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03:学年トップの王子様?(3)

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「……。……マジで?」
 震える声で問う。

 品行方正な委員長であろうと心掛けている沙良は普段人前でこんな言葉遣いをしないのだが、それほど動揺していた。

「マジで」

 秀司はあっさり顎を引いた後、

「それを踏まえた上で、さあ。いまのお気持ちをどうぞ」

 にこにこしながら握った拳をマイクに見立てて沙良の口元に寄せた。

「~~っ、……悔しいです……」
 俯き、蚊の鳴くような声で言う。

「え、なんて? 聞こえない」

 意地悪く促す秀司の瞳はキラキラ輝いていた。
 楽しくて楽しくて仕方ないらしい。

 どういうわけか、秀司はテストで満点を取ったときでも、バスケでシュートを決めたときでもなく、こうして沙良をからかっているときにこそ最高の笑顔を見せる。

(このドS……っ!!)
 前言撤回。
 この男のどこがアイドルだ。王子様だ。

「ああもうっ、認めればいいんでしょう!? 私の負けです完敗です!! 超天才の貴方様に勝負を挑むなんて、とんだ身の程知らずでしたごめんなさい!!」
 やけになって叫ぶ。半泣きで。

「わかればよろしい」
「何したり顔で頷いてんのよおおお!!」
 とうとう本格的に泣き出し、沙良は秀司の両肩を掴んで激しく揺さぶった。

 秀司の艶やかな黒髪とストライプ柄の紺色のネクタイが動きに合わせて跳ねる。
 沙良も周囲の生徒たちも同じネクタイをつけていた。
 三駒高校は男女ともにネクタイ着用なのだ。

「お、始まったぞ」
「もはやテスト後の恒例行事だな」

 周りの生徒が何か言っているが気にすることなく、感情のままに沙良は喚いた。

「勉強だけが冴えない私の唯一の取柄だったのに! 入学式で新入生代表挨拶をしたときは最高の気分だったのに、これから順風満帆な高校生活が始まるって信じて疑わなかったのに!! 後で先生に『実はトップ入学は不破くんだった』と明かされたときの私の気持ちがわかる!? 初めての中間テストでも涼しい顔で一位取っちゃってさあ!! 中学でトップだったらしいけど、私だってずっと、ずーっと西中《にしちゅう》でトップだったのよ!? それなのに負けっぱなし! いまじゃ『にいんちょ』なんて不名誉なあだ名までつけられて! 不破くんばっかり才能に満ち溢れててずるいわ! 勉強も運動も何でもできるなら学年一位の座にこだわる必要なんてないでしょ!? 一回くらい私に一位を譲りなさいよ! これ見よがしにつけてるそのバッジ寄越しなさいよ!」

 秀司の胸元には校章入りの金バッジが輝いている。
 欲しくて堪らない学年トップの証を、秀司は一向に手放してくれない。
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