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第5章 ギガンティック・ウォーズ Over the rainbow
45: 虹の根元
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俺は生まれて初めて、プロテク装着者同士の強姦というものを見た。
しかもそれは、男同士だった。
普通の男性用プロテクは股間ガードが付いている。
妙な話だが、臀部には衝撃吸収パッドは付いていても「ガード」はない。
この時見た襲撃者の方は、被害者のプロテク機能をあらかた停止させた上で、その臀部を覆うパッドをひんむいていた。
その上で、襲撃者は自分の股間ガードを解除し、むき出しの自分のもので、相手を背後から犯していたのだ。
もちろん、俺は被害者を救出してやった。
二人は逃げる去るように、その場を去った。
まるで、それが合意の上の行為だったように。
なにか後味が悪かった。
夜の公園では、色々な事が起こるものだ、、。
・・・・・・・・・
思い切り派手な音を立てながら、黒い艶消しのメタリックカラーボディのプロテクが、ハーベスト社のカウ25型に、ボディブロウを叩き込んでいた。
その黒い脚と腕に黄色の帯模様が塗装してある。
全体として、スズメバチをイメージして作ってあるのだろう。
一方、被害にあっているプロテク装着者のプロテクは、その名の通り「牛」のイメージだ。
「もう止めろよ。あんたの勝ちだ。それに、それ以上やると、その人死ぬぜ。それともあんた蟻なのか?」
姉の形見であるヘルメットから流れ出る声は、一端、音声出力というフィルターを通過するから、とても自分の声とは思えない。
黒いプロテクは、あっさり獲物を手放すとこちらに向き直った。
黒いヘルメットには、視覚窓が大きく取ってあり、その顔はまるで蜂の頭みたいに見えた。
「心配すんな。こいつは、あんたを誘き寄せる為の餌だからな。」
カウ25は尻餅をつきながら後ずさっていく、量産型にしてはタフだ。
これが終わって、もし元の生活に戻れたなら、次の量産型プロテクは、あれにしようと俺は頭の片隅で考えていた。
、、カウ25は安くて、目立たなくて、しかもタフだ。
「餌?意味が判らないな、どういう積もりだ?」
「勝負してぇ。あんたに勝ちゃ、俺がヒーローだ。」
言いぐさからして、病気の「蟻」じゃない。
せいぜいが、ひょんな弾みで、カスタムメイドのプロテクを手に入れた街のごろつきだろう。
「俺の代わりに、ここの池の見張り番をしてくれるのか?、、気をつけてろよ、ここの夜は冷えるぜ。」
「うっせーっ!」
プロテクの黒い足が、こちらに直接伸びて来たかと思った瞬間、それが背中に入れ替わり、今度はその踵が俺の後頭部を撃ってくる。
1度目は、フェイントだった。
嫌になる程、初歩的な戦術だ。
俺と奴の位置は、入れ替わっている。
勿論、相手の打撃など俺に届く筈がない。
「やめとけよ。別にこっちは、やりたくて、お山の大将してる訳じゃない。」
憫笑した俺の表情を相手が見ていれば、相手はその時点で、切れていた筈で、決着はもっと早くついたかも知れない。
高度なプロテク同士の戦いは、長くても数分で終わる。
しかし、今は、お互いがヘルメットをつけていて、相手には俺の顔の表情は判らない。
今、相手に見えている俺の顔は「闘いの女神」の顔だ。
「無駄口を、たたくな!」
相手は加速して、こちらへの間合いを詰めてくる。
意識して相手の打突を受ける。
マナングが設定した「直結」は、そのままのダメージを俺に伝えている訳ではないのは、今までの戦いで判っていた。
プロテクが受けた衝撃を、リアルタイムでリサイズして伝えてくるのだ。
従って、今の俺の「受け」は、高校のクラブで軽い練習試合をしている程度の衝撃だった。
