上 下
74 / 79
第4章 学園卒業しました!同時に結婚しました

魔王とは

しおりを挟む



  レイリア神聖国に入ってからは、ゆっくりと薬草を採集したり、レイトル達が満足行く様に進みながら、レイリアの首都を目指した。

  と言うのも、フォーセルダに向かうにも、1度首都に辿り着かないと向かえない様な道になってるの。

  ただ……神聖国を謳ってるだけあって、あまり薬草採集をしないのかな?

  帝国でも、森の際にある薬草は摘まれてるのに、手付かずの物が多くあった。

  なので、採集しながら、猫たちやカラスたちの情報を貰ったりしてた。

  ただ、帝国から1人、影が送られて来てるけど、バレバレ。

  だって、薬草採集したり、森の贈り物であるキノコや果物などを収穫したり、食べたりしてるんだよ。

  「魔物が近付いて来ないか、索敵してるのに、引っかからないと思ってるのかな?馬鹿じゃない?」

  大きめの声で口にすれば、距離を開けたけど……

  500m以上開けたとしても、気付くっていうの!

  日頃から常に、レーダーじゃないけど、探索掛けてるんだからね。

  ちなみに、勇者が見付かった事で、レイリア神聖国から聖女が出発するんだって。

  今までにも、治癒士は帝国に貸し出してたけど、聖女は数多くはいないので、勇者が現れるまで保留だったみたい。


  レイリアに入ってはいるけど、村で長くは滞在していない。

  「神のみ心のままに」という挨拶をするのが、レイリアの通常の様で、面食らった。

  最初の村で、道などを知るのに一時滞在した時、Aランクの冒険者タグを出せば、依頼を受けるのが当たり前の様に対処され……

  足を停めずに通り過ぎるだけにした。

  だって、召喚獣の小屋さえあれば、野営する必要なく、襲われる恐れもないもん。

  ちなみに、依頼は自分にすれば大した事の無い、魔物の討伐だったんだけど……

  その上、ギルドがない様な村なので、依頼料が払われる事もない。

  その上、討伐した魔物の素材や肉を分け与えて頂けると思ってる感性に、顔が引き攣った。

  国が違うと国民性も違うんだと、理解した瞬間だったけど……

  村にはもう滞在しないと決めたんだ。

  虎穴に入らずんば…じゃないけど、さすがに無理。

  困ってるのなら助けるのに手を貸す事はするけど……

  無償の愛だとか、分け与える精神だとかは立派だけど、その受ける方が当たり前だと思ってるのは、良くないと思うんだ。

  なんか歪な国民性だなあと思いながら、町となれば大丈夫だろと安易に思ってた。



  最初の村で教えて貰った、町だというホンディが見えて来た頃、町が異様な陽気に包まれていた。

  なんだろ?と思いながら、町に入る行列に並べば……

  「運が良いなあ!」
  「聖女様を一目でも見れるなんてなあ」

  前に並んでるオジサン達の声が浮かれてる。

  なるほど。と理解は出来たんだけど、そう言えば、聖女と魔王は相対するもの。

  勇者の剣が現れると同じくらいに、魔王は現れるとは聞いてる。

  それに、聖女という称号が現れる者は1人ではなく、数人居ると、先日耳にした。

  魔王討伐に駆り出される聖女は、どういう立場なんだろ?

  それに、先日から考えてる魔王って、悪い者なんだろうか?

