を振った。
お母さんってば、声が大きい!
漣里くんに聞こえる!
迷惑に思われる!
「まあ、ただの知り合いとか言って、『漣里くん』なんて呼んじゃって、まああ。下の名前で呼ぶってことは、やっぱりそういうことじゃないの」
「いや、名前で呼んでるのは時海に三年生のお兄さんがいるからだよ! 苗字で呼んだらややこしいからって言われたの!」
「あんなイケメンを落とすなんて、我が子ながらやるわねー。ねえお父さん」
「お父さんは認めんぞ。どんなに成瀬くんがイケメンだろうが、中学生で彼氏なんて早すぎる。しかも一年生って、ついこの前までランドセルを背負っていたような子どもじゃないか」
お父さんはハンバーグを焼きながら不機嫌そうに言った。
「あら、真白だって二年前まではランドセル背負ってたわよ? たった二年なのに、なんだか遠い昔のように感じるわよねー月日が経つのは早いわー」
「話を聞いてよ二人とも!?」
親子で騒いでいる間、漣里くんは無表情でスマホを弄っていた。
「うるさくしてごめんね……」
三十分ほど後。
私は漣里くんを見送るため、外に出ていた。
「いや、別に。賑やかな家族だなって思っただけ。おいしかった。ごちそうさまでした」
「おいしかった? だったら良かった」
夏の生温い風を頬に受けながら微笑むと、漣里くんは少し沈黙してから言った。
「……本当に迷惑じゃなかったんだな」
「え?」
「社交辞令で来て欲しいって言ったのかと思ってたんだけど。先輩の対応を見る限り、そうじゃなかったみたいだ」
「それはそうだよ。本当に来て欲しかったもの。だから、今日漣里くんが来てくれて凄く嬉しい」
「そうか。手当てもしてくれて、ありがとう」
漣里くんは小さく頭を下げた。
「どういたしまして。良かったらまた来てね」
私は微笑んだ。
これでお別れかと思いきや、漣里くんはじっと私を見つめて。
何か考えるような顔をしてから、言った。
「……あのさ。パンケーキ、好き?」
「? うん、好きだよ」
「なら今度、一緒に食べに行かない? 手当てのお礼に奢るから、付き合ってほしい」
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