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第3章 ザ・バットとパペッター
22: ビザランティスへの入り口
しおりを挟む指尻ゑ梨花は、少し分析に疲れていた。
仕事は、6係から依頼されるものだけではないのだ。
時間の制約があるものを、先に片付ける。
その後、6係の依頼に取り組む事になる。
スケジュールが立て込み、時には都心にあるオフィスで、仕事を片付ける為に泊まる事もある。
だが今日は、分析を早い目に切り上げた。
ヨス・トラゴンと名付けられたヘルメットを被って、加害者の記憶を再構築する作業は相当に疲れるからだ。
早い帰宅といっても、終電の時刻には自宅近くの夜道を歩いている程度の時刻だ。
ゑ梨花の自宅がある地域では、近くに小さな山脈を望むことが出来て、夜中に帰ると、それが闇にうずくまった子牛のように見えることがある。
そしてその腹を舐めるように、遠くに走る電車の窓から漏れる光の筋が流れて行く。
早春の春の夜、ゑ梨花が列車の生み出す光の筋を眺めながら思い出すのは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」だった。
指尻が「銀河鉄道の夜」を初めて読んだのは小学生の頃、、、つまり実の母親が残した下着に顔を埋めて泣いたころの事だ。
(後で指尻は「その人」さえも実母でなかったのを知ったが)
指尻は「銀河鉄道の夜」という小説が、とても有名で、誰にも親しく読まれているという大人達の説明が不思議でならなかった。
これほど悲しくて、これほど恐ろしい小説が、なぜ多くの人々に受け入れられるのかが、ゑ梨花にはよく理解出来なかったからだ。
特にジョバンニが、北十字の前を通り白鳥停車場の20分停車の間に、プリオシン海岸へ行き、化石の発掘現場を見る下りから、彼の仲間とも言える「死人の魂」達に置き去りにされていく銀河鉄道の車内風景が、あまりにも寂しいように思えたのだ。
帰り道、闇の中で漂う白木蓮の甘くて強い香りが、ゑ梨花の中にまだ残っている清純な性欲を呼び覚ます。
道路を走り抜けていく車のヘッドライトが一瞬、庭先にある白木蓮の植え込みを照らし、その厚みのある白くて清楚な花を浮かび上がらせていく。
白木蓮はゑ梨花の夢想都市ビザランティスの中で、唯一、清楚な香りを放つ植物だ。
ビザランティスの中では、女の子に化けたカムパネルラが、己の頭と顔全体に張り付けた黒いゴムの頭巾に、ザネリ達の大量の精液をなすりつけ、その匂いに酔いながら泣いていた。
カムパネルラの体内のアナル産道はすでに、自らの空洞を埋めてくれる「肉」を恋い焦がれるようになっている。
カムパネルラの友情の誓いなどいらない。
それよりも「春」よ、来い。
ジョバンニの血肉の行為こそが、「春」だ。
そしてこの冬のビザランティスに、春の嵐を吹かせろと。
中間テストが終わり、午前中で学生は下校できる。
ある意味、学生にとっては一番開放感の感じられる時かも知れない。
当時、ゑ梨花は中学1年生で、これでテストととも当分おさらばだと、友人の家に遊びに行った。
ゑ梨花達は、中学生らしい、くだらない話で盛り上がっていたのだが、腹が減ったから帰ると言うと、今日は親もいない事だし、一緒にカップ麺を食べて、もう少し話をしようという事になった。
お腹が落ち着くと、今度は友人の部屋に上げてもらった。
その日は、友人の家に初めて行ったので、彼の好きなアイドルの写真等を見せてもらったりと話のネタが尽きなかった。
それでもさすがに夕刻が近づく頃には、友人は「ア~、話し疲れた」とベッドに寝転がるようになった。
なにせテスト明けなのだ。
「お前どうする?俺、もうなんか眠いわ」
友人はそう言って目をこすった。
「うん…」
疲れてしまったのは確かなのだけれど、ゑ梨花はまだ話し足りない気分でいた。
でもまた話に来れば良いかなと、一度はそう思って立ち上がったのだが、不思議な事に、一緒に仮眠すれば目が覚めた後、また話せるんじゃないかとゑ梨花は考え直した。
それで「俺も、寝てく」と言って、ゑ梨花は友人の隣に転がってしまったのだ。
友人は「バカじゃねぇの?」という風に笑って、ゑ梨花を布団の中に招き入れてくれた。
なんかホモみたいと言いながら二人で爆笑をした。
寝っ転がったら寝っ転がったで、話は違った形で弾み、今までよりはゆっくりしたスピードでゑ梨花達は、また男二人で話し始めた。
そんな中、ゑ梨花は何気なく友人を見たのだが、彼の方を振り向いたゑ梨花を、友人も偶然見返して来た。
すると二人の距離は、お互いの息がかかりそうなほど顔が近かいのが判った。
その気まずさに、二人は何か何時もとは違う感覚になり、「やべえ」と友人が思わず口にした。
「何?」
「何でもねえよ」
「何」
「……」
友人は伏目がちになりゑ梨花の顔を見ようとしなくなった。
女の子が照れてるようだとゑ梨花は思った。
「何だよ、お前何か可愛い感じになってるぞ。」
ゑ梨花は、そう何となく言ってみた。
しかし友人はパッと目を上げて、ゑ梨花をじっと見つめ出した。
