上 下
75 / 107

75:テスト終了!

しおりを挟む
 期末テストの最終日はテストとホームルームで終わる。

 部活によっては早速放課後から活動を再開するらしく、有紗と昇降口へ向かう間、部室や体育館に向かう生徒の姿をちらほら見かけた。

「数学難しかったわよね」
「うん。確率の最後の問題、16だと思ったんだけど、有紗はどう?」
「私も16と回答したわ。良かった。学年トップと同じ答えなら安心ね。コミュ英の問2の和訳って――」
 出題されたテスト問題について話し合いながら階段を下り、昇降口で靴を履き替える。

 日向に出る直前、有紗は黒い日傘を差した。
 モデルの彼女は外出時、傘を手放さない。

 モデルではない菜乃花は素肌を晒したまま外に出た。

 たちまち夏の日差しが肌を焼く。
 まだ七月上旬だというのに、今日の最高気温は30度。

 八月になったらどれほど暑くなるのだろうと思うといまから恐ろしい。

「あ。杏ちゃん。テストどうだった?」
 裏門へ向かう途中で杏に会った。
 半袖の制服姿の杏は髪を下ろしている。
 彼女が髪を三つ編みにまとめるのはメイドをしているときだけだ。

「まあまあってところかしら。全科目中間より出題範囲が広くなったから、やっぱり難しかったわね。特に化学」
「だよね! 化学の平均点はかなり低そう。数Aも中間より下がるんじゃないかな。千影くんは大丈夫だったかな……」
 テスト期間中ずっと、菜乃花は自分のテスト結果より何より彼のことが気がかりだった。

「赤点だったら園田さんとはさよならか。一か月、長いようで短い間だったわね……」
 杏はきらりと眼鏡を輝かせ、晴れ渡った夏の青空を仰いだ。

「ちょっと、縁起でもないこと言わないで!」
 杏を交えて三人で歩き、やがて裏門に着く。

 黒塗りの高級車の中には既に千影がいた。

 総司たちの姿はない。
 2年生である彼らは1年生よりテスト科目数が多いため、総司の車に皆で同乗して帰るはずだ。

 車窓越しに目が合うと、千影は露骨に目を逸らした。

(……あ。これは、テスト結果が良くなかったんだな……?)

 暑さで噴き出た汗とは別種の汗が頬を滑り落ちていく。
 一部始終を目撃していた二人も全てを察したようで、有紗は青い顔で目を伏せているし、杏はハンカチで目を押さえている。

「……いままでありがとう、園田さん」
「だからまだ千影くんが赤点取ったって決まったわけじゃないから!」
 威嚇する猫のように歯を剥いてみせ、運転手が開けてくれたドアから車内に乗り込む。
 菜乃花は千影の隣、有紗たちは前列の座席に座った。

「……千影くん。テスト、どうだった?」
 爆弾に触れるような心地で、おっかなびっくり尋ねると、千影は頭を下げた。

「ごめん」
 開口一番謝罪ということは相当に低い点数を取った自覚があるらしい。

「………………」
 0号館で過ごした日々が走馬灯のように頭の中を巡る。

 できることならずっとこのまま0号館にいたかったが、どうやらそうもいっていられないようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

不撓導舟の独善

縞田
青春
志操学園高等学校――生徒会。その生徒会は様々な役割を担っている。学校行事の運営、部活の手伝い、生徒の悩み相談まで、多岐にわたる。 現生徒会長の不撓導舟はあることに悩まされていた。 その悩みとは、生徒会役員が一向に増えないこと。 放課後の生徒会室で、頼まれた仕事をしている不撓のもとに、一人の女子生徒が現れる。 学校からの頼み事、生徒たちの悩み相談を解決していくラブコメです。 『なろう』にも掲載。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

風船ガール 〜気球で目指す、宇宙の渚〜

嶌田あき
青春
 高校生の澪は、天文部の唯一の部員。廃部が決まった矢先、亡き姉から暗号めいたメールを受け取る。その謎を解く中で、姉が6年前に飛ばした高高度気球が見つかった。卒業式に風船を飛ばすと、1番高く上がった生徒の願いが叶うというジンクスがあり、姉はその風船で何かを願ったらしい。  完璧な姉への憧れと、自分へのコンプレックスを抱える澪。澪が想いを寄せる羽合先生は、姉の恋人でもあったのだ。仲間との絆に支えられ、トラブルに立ち向かいながら、澪は前へ進む。父から知らされる姉の死因。澪は姉の叶えられなかった「宇宙の渚」に挑むことをついに決意した。  そして卒業式当日、亡き姉への想いを胸に『風船ガール』は、宇宙の渚を目指して気球を打ち上げたーー。

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!

佐々木雄太
青春
四月—— 新たに高校生になった有村敦也。 二つ隣町の高校に通う事になったのだが、 そこでは、予想外の出来事が起こった。 本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。 長女・唯【ゆい】 次女・里菜【りな】 三女・咲弥【さや】 この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、 高校デビューするはずだった、初日。 敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。 カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について

塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。 好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。 それはもうモテなかった。 何をどうやってもモテなかった。 呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。 そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて―― モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!? 最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。 これはラブコメじゃない!――と <追記> 本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

処理中です...