こじらせ男子は好きですか?

星名柚花

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30:全ては三次元美少女のせいでした(3)

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「もし、仮に。万が一にもありえないけど。それでも、もしもありえたと仮定して。俺と園田さんが付き合ってたとしても」
(物凄い強調するね!?)
 その可能性はゼロだと言われているに等しく、地味に傷ついた。

「琴原さんには関係ないだろ」
 千影は正論を突きつけた。

(千影くんが明確に人を拒絶するなんて初めてだ……)
 直感的に、菜乃花は二人の間で何かあったのではないかと悟った。

「…………」
 音羽はまだ何か言いたいことがあったらしく、もどかしげに二、三度唇を動かしたが、きゅっと口を結んだ。

「……うん、わかった。変なこと聞いてごめん。じゃあ」
 音羽はほんの少しだけ肩を落とし、長い髪を揺らして去った。
 千影は音羽に視線を向けない。
 睨むようにテーブルの角を見て、押し黙っている。

 彼女の姿が完全に見えなくなったタイミングで、菜乃花は尋ねた。

「彼女と昔、何かあったの?」
「……。聞かないで」
 返事には力がなかった。
 憂鬱そうな表情が、気になって仕方ない。

 厭われるのを覚悟で踏み込むべきか、おとなしく引き下がるべきか。
 迷っているうちに、千影はテーブルの上を片付け始めた。

「ここは片付けておくから。教室に戻っていいよ」
 千影はこちらと目を合わせようとせずに立ち上がり、両手でトレーを持った。

「うん……ありがとう。またね」
 まるで二日前の再現だな、と思いつつ、菜乃花はその場を後にした。

(……何があったのかなあ……気になるけど、聞いてほしくないんなら、聞いちゃダメだよね。またいつか話してくれたらいいな)
 食堂を出て、廊下を歩く。
 A組の教室がある棟に入ってすぐに、菜乃花は足を止めた。
 待ち伏せするように、廊下の右手に音羽が立っている。

「さっきぶりだね、園田さん」
 待ち人は菜乃花だったらしく、音羽は歩み寄ってきた。

「うん。どうしたの?」
「ちょっと話をしたくてね。天坂くんから私のこと、聞いてない?」
「特には何も聞いてないけど……」
「そっか。話してないんだ。話してない、というより話したくないのかな。それだけのことをしちゃったもんなー」
 音羽は困ったような顔で、長い髪の先端を人差し指に巻き付けた。

「……何をしたの?」
「あー、うん。私たち、付き合ってたんだよね。一ヶ月くらい」
「!!???」
 さらっと告げられた衝撃的な事実に、菜乃花は目を剥き、口を半開きにした。

(付き合ってた……こんな美少女と……!? いや、美少女云々はともかくとして。中等部のときは三次元女子に興味があったってことだよね!?)
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