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第4章 学園卒業しました!同時に結婚しました

緑と水の国で冬越し

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  フォーセルダに入ってから、影の気配はない。

  帝国やアゼリア王国との国境、5000m以上の山脈に近いほど雪が深いので、麓に広がる森の中を少しずつ移動している。

  フォーセルダでの越冬になりそうだと思ってる時、オーディナルに帰り着いたヴィルジーク様から、連絡が来た。

  と言っても、婆ちゃんが飛ばしたフクロウでだけど。

  現在は、辺境には戻って居らず、王都に居るとの事だったのと、コーデリアに渡したスマホの会話可能の距離が知りたくて、callすれば……

  帝国でも、レイリアでも、不可能だったのに、音が鳴った!

  《ライラ!?》コーデリアの声が直ぐに聞こえた。

  《話は聞いてる!今、何処なの?》

  矢継ぎ早に聞いて来るコーデリアの奥から、数人の声がする。

  その中にヴィルジーク様の声がする。

  「今は、フォーセルダの森の中。雪が深くて動けない」

  そう言えば、少し安堵した声音に変わった。

  けどだねえ……

  レイリア神聖国の聖女の失踪に、手を貸す事になって、一緒に雪山の中だと言えば、コーデリアには苦笑された。

  オーディナルにまでは連れて来るつもりでは居たけど、その後どうしたら良いだろうか?

  そう思ってたので、ご相談しました。

  政治的案件なのに、勝手に受けて、丸投げして、ごめんなさい。


  ちなみに、ジルは本人が言うように、何でも出来る。

  平民だと言っても、少女の時に神殿に入って、聖女になってるので、仕方を知らないと思ったのに、掃除に洗濯、料理も出来る。

  出来ると言っても、塩味の料理ではあるけど。

  その上、パンは作るものではなく、戴くものって……

  話を訊けば、パンの作り方を司祭達が握ってる様でして、貴族であっても、パンは派遣司祭が作ってるって、なんで!?

  「パンは、神の肉体より作られ分け与えられた物だからです」

  真剣な顔付きで、ジルに言われて退いた。

  レイリアでは、全てのものは神の手によるもので、信じる者は全て分けて戴けるって言うのが、真理の様で……

  それで、レイリアの末端の村でも、あの対応だったのかと合点はいったけど……

  他国から来た者には受け入れられないよ!

  で、ジルは苛めに近い扱いをされた聖女だったけど、平民からすれば分けて戴ける方だったので、して貰うのを待つ様な事はなかった。

  オーディナルに来たら、世間とのズレに気付くだろうね。

  とりあえず、美味しいパンの作り方は教えてあげたよ。

  果物や木の実が入ったパンが気に入った模様。

  一応、ジャムやクリームなども教えたんだけどね、「私には贅沢です」と一刀両断された。

  となれば、コーデリアのサロンに出るケーキなどは、固辞されそうな気がするよ。


  コーデリアとの会話は、コーデリアの魔力が電池代わりなので、ほどほどにして終えたのだけど……

  コーデリア、ヴィルジーク様にも代わってくれて、少し言葉を交わした。

  まあ、スマホの性能に驚いてたけど。

  会話は携帯電話の基本的性能なんだけどね。

  コーデリアも、スマホを使いこなしてる様だけど、会話だけは距離が問題だね。


  召喚獣の小屋は、外の環境より緩和されてるものなんだけど……

  王都に居た時よりも積雪量が多く、全く、移動できると思えない。

  亜空間の中の亜空間でなければ、寒さで枯れ落ちてしまってるよ!と言うくらいに、小屋の中も1mの雪。

  温室や水車小屋の中の花畑などは、一切影響を受けて居ないけど。

  と言う事で、温室に入っていなかった水田や野菜畑、果樹などに影響が出てます。

  多少、雪が降る程度では支障はなかったのに。

  まあ、実る度に収穫はしてるから、在庫は十分にあるので、飢えることはないけど。

  要するに、立ち往生してるの!

  サラサラのパウダースノーの雪じゃなく、湿り気が多い重たい雪ってやつです。

  緑溢れ水が豊富な国って事だったのに、冬は雪で閉ざされた国になるのね。

  そう言えば、初級ダンジョンに行ったのも、冬だったけど、これほど積もるとは思わなかったよ。

  でも、こればかりはどうしようもないので……

  召喚獣の小屋のロッジで籠って、日頃出来ない事をしてるんだ。

  当然、ジルも常に何かしらしてた人だからか、落ち着かず、大きな織り機や糸巻き機があるので、手を動かしてる。

  刺繍とかをしてる者は見た事あったらしいけど、してる時間はなかったそうだ。

  それだけじゃなく、大きい道具が必要な手工業は初で、興味津々だったので教えたの。

  ただ……

  出来た物を鑑定して怯んだ。

  「聖魔法が編み込まれた布」って……

  聖騎士が着用してるという噂の布!?

  普通の布に刺繍しても、同じ効能がある様で……

  うわぁと思う代物になってた。

  自分も意図して、魔力を流して、防御の防具を作ってみた事あるけど……

  国王陛下のマントとか並じゃないかな。

  とりあえず、ヴィルジーク様と応相談だね。










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