熱くゑ梨花を見つめていて、初めはモジモジしていたその目を、今は決して逸らさず、真剣な、しかし奇妙な熱さでゑ梨花を見つめ、何かごそごそし始めたのだ。
「どうしたん?」
ゑ梨花が、もぞもぞと下半身を動かしやがて眼を閉じた友人の行為の意味を悟った瞬間と、友人が口を開いたのは同時だった。
「ちんちん、勃って来た」
友人はズボンの上からペニスをいじっていたのだ。
「誤解すんなよ、俺、ホモじゃねえから」
そう言いながら友人は眼を閉じて自分の世界に入っていく。
友人が口を半開きにして眼を閉じている表情が見えた。
ゑ梨花には、友人が自分の側にいて、オナニーに感じながら息を吸ってるという事実が衝撃的だった。
「バカじゃねぇの?男見てなに勃たせてんだよ」
「知らねえよ、キスできそうとか思った途端に勃ったんだよ」
「お前、まさか、俺の前でオナニーする気?」
友人は少し息を上がらせながら、目を開いてゑ梨花の金ボタンを外し始めた。
しかしゑ梨花は抵抗しなかった。
こいつとどうなんだろう?と好奇心が先に立ったからだ。
自分の体がどう反応するのかの好奇心と、こいつならいやじゃないと思ったのだ。
友人は自分の金ボタンも外して、その体を合わせて来た。
ゆっくり胸を合わせたからか、カッターシャツとランニング越しに伝わる友人の体温が、ゑ梨花には気持ち良く感じられた。
「やべえ ほんとやべえ」
ゑ梨花にとっても、友人が言った「ほんと、やばい」は、単なる口調ではなかった。
学生服を着たままで一緒に布団に入ってこんな事になるなんて、こんなにやばくて官能的なことがあるのか、友人の胸もゑ梨花の胸もドキドキしていた。
恥ずかしさと同時に、何も話さないでも今お互いが何を考えてるのかが分かった彼らは、恋人のようにお互いを抱きしめ合っていた。
大きくなった友人のペニスが、ゑ梨花の股間に当たった。
ゑ梨花は足を開いて、誘い込むように友人に自分の足をからめた。
友人が掛け布団を引っ張り、スッポリ二人を包んだ薄手の掛け布団から少し入ってくる光と薄暗さとが、更にゑ梨花達を二人だけの気分にさせた。
お互いの吐息が近い、その世界で友人はグッと股間をゑ梨花の股間に押し付けて来くる。
友人は、ゑ梨花の背中に回していた腕を滑らせ、ゑ梨花の尻を抱え込み、女性に挿入する時のようにその股間を押し付けてきた。
ゑ梨花は友人に回していた腕の力が抜けて、自分のペニスの上で硬くなった友人のペニスの感触に、抱かれている気分になっていた。
友人は切ない息を吐きながら無言で、一生懸命腰を動かしている。
狭い布団の中でその吐息が大きく聞こえ、彼のそのウットリした顔を見ていると、ゑ梨花は自分の乳首が熱くなって来るのが判った。
今度は自分のペニスが大きくなり始めて、これはやばいと思いゑ梨花は眼を閉じたのだが、友人が小さい声でこう囁いたのだ。
「大きく なって来た」
ゑ梨花が恥ずかしさのあまりカッとなり、友人を突き飛ばそうと目を開けた時、友人が真っ直ぐゑ梨花を見つめていて、ゑ梨花は逆にキスしたい衝動に駆られた。
気付けば、彼の鼻先が触れるくらい近く成る程、ゑ梨花のほうから友人に近づいていた。
それでもゑ梨花は、自分を抑えることに必死になっていて、友人に負けないほど息が上がり始めていた。
友人の目は、もうじっとゑ梨花の口元を見ていた。
はぁはぁ言いながら、ゑ梨花の唇をじっと見ていたのだ。
それは口を半開きに喘ぐように興奮した顔で、その唇から見える舌が、ゑ梨花には恐ろしくエロチックに見えた。
友人の身体が少し汗ばみ始めて、はぁはぁと官能的な呼吸になりながらトロンとした目でゑ梨花の唇を見ている。
その緊張感とエロスの中で、ゑ梨花は酸欠状態になっていた。
唇を近づけて来た友人は、ゑ梨花の唇から目を離さず、口を更に開いて、自分の舌を見せた。
ゑ梨花はペニスがギンギンに怒張してきて、もう射精しそうになっていた。
ゑ梨花たちは目を閉じ、お互いに開いた口を重ね、それぞれの上唇と下唇をくっつけた。
友人と息を交換するように、もう喘ぐとしか言えない状態になり、二人して何かがおかしくなったように喘いでいた。
友人は相変わらず腰を動かしているのに、唇をくっつけたまま口を開いていて、それはもうキスと呼べるものではなかった。
こいつのこと、好きだとか付き合いたいとか、ホモ、ゲイみたいなことを一切考えたことは無いけど、こいつがこの後どうなるのか、見てみたい。
こいつに何かされて、自分がどんなエッチな声を出して喜ぶのか、すごく知りたいとゑ梨花は思った。
つまりゑ梨花はこの時、確実に、友人に何かされることを望んでいて、それに喜ぶ自分に確信を持っていて、友人もそれをしてやればきっと喜ぶと、確信していたのだ。
このまますごく、エッチな事がしたい。
でも、どこかで止めようとは思うのだけど、ここまで来て恥ずかしがるのは、いまさらと、、そうゑ梨花が考えて目を開けた時、友人も目を開けていた。
こいつも同じことを考えてるんだ、ゑ梨花はそう思った。
友人が喘いで、腰まで動かしてるのに、それ以上のことをしてこないのは、ゑ梨花と同じ気持ちだったからなのだろう。
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