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101:大騒ぎ(3)

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「高校生にもなって弟に抱き着く兄がいますか!!」
「いるじゃんここに」
「開き直らないでくださいっ!? ブラコンなのは知ってましたけど、物事には限度ってものがあるでしょ!? 本当に人格変わりましたね、まるっきり別人じゃないですかこの猫被り!! 嘘つき!! ああああなんてこと!! 頬擦りしないで! 勝ち誇った顔しないでずるい!! 私もしたい!!」
「園田様は大変正直な方ですね」
 菜乃花たちから少し離れた場所で要が頷いている。

「ねえ、前から思ってたんだけど、天坂くんってヒロインポジションじゃない? 本来ならあそこには菜乃花がいるべきじゃないかしら? ほら、杏から借りた少女漫画にもあったでしょう。幼馴染の兄弟に愛されて困っちゃう、的なやつ」
 有紗は隣にいる杏に声をかけた。

「そうね。残念だけど、菜乃花だから……としか言いようがないわ」
 杏が眼鏡を押し上げた一方、菜乃花はいまだに喚いていた。

「千影くんからはーなーれーて!!」
「え、おれに指図する気? 園田さんの寮費はおれが出してるってこと忘れてない? そんな偉そうな態度取っていいのかな? 本当にいいのかなー後悔しないかなー?」
「……っ、ずるい!! この人とんでもなくずるいよおお!!!」
「はいはいよしよし」
 泣きついてきた菜乃花の頭を杏が撫でる。

「……これも前から思ってたんだけど、何故菜乃花は杏のほうにばっかり行くの? たまには私にも縋ってきてよ。そろそろ泣くわよ」
「えっ!? ごめん有紗! そんなつもりじゃなくて――」

「なあ兄貴、そろそろ離れて欲しいんだけど」
「やだ。冬の寒さに耐え忍ぶ花のように、長い年月を耐えに耐えて、ようやくこうして堂々と千影に触れるようになったんだよ? これまで触れなかった分を取り返すためにもおれは引っ付く。できることならこのまま永遠に引っ付いていたい。一生養うから嫁に来て。ずっとおれと一緒に暮らそう?」
「どうしよう……兄の愛が重すぎる……」

「カオスですな」
 ぎゃいぎゃいとあちこちで寮生たちが騒ぐ中、守屋は微笑みを浮かべて言った。

「ええ、全く」
 要は荷物を抱え直して頷いた。

「園田様が来られる前の館は静かでしたな。それがいまや、おもちゃ箱をひっくり返したような大騒ぎ。わたくし、使用人兼0号館の寮監として、あまりのギャップに風邪を引いてしまいそうです」
「でも、このほうが楽しいと思いませんか?」
 要は笑って守屋を見た。

「ええ、全く」
 さきほどの要と同じ言葉を返し、守屋は笑みを深めた。
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