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17:私はもふもふしたいんです(4)

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「幻獣が人間と契約を結ぶことで得る利点は?」
「ない。利点があるのは人間だけだ」
 ハクアの回答は至極あっさりとしていた。

「……それじゃ幻獣は一方的に魔力を搾取されるだけなんですか?」
 目をぱちくりさせる。それではあまりにも不公平のような。

「そうだな。だが、幻獣は不思議と人間に友好的なのが多い。人間が酷いことをしない限りは懐いてくれる……ここに酷いことをされまくって見事に人間嫌いになった奴が一匹いるが」
 トウカは身を縮めた。しょんぼりと狐耳が垂れている。
 それを気にしたらしく、ハクアがトウカの頭を撫でた。
 無表情とは裏腹に、優しい目と手つきで。

 トウカはくすぐったそうに目を細め、頬をほんのり薔薇色に染めた。
 ふさふさの尻尾が、ぱたぱた揺れる。ハクアを出迎えたときのように。

(ああああああ可愛いいいいい!!)
 トウカの子犬の如き愛らしさは新菜の脳天を直撃し、危うく鼻血を噴くところだった。
(いいなあ、いいなあ、わたしにもあんなふうに笑ってほしいなぁ)
 無垢な笑顔を向けられるハクアが羨ましくて仕方ない。
 ここに黒板があれば爪でぎーっとやりたいくらいだ。

(わたしも絶対トウカと仲良くなってみせる! そしてその暁には、あの耳と尻尾を思う存分もふもふさせてもらうのよ!! あの艶やかな毛並み、申し分のないもふもふっぷり! もふもふ! もふもふ!! ああっ、撫で回したいこの指で極上の毛並みを堪能したい……!!) 
 新菜は鼻息を荒らげ、テーブルの下で両手をわきわきと動かした。
 新菜にとって、パルスとか神獣とか契約とか、そういう小難しい話はどうでも良いことだった。

 一目見たときから、新菜はトウカの愛くるしさ――引いてはもふもふの狐耳と尻尾の虜になっていたのである。
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