101 / 107
101:大騒ぎ(3)
しおりを挟む
「高校生にもなって弟に抱き着く兄がいますか!!」
「いるじゃんここに」
「開き直らないでくださいっ!? ブラコンなのは知ってましたけど、物事には限度ってものがあるでしょ!? 本当に人格変わりましたね、まるっきり別人じゃないですかこの猫被り!! 嘘つき!! ああああなんてこと!! 頬擦りしないで! 勝ち誇った顔しないでずるい!! 私もしたい!!」
「園田様は大変正直な方ですね」
菜乃花たちから少し離れた場所で要が頷いている。
「ねえ、前から思ってたんだけど、天坂くんってヒロインポジションじゃない? 本来ならあそこには菜乃花がいるべきじゃないかしら? ほら、杏から借りた少女漫画にもあったでしょう。幼馴染の兄弟に愛されて困っちゃう、的なやつ」
有紗は隣にいる杏に声をかけた。
「そうね。残念だけど、菜乃花だから……としか言いようがないわ」
杏が眼鏡を押し上げた一方、菜乃花はいまだに喚いていた。
「千影くんからはーなーれーて!!」
「え、おれに指図する気? 園田さんの寮費はおれが出してるってこと忘れてない? そんな偉そうな態度取っていいのかな? 本当にいいのかなー後悔しないかなー?」
「……っ、ずるい!! この人とんでもなくずるいよおお!!!」
「はいはいよしよし」
泣きついてきた菜乃花の頭を杏が撫でる。
「……これも前から思ってたんだけど、何故菜乃花は杏のほうにばっかり行くの? たまには私にも縋ってきてよ。そろそろ泣くわよ」
「えっ!? ごめん有紗! そんなつもりじゃなくて――」
「なあ兄貴、そろそろ離れて欲しいんだけど」
「やだ。冬の寒さに耐え忍ぶ花のように、長い年月を耐えに耐えて、ようやくこうして堂々と千影に触れるようになったんだよ? これまで触れなかった分を取り返すためにもおれは引っ付く。できることならこのまま永遠に引っ付いていたい。一生養うから嫁に来て。ずっとおれと一緒に暮らそう?」
「どうしよう……兄の愛が重すぎる……」
「カオスですな」
ぎゃいぎゃいとあちこちで寮生たちが騒ぐ中、守屋は微笑みを浮かべて言った。
「ええ、全く」
要は荷物を抱え直して頷いた。
「園田様が来られる前の館は静かでしたな。それがいまや、おもちゃ箱をひっくり返したような大騒ぎ。わたくし、使用人兼0号館の寮監として、あまりのギャップに風邪を引いてしまいそうです」
「でも、このほうが楽しいと思いませんか?」
要は笑って守屋を見た。
「ええ、全く」
さきほどの要と同じ言葉を返し、守屋は笑みを深めた。
「いるじゃんここに」
「開き直らないでくださいっ!? ブラコンなのは知ってましたけど、物事には限度ってものがあるでしょ!? 本当に人格変わりましたね、まるっきり別人じゃないですかこの猫被り!! 嘘つき!! ああああなんてこと!! 頬擦りしないで! 勝ち誇った顔しないでずるい!! 私もしたい!!」
「園田様は大変正直な方ですね」
菜乃花たちから少し離れた場所で要が頷いている。
「ねえ、前から思ってたんだけど、天坂くんってヒロインポジションじゃない? 本来ならあそこには菜乃花がいるべきじゃないかしら? ほら、杏から借りた少女漫画にもあったでしょう。幼馴染の兄弟に愛されて困っちゃう、的なやつ」
有紗は隣にいる杏に声をかけた。
「そうね。残念だけど、菜乃花だから……としか言いようがないわ」
杏が眼鏡を押し上げた一方、菜乃花はいまだに喚いていた。
「千影くんからはーなーれーて!!」
「え、おれに指図する気? 園田さんの寮費はおれが出してるってこと忘れてない? そんな偉そうな態度取っていいのかな? 本当にいいのかなー後悔しないかなー?」
「……っ、ずるい!! この人とんでもなくずるいよおお!!!」
「はいはいよしよし」
泣きついてきた菜乃花の頭を杏が撫でる。
「……これも前から思ってたんだけど、何故菜乃花は杏のほうにばっかり行くの? たまには私にも縋ってきてよ。そろそろ泣くわよ」
「えっ!? ごめん有紗! そんなつもりじゃなくて――」
「なあ兄貴、そろそろ離れて欲しいんだけど」
「やだ。冬の寒さに耐え忍ぶ花のように、長い年月を耐えに耐えて、ようやくこうして堂々と千影に触れるようになったんだよ? これまで触れなかった分を取り返すためにもおれは引っ付く。できることならこのまま永遠に引っ付いていたい。一生養うから嫁に来て。ずっとおれと一緒に暮らそう?」