  幼少期に聞いた童話では、魔王は悪者なんだけど……

  世の中、清濁併せ持つ者が普通で、正しい悪いも、人によってそれぞれ。

  我が国にしてみれば、侵攻しようと言う考えが安易に浮かぶ帝国のストッパーに、魔王がなってくれてるので、大変ありがたいと思うよ。

  魔物が力を持つと言われても、魔物は危険だけど、生きていく上で欠かせない食い扶持なの。

  そりゃスタンピードが起きない様に、間引きは大事だけど。

  そんなことを考えていたら、順番が回ってきた。


  門を支障なく無事に通り抜け、ホッとしながら、自分はとりあえず、冒険者ギルドにと思い、向かった。

  町にある神殿に、聖女様は滞在中との事だけど、自分には関係の無い事だし……

  ただ……そのギルド、町のだけに受付カウンターが少ない。

  午前の忙しい朝1にはきっと3つのカウンターが開いてるんだろうけど、既に昼の時間帯で、冒険者はまばらになるものだけど……

  その上、聖女が滞在中だから?冒険者の姿がほとんどいない。

  だからか、カウンターの受付嬢も1人。

  だったんだけど、先客が居た。

  頭まで、フードをすっぽりと被ってるけど、女性と分かる身長に、脚線、それとなんといっても匂い!

  冒険者ともなれば、匂いで感知される事もあるので、極力、匂いは排除する。

  それでも、女性としては付けたいので、森林系と野山の花のブレンドしたオリジナルを作ったくらい。

  ただ、匂いに関しては、風魔法で色々と出来るんだけどね。

  でも、そっちに使うと鑑定が使えなくなったりするので、使っていない。

  明らかに、やんごとない姫系が、ギルドに来ていて、何やら依頼をしている。

  これ、荒くれ系の冒険者が居たら、絶対に不味かったと思われる。

  その彼女が横に退いたので……

  Aランクの冒険者タグを出せば、受付嬢が息を飲んだ。

  「フォーセルダ経由で、オーディナルに戻りたいの。レイリアとフォーセルダに詳しくないから、情報が欲しい」

  そう言えば、「依頼を受けて戴く事は出来ますか?」と聞かれた。

  「秘密を守れるならば、受けるよ」

  指で音を立て、会話が少しでも聞こえない様にして、答えれば、カウンターの奥にある個室に通された。


  しばらくすれば、案の定、受付嬢と入って来たのは、ロングマントで姿を隠した女性。

  「依頼は、フォーセルダでも、オーディナルでも構いません。他国に連れ出して欲しいのです」

  そう言うので、頷きはしたけど……

  「見た事、耳にした事を口にしない魔法契約だけして欲しい。それだけしてくれれば、安心して行ける」

  そう言えば、恐る恐る目を上げ、見て来た瞳の色は澄んだ水色だった。

  あー、やっぱり聖女か。

  さっき前で喋ってたオジサン達が、聖女の特徴を喋ってたの。

  そう思いながら、受付嬢を見れば、魔法契約の書類を差し出した。

  用意の良いことで。と思いながら、目を通して、魔力ペンでサイン。

  大昔は血判だったらしいけど、今は魔道具です。

  彼女がサインすれば、早速、ギルドの裏手に案内して貰った。

  怪訝そうな顔になった2人だったんだけど……

  どうやら、この2人顔見知りなんだと伝わって来る。

  召喚獣の小屋は、地面がある場所でないと展開出来ないのはお約束。

  彼女だけでなく、受付嬢も驚く中、彼女を中に誘った。

  「ここで待っていて、召喚獣にむやみに触りさえしなければ、攻撃はされないから」

  そう言って、置いてきて、受付嬢にも魔法契約書を差し出した。

  素直にサインしてくれたんだけど……

  「受けてくださってありがとうございます」

  泣きそうな顔になりながら、御礼を言われた。

  「それより、頼んだ情報」と言えば、ハッとして、渡してくれた。

  「ここが落ち着いたら、来れば良いよ」

  そう言いながら、目を通してた。

  ただ、彼女が居るので、首都に入らず、ショートカットするかねえ。

  「ありがとうございます」と言う彼女に、忠告。

  「彼女の依頼は受けてない。良いね。自分が来た事は口にしても良い。自国に戻る情報を聞かれた事も」

  そう言えば、頷いた。

  「じゃあね、重々気を付けるんだよ」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

処理中です...