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16:私はもふもふしたいんです(3)

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「パルスが局地的に集中する場所は、通常じゃ考えられないような天変地異が起きやすい。リエラの招き人が現れるのはまだ可愛いほうで、雷が延々と落ち続けたり、火山が噴火し続けたりする。魔物も活性化するらしくて特に凶暴なのが多いから、無闇に森に入るのは勧めない」
「あの、それならどうしてこんなところに住んでるんですか? 人と一緒に暮らすのが難しいという事情はわかりますが、何も危険な森の近くで暮らす必要はないのでは?」
 窓から吹き込んできた風が三人の髪を揺らす。
 トウカの狐耳、その右耳だけがぴくりと動いた。

「パルスラインが走っているからといって、悪いことばかりでもない。地中からは良質な光石が採れるし、地表では作物が豊かに実る。ここにしかない貴重な植物や動物もいる。おれは人間にそれを売って生計を立ててるんだ」
「あ、そうなんですか。じゃあ近い方が便利ですね」
 ハクアが摘んでいた薬草も、売るためのものだったのかもしれない。

「森では稀に、幻獣も生まれることがあるしな。こいつみたいに悲惨な目に遭う前に、安全なところへ逃がすか、信頼できる保護団体に預けたいんだ」
 その言葉を受けて、トウカに目を向ける。
 トウカはちょうど食べ終えたところで、水を飲んでいた。
 カレーが桜色の唇についている。拭ってあげたい衝動に駆られた。

「幻獣ってパルスから生まれるんですか?」
「幻獣同士が子を成すこともあるが、基本的にはパルスから自然発生する。人間は虹色の角が一本で獣型なら幻獣、二本以上あって人型なら神獣と呼んで区別しているが、形が違うだけで本質は同じ幻獣《もの》だ。だからおれは神獣でも幻獣と呼ぶが気にするな」
「はい」
「参考までに言うと、神獣の魔力の強さは角の数に比例する。文献に残る角の最大数は五本、女神が従えた伝説の神獣ラグナーシュ。そいつは山を吹き飛ばして海を割ったらしい」
「凄いですね……」
 山を吹き飛ばす。海を割る。もはや天災規模の魔法だ。
(じゃあ、三本角のトウカが本気になったら、どれだけのことができるんだろう?)
 好奇心が疼いたが、口に出さないくらいの分別は持っていた。
 余計な質問をしてトウカに警戒されるのは嫌だ。
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