正直に言って、その衝撃さえも心地よかった。
俺は相手の隙を狙って、二・三の技をかけてみた。
もちろん本気ではない。
この闘いを楽しみたかっただけだ。
はじめ俺が繰り出した技を、この相手はかろうじて避けてくれたのだが、それが換えって、次に出した俺の技のフェイントになってしまったようだ。
これは意外だった。
俺に投げ技を掛けられた蜂男は、綺麗に飛んで公園のなかの藪にボスンと落ちた。
その時だった。
それが現れたのは。
藪の中から、男が首を振りながら立ち上がった時、蜂がたてる羽音がどこからか響き、夜空に影が走ったかと思うと、この男に襲いかかった。
その襲撃は空から猛禽類の鳥が、小動物に爪をかける感じに似ていただろう。
男の首がいとも簡単にもげた。
その傷口から、信じられないような大量の血しぶきが、垂直にあがった。
その勢いがいつ衰えるのか、俺は見届ける事が出来なかった。
なぜなら男のヘルメットが、俺に投げつけられて来たからだ。
それを投げつけてきたのは、夜空から舞い降りてきた怪物だった。
その怪物はすでに着地し、倒れた男の身体に片足を乗せて、こちらを睨み付けていた。
背中から生えた羽根は、すでに畳まれていたが、その姿はクラッシックな香りのする女性型ロボットだった、、、、。
悪魔のマリア、、奴は、とうとう俺の仕掛けた網に引っ掛かったのだ。
そこから、羽音と共に飛来する者・Beeky、つまり悪魔のマリアと俺との長い戦いが始まった。
俺が、自分のプロテクが隠し持っている最終兵器を全面に押し出す戦法を、取らなかったからだ。
これは復讐戦なのだ。
相手には苦しんで貰わなければならない。
体術のレベルは、互角だった。
そして、何故か、お互いの先の先を読む戦いは、消耗線の様相を呈してきた。
不思議なことに、beekyは俺の技の先を読み、俺は俺でbeekyの先が読めたのだ。
プロテクの性能は、マナングが言った通りこちらが上回る。
だが「直結」同士の戦いでは、勝敗はそれのみでは決まらないのだ、、。
しかもそれは、男同士だった。
普通の男性用プロテクは股間ガードが付いている。
妙な話だが、臀部には衝撃吸収パッドは付いていても「ガード」はない。
この時見た襲撃者の方は、被害者のプロテク機能をあらかた停止させた上で、その臀部を覆うパッドをひんむいていた。
その上で、襲撃者は自分の股間ガードを解除し、むき出しの自分のもので、相手を背後から犯していたのだ。
もちろん、俺は被害者を救出してやった。
二人は逃げる去るように、その場を去った。
まるで、それが合意の上の行為だったように。
なにか後味が悪かった。
夜の公園では、色々な事が起こるものだ、、。
・・・・・・・・・
思い切り派手な音を立てながら、黒い艶消しのメタリックカラーボディのプロテクが、ハーベスト社のカウ25型に、ボディブロウを叩き込んでいた。
その黒い脚と腕に黄色の帯模様が塗装してある。
全体として、スズメバチをイメージして作ってあるのだろう。
一方、被害にあっているプロテク装着者のプロテクは、その名の通り「牛」のイメージだ。
「もう止めろよ。あんたの勝ちだ。それに、それ以上やると、その人死ぬぜ。それともあんた蟻なのか?」
姉の形見であるヘルメットから流れ出る声は、一端、音声出力というフィルターを通過するから、とても自分の声とは思えない。
黒いプロテクは、あっさり獲物を手放すとこちらに向き直った。
黒いヘルメットには、視覚窓が大きく取ってあり、その顔はまるで蜂の頭みたいに見えた。
「心配すんな。こいつは、あんたを誘き寄せる為の餌だからな。」
カウ25は尻餅をつきながら後ずさっていく、量産型にしてはタフだ。
これが終わって、もし元の生活に戻れたなら、次の量産型プロテクは、あれにしようと俺は頭の片隅で考えていた。
、、カウ25は安くて、目立たなくて、しかもタフだ。
「餌?意味が判らないな、どういう積もりだ?」
「勝負してぇ。あんたに勝ちゃ、俺がヒーローだ。」
言いぐさからして、病気の「蟻」じゃない。
せいぜいが、ひょんな弾みで、カスタムメイドのプロテクを手に入れた街のごろつきだろう。
「俺の代わりに、ここの池の見張り番をしてくれるのか?、、気をつけてろよ、ここの夜は冷えるぜ。」
「うっせーっ!」
プロテクの黒い足が、こちらに直接伸びて来たかと思った瞬間、それが背中に入れ替わり、今度はその踵が俺の後頭部を撃ってくる。
1度目は、フェイントだった。
嫌になる程、初歩的な戦術だ。
俺と奴の位置は、入れ替わっている。
勿論、相手の打撃など俺に届く筈がない。
「やめとけよ。別にこっちは、やりたくて、お山の大将してる訳じゃない。」
憫笑した俺の表情を相手が見ていれば、相手はその時点で、切れていた筈で、決着はもっと早くついたかも知れない。
高度なプロテク同士の戦いは、長くても数分で終わる。
しかし、今は、お互いがヘルメットをつけていて、相手には俺の顔の表情は判らない。
今、相手に見えている俺の顔は「闘いの女神」の顔だ。
「無駄口を、たたくな!」
相手は加速して、こちらへの間合いを詰めてくる。
意識して相手の打突を受ける。
マナングが設定した「直結」は、そのままのダメージを俺に伝えている訳ではないのは、今までの戦いで判っていた。
プロテクが受けた衝撃を、リアルタイムでリサイズして伝えてくるのだ。
従って、今の俺の「受け」は、高校のクラブで軽い練習試合をしている程度の衝撃だった。
正直に言って、その衝撃さえも心地よかった。
俺は相手の隙を狙って、二・三の技をかけてみた。
もちろん本気ではない。
この闘いを楽しみたかっただけだ。
はじめ俺が繰り出した技を、この相手はかろうじて避けてくれたのだが、それが換えって、次に出した俺の技のフェイントになってしまったようだ。
これは意外だった。
俺に投げ技を掛けられた蜂男は、綺麗に飛んで公園のなかの藪にボスンと落ちた。
その時だった。
それが現れたのは。
藪の中から、男が首を振りながら立ち上がった時、蜂がたてる羽音がどこからか響き、夜空に影が走ったかと思うと、この男に襲いかかった。
その襲撃は空から猛禽類の鳥が、小動物に爪をかける感じに似ていただろう。
男の首がいとも簡単にもげた。
その傷口から、信じられないような大量の血しぶきが、垂直にあがった。
その勢いがいつ衰えるのか、俺は見届ける事が出来なかった。
なぜなら男のヘルメットが、俺に投げつけられて来たからだ。
それを投げつけてきたのは、夜空から舞い降りてきた怪物だった。
その怪物はすでに着地し、倒れた男の身体に片足を乗せて、こちらを睨み付けていた。
背中から生えた羽根は、すでに畳まれていたが、その姿はクラッシックな香りのする女性型ロボットだった、、、、。
悪魔のマリア、、奴は、とうとう俺の仕掛けた網に引っ掛かったのだ。
そこから、羽音と共に飛来する者・Beeky、つまり悪魔のマリアと俺との長い戦いが始まった。
俺が、自分のプロテクが隠し持っている最終兵器を全面に押し出す戦法を、取らなかったからだ。
これは復讐戦なのだ。
相手には苦しんで貰わなければならない。
体術のレベルは、互角だった。
そして、何故か、お互いの先の先を読む戦いは、消耗線の様相を呈してきた。
不思議なことに、beekyは俺の技の先を読み、俺は俺でbeekyの先が読めたのだ。
プロテクの性能は、マナングが言った通りこちらが上回る。
だが「直結」同士の戦いでは、勝敗はそれのみでは決まらないのだ、、。
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