「どうしよう……兄の愛が重すぎる……」
「カオスですな」
ぎゃいぎゃいとあちこちで寮生たちが騒ぐ中、守屋は微笑みを浮かべて言った。
「ええ、全く」
要は荷物を抱え直して頷いた。
「園田様が来られる前の館は静かでしたな。それがいまや、おもちゃ箱をひっくり返したような大騒ぎ。わたくし、使用人兼0号館の寮監として、あまりのギャップに風邪を引いてしまいそうです」
「でも、このほうが楽しいと思いませんか?」
要は笑って守屋を見た。
「ええ、全く」
さきほどの要と同じ言葉を返し、守屋は笑みを深めた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!
佐々木雄太
青春
四月——
新たに高校生になった有村敦也。
二つ隣町の高校に通う事になったのだが、
そこでは、予想外の出来事が起こった。
本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。
長女・唯【ゆい】
次女・里菜【りな】
三女・咲弥【さや】
この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、
高校デビューするはずだった、初日。
敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。
カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
日曜日の紅茶と不思議な猫。
星名柚花
青春
高校進学を機に、田舎から上京してきた少女は広大な駅の構内で迷ってしまう。
道を尋ねれば逆に怒られるわ、日傘で足を突かれて転ぶわ、もう散々。
泣きそうになっていた彼女に声をかけてきたのは一人の少年。
名前を尋ねても、彼は素直に教えてくれない。
「言わないほうが多分、長く覚えててもらえるだろ」
どうやらだいぶ変わった人らしい。
彼と別れた後、夕食を買いに出た帰り道。
そこには猫を抱いた見覚えのある背中。
しかも彼、何やら一人でぶつぶつ喋ってる?
いや、一人で喋っていたわけじゃない。
喋っていたのは彼と、猫だった。
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
天ヶ崎高校二年男子バレーボール部員本田稔、幼馴染に告白する。
山法師
青春
四月も半ばの日の放課後のこと。
高校二年になったばかりの本田稔(ほんだみのる)は、幼馴染である中野晶(なかのあきら)を、空き教室に呼び出した。
漫才部っ!!
育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。
正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。
部員数は二名。
部長
超絶美少女系ぼっち、南郷楓
副部長
超絶美少年系ぼっち、北城多々良
これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
田中天狼のシリアスな日常
朽縄咲良
青春
とある県の平凡な県立高校「東総倉高等学校」に通う、名前以外は平凡な少年が、個性的な人間たちに翻弄され、振り回され続ける学園コメディ!
彼は、ごくごく平凡な男子高校生である。…名前を除けば。
田中天狼と書いてタナカシリウス、それが彼の名前。
この奇妙な名前のせいで、今までの人生に余計な気苦労が耐えなかった彼は、せめて、高校生になったら、平凡で平和な日常を送りたいとするのだが、高校入学後の初動に失敗。
ぼっちとなってしまった彼に話しかけてきたのは、春夏秋冬水と名乗る、一人の少女だった。
そして彼らは、二年生の矢的杏途龍、そして撫子という変人……もとい、独特な先輩達に、珍しい名を持つ者たちが集まる「奇名部」という部活への起ち上げを誘われるのだった……。
・表紙画像は、紅蓮のたまり醤油様から頂きました!
・小説家になろうにて投稿したものと同じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる