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44:友達になりましょう(5)
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「じゃあ、二人のほうが居心地がいいって思わせてみせるし、気を遣わなくていいよ!」
菜乃花は有紗の手を掴み、強引に頭から引き剥がした。
有紗の手は細くて華奢で、想像よりも温かかった。
有紗がびっくりしたように顔を上げ、菜乃花を見る。
「友達になろう! 後悔はさせない! 幸せにする! いや、そのための努力をする!」
姫に求婚する王子の気分で言うと、有紗は唖然として菜乃花を見つめ――とうとう、噴き出した。
「何よそれ……園田さんって、本当、変わってる……天坂くんや伏見さんが口を揃えて『いい人』だって言うのがわかったわ」
有紗は肩を震わせ、指先で目元を拭った。
「天坂くんたち、そんなこと言ってたの?」
繋いでいた手を離すと、有紗は照れくさくなったのか、髪を弄った。
「ええ。下校中、車内で私が園田さんに冷たくしたでしょう? それがずっと気になってたんでしょうね、夕食後に言われたわよ。園田さんはこれまで散々私を傷つけた有象無象とは違う、いい人だって。付き合えばその魅力がわかる、頼むから仲良くしてくれって。他人に興味を見せない天坂くんにあんなこと言わせるなんて、園田さんは凄いわね」
有紗は膝を伸ばして立ち上がった。
いつまでも床に跪いてもいられないので、菜乃花も立ち上がる。
「園田さん……。……ごめんなさい。下の名前、なんだったかしら?」
申し訳なさそうに、有紗は上目遣いで尋ねてきた。
「菜乃花」
「菜乃花、そう。菜乃花ね。わかった。覚えたわ。これからは菜乃花って呼ぶわね」
有紗は肩にかかる長い髪を後ろへ払った。
「え、じゃあ」
「そうよ。友達になりましょう……ああもう、こんな恥ずかしいこと言わせないでよ。察しなさい!」
有紗がまた顔を赤くして、そっぽ向く。
「わー、やばい、可愛い」
胸の前で両手を合わせ、菜乃花はにこにこ笑った。
「何言ってるのよ! いいから、菜乃花も私のこと有紗って呼びなさいよね!」
「うん、了解、有紗。よろしくね!」
びしっと親指を立ててみせる。
車内で大河に返せなかった仕草。
「……ええ。その前に、これまでの非礼をお詫びするわ。ごめんなさい」
有紗は長い髪を前方に垂らすようにして、頭を下げた。
さすがはモデル、深々と腰を曲げる所作まで美しい。
「そんな、いいよ。顔を上げて。そうだ、数学のプリントの問6の4わかった? ちょっと自信ないから答え合わせしたいんだけど」
「ああ、あれね。難しかったわよね。待って」
有紗が鞄からプリントを取り出すのを見ながら、こっそり微笑む。
(やったあ。友達ゲットだ)
これで体育教師の『二人組になって』のフレーズや教師の気まぐれによる『グループを作って』のフレーズに怯えなくても済む。
杏や千影が自分を高く評価してくれていることもわかり、菜乃花の胸は喜びでいっぱいだった。
菜乃花は有紗の手を掴み、強引に頭から引き剥がした。
有紗の手は細くて華奢で、想像よりも温かかった。
有紗がびっくりしたように顔を上げ、菜乃花を見る。
「友達になろう! 後悔はさせない! 幸せにする! いや、そのための努力をする!」
姫に求婚する王子の気分で言うと、有紗は唖然として菜乃花を見つめ――とうとう、噴き出した。
「何よそれ……園田さんって、本当、変わってる……天坂くんや伏見さんが口を揃えて『いい人』だって言うのがわかったわ」
有紗は肩を震わせ、指先で目元を拭った。
「天坂くんたち、そんなこと言ってたの?」
繋いでいた手を離すと、有紗は照れくさくなったのか、髪を弄った。
「ええ。下校中、車内で私が園田さんに冷たくしたでしょう? それがずっと気になってたんでしょうね、夕食後に言われたわよ。園田さんはこれまで散々私を傷つけた有象無象とは違う、いい人だって。付き合えばその魅力がわかる、頼むから仲良くしてくれって。他人に興味を見せない天坂くんにあんなこと言わせるなんて、園田さんは凄いわね」
有紗は膝を伸ばして立ち上がった。
いつまでも床に跪いてもいられないので、菜乃花も立ち上がる。
「園田さん……。……ごめんなさい。下の名前、なんだったかしら?」
申し訳なさそうに、有紗は上目遣いで尋ねてきた。
「菜乃花」
「菜乃花、そう。菜乃花ね。わかった。覚えたわ。これからは菜乃花って呼ぶわね」
有紗は肩にかかる長い髪を後ろへ払った。
「え、じゃあ」
「そうよ。友達になりましょう……ああもう、こんな恥ずかしいこと言わせないでよ。察しなさい!」
有紗がまた顔を赤くして、そっぽ向く。
「わー、やばい、可愛い」
胸の前で両手を合わせ、菜乃花はにこにこ笑った。
「何言ってるのよ! いいから、菜乃花も私のこと有紗って呼びなさいよね!」
「うん、了解、有紗。よろしくね!」
びしっと親指を立ててみせる。
車内で大河に返せなかった仕草。
「……ええ。その前に、これまでの非礼をお詫びするわ。ごめんなさい」
有紗は長い髪を前方に垂らすようにして、頭を下げた。
さすがはモデル、深々と腰を曲げる所作まで美しい。
「そんな、いいよ。顔を上げて。そうだ、数学のプリントの問6の4わかった? ちょっと自信ないから答え合わせしたいんだけど」
「ああ、あれね。難しかったわよね。待って」
有紗が鞄からプリントを取り出すのを見ながら、こっそり微笑む。
(やったあ。友達ゲットだ)
これで体育教師の『二人組になって』のフレーズや教師の気まぐれによる『グループを作って』のフレーズに怯えなくても済む。
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