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しおりを挟む常に、逃げ出せる様に、食事に付いてるナイフを隠そうとしても見付かるので……
窓に付いてる黒いアイアン製の柵を、魔法で削って、溶かして固めを、少しずつ繰り返していた。
ペーパーナイフになるくらいになれば、ベッドのシーツを割いて、紐になる様に編んで隠していた。
その後は、再び、ナイフを太くするのに、削る作業をしていた。
そんなある日、自分の部屋の隣に、誰かが移動して来た様だった。
ずっと、自分が監禁されてる階には、誰も居なかったの。
いや、居たかもしれないけど、使用人用ではない大階段を使わないと来れない、この部屋の周辺には居なかった。
だけど、下の階、たぶん3階には何人か居た様な気がする。
と言うのも、よく喚いてる声を何回か聞いてるから。
一昼夜喚き散らし、静かになるって言うのが怖くて。
勇者が殺したんだろうか?って、想像してしまって。
で、その連れて来られたのが誰なのか……
分かって居なかった。
だって、口を塞がれていたのか、声がしなかったから。
だけど、鍵が開ける音がして、作業の手は止めてたけど、隠蔽はしてなかったので、慌て気味に、ペーパーナイフを胸の間に隠した。
この部屋に入って来るのは、食事を持って来る屈強な女しか居なかったので、顰めっ面で睨めば……
案の定だったんだけど……
ドスドスと音を立てて近ずき、手首を痛いくらいに握って、部屋から引き摺りだそうとしていた。
「こんな事をしなくても、口にすれば良いでしょ!」
そう口にすれば、憎らしそうに睨んだと思えば……
「口を開くんじゃないよ!」と怒鳴られた。
何処に連れて行かれるのか不安に思ったのに、入れられたのは、近場で、隣の部屋だった。
「ソイツらの世話をしな!」
そうとだけ言って、屈強な家政婦、鍵を掛けて出て行った。
のだけど、その部屋に居たのはベビーベッドに寝かされた赤ちゃんが、5人も居た。
だけど、どの子もが赤ちゃんの特徴を失っていた。
ふっくらしてたであろう頬はガリガリで、泣く声は小さくて、「なんて事なの!?」と声をあげる程。
この部屋が、この屋敷の女主人となる者の居室で、自分が寝泊まりさせられていたのが、専任侍女の部屋だったとは気付いてなかった。
ただ……
再び、ドスドスという足音とカートを引く音がして、屈強な家政婦が来たのに気付いた。
いつも、食事を持って来る際でもカートを使わないのに。と思ってたら……
開いたのは、先程入れて閉められた装飾のある綺麗な引手が着いた扉ではなく、隠し扉の様になった壁が開いた。
「何もかも自分でするんだね!」
鼻で笑って、そう言って出て行った家政婦だけど……
その壁の向こうは、自分が寝泊まりしてた処だった。
その後、部屋の一部始終を見て回って、判明したのは屋敷の女主人の居室だって事だった。
マクシミリアン殿下が住まう筈だった屋敷って事は、この部屋は本来、シンディが住む筈だった。
そう理解すると同時に、眉を顰めてた。
幸せの風景がある筈だったのに……
そう思うと、悲しくて口惜しい。
シンディは大人しくしてるんだろうか?
そう思いながら、シンディが決めたのであろう、マクシミリアン殿下の居室になる筈だった部屋との間にあるレストルームに向かった。
マクシミリアン殿下の居室に至る扉には鍵が掛かってたけど、念の為、作ったシーツのロープで開かないように縛った。
その後、レストルームに湯を張り始めた。
屈強な家政婦が文句言うのなら、赤ちゃんを清潔に保つのも大切なんだと言ってやろうと思ってた。
でも、とりあえずはミルクだと思い……
女主人の部屋にならある温める機能だけの魔道具に、冷たいミルクを鍋に入れて、乗せた。
汚れてる肌着を脱がせ、湯の張った湯船に浸からせ、汚れを洗い落とし、吹いてから新しい肌着を着せ、人肌に温めたミルクを哺乳瓶に入れ、飲ませる。
その間にも、防御魔法を掛けてるから、ピリピリで済んでるけど、攻撃されてるのには気付いてる。
ゲップをさせて、ベビーベッドに寝かせたら、次の赤ちゃん。
そんな事をしてる間に、湯がミルクが冷めてしまうので、手が欲しい処だけど……
あの屈強な家政婦が、自分に押し付けて来たって事は、世話を出来る者が居ないんだろうね。
5人もの赤ちゃんの面倒を見るのは、とても手間が掛かって大変だと、1日経たずとも気付いた。
それと、文句を言ったのに、聞き入れられる程、この赤ちゃんが大事だって事にも。
お陰で、屈強な家政婦にとっては自分にさせようと思ってた様なオムツ洗いから免れた。
怒り狂ってたけど、オムツ洗いは誰にでも出来るもの。
まあ、自分も、24時間休みなくグズる赤ちゃんの世話は大変なんです。
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