1 / 13
1
しおりを挟むそう小さい時からそうだった。
眠ると、大概、怖い夢を見て、泣いて目覚めるを繰り返した。
見る頻度は毎日ではないけど、とてもリアルな夢だった。
今、目覚める前に見た夢は……
会った事の無い白髪混じりの口髭を生やした初老の男性が、青筋を立てて怒り、杖を振り上げていた。
「私の!私の孫を!赤ん坊を何処にやった!」
その怒鳴り声と形相が、余りにもリアルで飛び起きたんだけど……
ふと、夢に出て来たお爺さんが、以前の夢にも出て来た事を思い出した。
「どうした?」と言って、横で寝てた男が声を掛けて来たが……
彼は自分の夫ではない。
自分は、リリアンヌ・ソビジェーブ、伯爵家の長女として生まれた。
生まれた時から、愛くるしい女の子だったので、愛されていたと思うのだが、気付いた時には遠巻きにされ、疎まれていた様に思う。
特に、私の下に、これまた可愛く生まれた妹と、家を継ぐ弟が生まれれば。
自分が見る夢は、物心がつく頃にはあって、毎日ではないけど、度々あって、その度に、泣き叫んで起きるので、いつの間にか、部屋も屋敷の隅に置いやれた。
そうなれば、両親に仕えてる者たちは、自分の事をおろそかにし始めた。
自分の乳母だった者や自分付きの侍女が居なければ、衣食住が滞っていただろう。
ただ、自分の見る夢が、ただの悪夢ではなく、予知夢だと気付いたのは、いつだったか。
当初は、両親に、夢の内容を訴えていたのだけど……
気の引く為の与太話だと受け止められ、母は可哀想な子を見る目で見、父には余計に邪険にされた為、話すのを止めた。
父は、アマルディア王国で、伯爵に任じられ、代々領地管理し、税を納める立場だったのだが、代々実直な性格の者が多かったからか、領地は肥沃で富んでいた。
その領地で、収穫間近の小麦畑が火に包まれ、1夜にして焼け野原になる夢を見た。
さすがに、両親に言おうと、震えながらも思ったんだけど、反対に気味悪がられる気がして、勇気が出なかった。
似たような夢を何度も見る事で気付いたのは、火が燃え盛る中、聞こえて来るのは悲鳴ではなく、面白そうに笑ってる声だと言うこと。
雷が落ちて発火した事になってるけど、火を付けてる者が居るんだ。と思ったけど、自分にはどうしたら良いのか、分からなかった。
それで、1番なんでも話せた彼に話す事にした。
隣の領地の侯爵家子息で、継嗣予定のレイノルドに。
次男なのに継嗣予定なのは、長男が弱いからって事になってるけど、たぶん違うんだろうな?と、自分は思ってた。
今、目の前に居る彼、レイノルドに、可愛がられてるシンディが寄り付かないのは……
彼が食べるのが大好きで、おデブだから。
それだけじゃなく、シンディに可愛いねと言ってあげないから。
両親は、シンディと自分に接待を任せたんだけどね。
当時5歳の彼女に無理というものだ。
身体をよく動かしていれば、顔立ちからもイケメンだったろうと思えるほどだけど、気持ちいい程の食べっぷりだからねえ。
今も、自分の話を、片手に茶請けとして出されたマドレーヌを持ち、口をもぐもぐさせながら、聞いてた。
特に、頷くでもなく、ただ聞いてるだけだったけど。
それでも、当時8歳だった自分には、胸の中に留めてもおけなかったの。
王様の耳はロバの耳と、穴の中に叫んだのと同じだと言うのに、口に出来た事でホッとしてた。
ただ……もぐもぐと食べてるだけのレイノルドが、思案していると思ってなかった。
そう、隣の領地だけあって、親が旧知の仲と言う事で、縁談の話があって……
候補の2人を会わせたのだと、自分はその時は知らなかった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる