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第3章 千人隊の闘い
22: 最後の別れ
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湖の畔にカブは置いてあり、一人の男がサイドカーの縁に腰をかけ雷達を持っていた。
男はチュンガライだった。
『どいつもこいつも、獰猛なくせに、センチメンタルな野郎ばっかだ。何が、湖の畔に倉庫があってだ。みなして、そんなに俺を泣かせたいのか、、。』
雷はすこし目頭が熱くなった。
だが泣くつもりはまったくない。
それをするには、余りにも大勢の人間が死にすぎていた。
「よお、チュンガライさん。一体どうしたんだ?あんたイェーガン爺さんの従者になったんじゃないのか?」
「チャパチャリに、お主への餞別を鉄馬に積み込むように命令された。長の次の次ぎに偉い千人隊長様の命令だよ。俺が逆らえるわけなかろう。」
チュンガライが笑ってみせる。
渋い笑い顔だ。
鳴はいつものように、そんなチュンガライに見入っている。
「ふーん、積み荷は特製チーズとか、干し肉の類だって聞いてるが。」
「ああこれだ。」
チュンガライが自分の座っているサイドカーのボディをパンパンと叩き、そのあと座席ホールから革製の衣服を取り出して見せた。
「それとこれだ。着てみろよ。お主、気がついているか、どうか知らないが、その鉄の鎧な、すっぱだか見たいに見えてるんだぜ。」
チュンガライが衣服を投げて寄越す。
「あんたらに言われたくないな。年がら年中、上半身裸のくせに。」
そういいながらも雷は、革の上着とおぼしきものを肩にかけ、これも革製のズボンを先に履いた。
履き心地が良かった。
それに腰回りに多少ゆとりがあって、これなら一々ズボンを脱がなくても、プロテクコルセットを、このゆとりに差し込めば、下半身のプロテク装着が出来そうに思えた。
なめし革は丈夫で、プロテクの急激な伸展にも充分耐えうるだろう。
「俺達の上半身は、筋肉で覆われている。筋肉が服みたいなもんだ。だがお主の筋肉は薄い。まるで少年か少女並だよ。それに俺達だって、冬になれば上着を着る。その上着は、その為のものだ。筋肉のないお主には、その季節は関係ないしな。」
「へっ、あの草原に冬が来るのか、始めて知ったぜ。でもこれ悪くないな。シルエットがいい。さすがにあの色男のお古だけある。」
雷は革製の上着を羽織り終えた。
前の合わせを開けているから、胸元はプロテクと、首に掛けた精霊石のネックレスと、ファイヤービーンズを収めた革袋がみえる。
「お古というか、それは祭礼用にも使われるものだ。だから少し装飾的だな。そして多分、チャパチャリは、その袖に、まだ腕を通してないだろう。」
しかも自分の為に、プロテク装着時の事まで考えて仕立て直してくれた。
そう考えると、雷は感謝の気持ちで一杯になった。
「どいつもこいつもホントに、善意の押し売りだな。でも有り難く受け取っておくよ。それがアンタらの素の姿だってことは判ってるつもりだ。でなんだ?あんたが俺に押しつけたいのは?俺の涙腺は半分、壊れかけてる。早く、言ってくれ。もう持ちそうにない。」
「じゃ言おう。ナパチャリの事だ。たしかここで、私はお主にナパチャリの背中の傷について話をしたな」
「、、、ああ。」
「あの時は全部話してなかった。いや話す必要もないと思ってた。今、その話の続きをしようと思う。だから、ここに座ってくれ。」
チュンガライは自分が腰掛けているサイドカーのフロントの隣を叩いた。
「ああ。聞くよ。」
雷がフロントに座ると、鳴の姿が消えた。
雷がスイッチを切ったのだ。
今度は鳴に余計な口を挟んで欲しくなかったからだ。
「イェーガン様は、謀反を起こしたナパチャリに罰を与えて、彼を心から許した。、、だがな、ナパチャリ自身は、自分を許しちゃいなかったんだ。ナパチャリも、この部族をなんとかしたいという想いで、反乱を企てたんだが、それが時を経たときに、そうではなかったのではないかと思うようになったんだ。やはりそこに、自分の野心があったのではないかとな。もちろんイェーガン様は、そこまで見越して、ナパチャリを許したんだ。だがそれが返ってナパチャリの重荷になった。だからいつもナパチャリは自分を罰する為のチャンスを求めていた。だがイェーガン様が、自分を許したものを覆すわけには行かない。なら、イェーガン様に使える使命の中で死ねば、その目的が果たせるのではないかとな。この思いについては、ナパチャリのお目付役としてずっと側にいた俺には痛いほど判った。ある時から、ナパチャリの行動原理は、すべてこれになっていたんだ。」
そこでチュンガライは言葉を切って自分の短い顎髭をそっと撫でた。
「そこに、あの竜人との闘いが起こった。実をいうと竜人との闘いはナパチャリは二度目なんだ。だが、その闘い振りは、明らかに前とは違っていた。あくまでも勝利に固執する所は前と一緒だ。、、だが違ったんだよ。イザとなったら、ナパチャリは、その勝利の為に、自分の命を好んで投げ出す積もりになっていたんだ。」
「、、、それがあの時、ナパチャリが俺を助けに来た理由だと言いたいのか?でも俺は、ナパチャリに嫌われていたぞ。」
「ああ確かに、ナパチャリは、お主を嫌っていた。そりが合う、そりが会わないのレベルだからな、それはどうしようない。お主の姿形は、我が部族の少年少女レベルだ。だのにお主は、どういうわけか我々と肩を並べる程に強い、それも気にくわなかったのかも知れん。まあ、とにかくだ。そんなお主が、我々の闘いに自ら参加した。それどころか、獅子奮迅の闘いをし、最後は敵を撃破するための最重要箇所に一人で躍り込んでいったんだ。」
「ちょっと待ってくれ。あれは俺は追い詰められてやったんだ。そんな高尚なことじゃない。」
「そんな事を言ってどうなる?確かにあの時、お主はナパチャリにとって、自軍の為に一人で斬り込みを引き受けた兵士に見えていた筈だ。それが全てだ。そんな兵士を、千人隊長であるナパチャリが見殺しにするか?するわけがないだろう?ましてナパチャリは、自分の死に場所を求めていたんだよ。」
「、、、、。ナパチャリが、自分の死に場所の為に俺を利用した、、、そう考えていいのか?」
「そうだ。そして、その事実をお主に伝えられるのは、俺しかいない。だから、俺は今、お主にそれを伝えている。だが、勘違いするな。ナパチャリは千人隊長として素晴らしい男だった。その事は、副官としての俺が断言する。」
「ああ、俺も同意するよ。そしてあの時、ナパチャリに救われた命だ、粗末にはしない。あんたに誓うよ。それはナパチャリの名誉を汚すことになるからな。」
「判ってくれれば、それで良い。俺はあの時、色々取り乱していたからな。もしかして俺の真意やナパチャリの姿が、お主に間違って伝わっているのではないかと、夜も眠れなかったんだよ。」
「それであんたは、このお膳立てをするために、チャパチャリに頭を下げたのか、、。」
「いや、頭を下げる積もりでいたが、乗り気になったのはチャパチャリの方だ。俺は、お主の服なんて用意しないよ。そんな事には頭がまわらん。奴は立派な千人隊長になるだろう。、、、じゃこれで、こっちの用事も済んだし、ここで別れだな。」
そういうとチュンガライは腰を上げた。
そして少し歩くと、雷の方を振り返った。
「そうそう、お主、まだ旅を続けるんだろう?」
「ああ。」
「だったら、あの闘いのあった河の反対側をずっと行くといい。我々の世界は、アレがあってから細長いものになっている。そしてあの合戦の場所が、妙な具合にくびれた状態になっているんだ。もちろん河向こうへ、どんどん進めば竜人の世界だ。だが反対に行くと、別の世界に最短で行ける。」
「あんたら、そこに行ったことは、あるのか?」
「ないよ。我々が集団でそこに行けばそれが闘いの火種になる、そこに、人の姿をした生き物がいると仮定しての話だがね。今は、そういう時代だということさ。、、なあ雷、いつか旅が終わったら、俺達の部族がどうなっているか見に来いよ。きっと楽しい事になってるぜ。、、じゃあな。これで本当にお別れだ。」
そういったきり、チュンガライは二度と後を振り返らなかった。
男はチュンガライだった。
『どいつもこいつも、獰猛なくせに、センチメンタルな野郎ばっかだ。何が、湖の畔に倉庫があってだ。みなして、そんなに俺を泣かせたいのか、、。』
雷はすこし目頭が熱くなった。
だが泣くつもりはまったくない。
それをするには、余りにも大勢の人間が死にすぎていた。
「よお、チュンガライさん。一体どうしたんだ?あんたイェーガン爺さんの従者になったんじゃないのか?」
「チャパチャリに、お主への餞別を鉄馬に積み込むように命令された。長の次の次ぎに偉い千人隊長様の命令だよ。俺が逆らえるわけなかろう。」
チュンガライが笑ってみせる。
渋い笑い顔だ。
鳴はいつものように、そんなチュンガライに見入っている。
「ふーん、積み荷は特製チーズとか、干し肉の類だって聞いてるが。」
「ああこれだ。」
チュンガライが自分の座っているサイドカーのボディをパンパンと叩き、そのあと座席ホールから革製の衣服を取り出して見せた。
「それとこれだ。着てみろよ。お主、気がついているか、どうか知らないが、その鉄の鎧な、すっぱだか見たいに見えてるんだぜ。」
チュンガライが衣服を投げて寄越す。
「あんたらに言われたくないな。年がら年中、上半身裸のくせに。」
そういいながらも雷は、革の上着とおぼしきものを肩にかけ、これも革製のズボンを先に履いた。
履き心地が良かった。
それに腰回りに多少ゆとりがあって、これなら一々ズボンを脱がなくても、プロテクコルセットを、このゆとりに差し込めば、下半身のプロテク装着が出来そうに思えた。
なめし革は丈夫で、プロテクの急激な伸展にも充分耐えうるだろう。
「俺達の上半身は、筋肉で覆われている。筋肉が服みたいなもんだ。だがお主の筋肉は薄い。まるで少年か少女並だよ。それに俺達だって、冬になれば上着を着る。その上着は、その為のものだ。筋肉のないお主には、その季節は関係ないしな。」
「へっ、あの草原に冬が来るのか、始めて知ったぜ。でもこれ悪くないな。シルエットがいい。さすがにあの色男のお古だけある。」
雷は革製の上着を羽織り終えた。
前の合わせを開けているから、胸元はプロテクと、首に掛けた精霊石のネックレスと、ファイヤービーンズを収めた革袋がみえる。
「お古というか、それは祭礼用にも使われるものだ。だから少し装飾的だな。そして多分、チャパチャリは、その袖に、まだ腕を通してないだろう。」
しかも自分の為に、プロテク装着時の事まで考えて仕立て直してくれた。
そう考えると、雷は感謝の気持ちで一杯になった。
「どいつもこいつもホントに、善意の押し売りだな。でも有り難く受け取っておくよ。それがアンタらの素の姿だってことは判ってるつもりだ。でなんだ?あんたが俺に押しつけたいのは?俺の涙腺は半分、壊れかけてる。早く、言ってくれ。もう持ちそうにない。」
「じゃ言おう。ナパチャリの事だ。たしかここで、私はお主にナパチャリの背中の傷について話をしたな」
「、、、ああ。」
「あの時は全部話してなかった。いや話す必要もないと思ってた。今、その話の続きをしようと思う。だから、ここに座ってくれ。」
チュンガライは自分が腰掛けているサイドカーのフロントの隣を叩いた。
「ああ。聞くよ。」
雷がフロントに座ると、鳴の姿が消えた。
雷がスイッチを切ったのだ。
今度は鳴に余計な口を挟んで欲しくなかったからだ。
「イェーガン様は、謀反を起こしたナパチャリに罰を与えて、彼を心から許した。、、だがな、ナパチャリ自身は、自分を許しちゃいなかったんだ。ナパチャリも、この部族をなんとかしたいという想いで、反乱を企てたんだが、それが時を経たときに、そうではなかったのではないかと思うようになったんだ。やはりそこに、自分の野心があったのではないかとな。もちろんイェーガン様は、そこまで見越して、ナパチャリを許したんだ。だがそれが返ってナパチャリの重荷になった。だからいつもナパチャリは自分を罰する為のチャンスを求めていた。だがイェーガン様が、自分を許したものを覆すわけには行かない。なら、イェーガン様に使える使命の中で死ねば、その目的が果たせるのではないかとな。この思いについては、ナパチャリのお目付役としてずっと側にいた俺には痛いほど判った。ある時から、ナパチャリの行動原理は、すべてこれになっていたんだ。」
そこでチュンガライは言葉を切って自分の短い顎髭をそっと撫でた。
「そこに、あの竜人との闘いが起こった。実をいうと竜人との闘いはナパチャリは二度目なんだ。だが、その闘い振りは、明らかに前とは違っていた。あくまでも勝利に固執する所は前と一緒だ。、、だが違ったんだよ。イザとなったら、ナパチャリは、その勝利の為に、自分の命を好んで投げ出す積もりになっていたんだ。」
「、、、それがあの時、ナパチャリが俺を助けに来た理由だと言いたいのか?でも俺は、ナパチャリに嫌われていたぞ。」
「ああ確かに、ナパチャリは、お主を嫌っていた。そりが合う、そりが会わないのレベルだからな、それはどうしようない。お主の姿形は、我が部族の少年少女レベルだ。だのにお主は、どういうわけか我々と肩を並べる程に強い、それも気にくわなかったのかも知れん。まあ、とにかくだ。そんなお主が、我々の闘いに自ら参加した。それどころか、獅子奮迅の闘いをし、最後は敵を撃破するための最重要箇所に一人で躍り込んでいったんだ。」
「ちょっと待ってくれ。あれは俺は追い詰められてやったんだ。そんな高尚なことじゃない。」
「そんな事を言ってどうなる?確かにあの時、お主はナパチャリにとって、自軍の為に一人で斬り込みを引き受けた兵士に見えていた筈だ。それが全てだ。そんな兵士を、千人隊長であるナパチャリが見殺しにするか?するわけがないだろう?ましてナパチャリは、自分の死に場所を求めていたんだよ。」
「、、、、。ナパチャリが、自分の死に場所の為に俺を利用した、、、そう考えていいのか?」
「そうだ。そして、その事実をお主に伝えられるのは、俺しかいない。だから、俺は今、お主にそれを伝えている。だが、勘違いするな。ナパチャリは千人隊長として素晴らしい男だった。その事は、副官としての俺が断言する。」
「ああ、俺も同意するよ。そしてあの時、ナパチャリに救われた命だ、粗末にはしない。あんたに誓うよ。それはナパチャリの名誉を汚すことになるからな。」
「判ってくれれば、それで良い。俺はあの時、色々取り乱していたからな。もしかして俺の真意やナパチャリの姿が、お主に間違って伝わっているのではないかと、夜も眠れなかったんだよ。」
「それであんたは、このお膳立てをするために、チャパチャリに頭を下げたのか、、。」
「いや、頭を下げる積もりでいたが、乗り気になったのはチャパチャリの方だ。俺は、お主の服なんて用意しないよ。そんな事には頭がまわらん。奴は立派な千人隊長になるだろう。、、、じゃこれで、こっちの用事も済んだし、ここで別れだな。」
そういうとチュンガライは腰を上げた。
そして少し歩くと、雷の方を振り返った。
「そうそう、お主、まだ旅を続けるんだろう?」
「ああ。」
「だったら、あの闘いのあった河の反対側をずっと行くといい。我々の世界は、アレがあってから細長いものになっている。そしてあの合戦の場所が、妙な具合にくびれた状態になっているんだ。もちろん河向こうへ、どんどん進めば竜人の世界だ。だが反対に行くと、別の世界に最短で行ける。」
「あんたら、そこに行ったことは、あるのか?」
「ないよ。我々が集団でそこに行けばそれが闘いの火種になる、そこに、人の姿をした生き物がいると仮定しての話だがね。今は、そういう時代だということさ。、、なあ雷、いつか旅が終わったら、俺達の部族がどうなっているか見に来いよ。きっと楽しい事になってるぜ。、、じゃあな。これで本当にお別れだ。」
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