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エルフの過去

03話 肉を喰らうエルフ

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 どうして私には精霊魔法が使えないのだろう。他のエルフと私では、何が違うんだ??私は魔法を使う彼らを注意深く観察した。

 よく見ると魔法を使う時、彼らの横には妖精のような小さな生き物が側を飛んでいた。あれが精霊か?目を細めて不思議な生物を注視する。むむっ、魔法を使う時はアレが力を貸しているのか?

 里長の息子が高レベルの精霊と契約したらしい。流石ハイエルフだと、得意げに自慢しているのを偶然聞いてしまった。どうやらその妖精のような生き物は、世界樹の側に棲んでいるらしい。

 漏れ聞いた話では、年頃?になると精霊の方から契約を求めてやって来るんだとか。魔力を対価にして魔法の発動をしてくれるそうだ。でも私のところには、寝ても覚めても一向に精霊がやって来る気配がなかった。

 何故か、避けられている?そんな気さえするのだ。気配を感じ、話しかけようと近づくと逃げられてしまう。

 私はどうしても、魔法が使いたかった。だから自分から売り込みに行ってみる事にしたのだ。

 深夜、世界樹の木の下に虫網を携えて忍び込む。茂みの中でそっと息を潜めると、ひそひそと精霊が楽しそうに囁き合う声が聞こえてきた。

 何を話しているんだろう。私は彼らが何を考えているのか知りたくなった。だってこんなの未知との遭遇じゃないか??ドキドキしながら聞き耳を立てていた。それを聞いてまさか後悔するなんて思わずに。

 私はそこで、衝撃の事実を知ってしまう。

「なぁ、なんか臭くないか??」

「くんくん。本当だ、なんか匂う。なんだろう。」

「なんか、嗅いだ事あるんだよなーこの匂い。」

「あ、そうだ。臭いと言えばさぁ、あの半端者みた?」

「あぁ、あのエルフもどきな。」

「あいつ、めちゃくちゃ臭くないか?」

「あの娘、酷い匂いで近づけないよな。」

「追いかけられて、速攻で逃げたもんな。」

「オレ、あいつが精霊魔法の呪文唱えてポーズキめてる所みたぜ。」

「くくくっ。あれ、かなり笑えたよなー。」

「精霊と契約もしてねーのに使えるわけねーっつーの。」

「プー、クスクス。バカっぽい顔してるもんな。」

「あんな臭い奴誰も契約しないよ。」

「ボク見ちゃったんだ、あの子が肉を食べてるとこ。」

「はぁー!?嘘だろ??」

「嬉々として喰ってた。」

「マジかよ、怖ぇー。」

「あれでも一応、エルフだろ??」

「ありえないな。」

破戒無慙はかいむざんか?」

「しかも、タマネギやニンニクまで食べてた。」

「通りで臭い訳だ。最低なエルフだな。」

 ワクドキしながら覗いていたのに、一瞬でその気持ちは飛散した。あれ、もしかして、私のこと話してる?

 嘘、ワタシ、クサイの??
 背中を嫌な汗が流れ落ちる。

 私は脇の下をクンカ、クンカしてみながら、匂いを確かめる。く、臭くないよね??

 私、毎日水浴びだってしてるし、捨ててあったボロ服だってちゃんと綺麗に洗ってから着てるのに。

 私は、聞き耳を立てた事を後悔した。

 肉のせい??肉なのか??エルフって肉食べちゃダメ??菜食主義者??根菜類もダメ??

 そんなん、知らんがな。
 だって誰も教えてくれへんかったし。

 私はショックを受けた。肉を食べていたせいで、精霊と契約できなかったなんて。どうやら精霊にとって、食肉者は不浄な存在でその匂いは、奇異感を感じてしまうらしい。

 ま、まぁ。言われてたとしても食べたかも知れないけど。だって、お腹すいてたし・・・。

 「は、はははっ。」

 乾いた声が口から漏れ出て、夜の闇に呑まれていく。

 大体、誰とも会話していない現状がダメなのだ。どうにかして、情報不足を解消しないと、このままだと無知のせいで、とんでもない過ちを犯しそうだ。

 今後を生きていく為にも情勢を知らなきゃ。
 そのためにも、絶対精霊を私は手に入れてやる。

 そして私は、対精霊用の罠を開発した。(まぁ、網の中に煮詰めた甘い樹液を仕込んだだけだけなんだが。)彼らを離れたところから注意深く観察し、彼らの好む場所に罠を幾つか仕掛ける。

 捕まえた後は、頼み込んで契約してもらうつもりだった。無理強いするつもりなんて無い。とにかく話をして、私を知ってもらおうとしたのだ。

 大体契約の方法も知らないしね。
 結局は、お願いをするしかない。

 仕掛けた罠の周りに、精霊達が集まっている。

「クヮーッハッハ。これは全部、俺様のもんだ!」

「ずるいぞ!その甘い蜜、僕達も食べたいのにー。」

「黙れ、虫けら共め!貴様らは草でも食ってろ。」

 あの精霊が1番強いのかな??
 めっちゃ口悪いんだけど。まるで悪役みたいだ。
 私はさっそく彼を捕まえる事にした。

 急いで近づいて、罠の入り口を塞ぐ。集まっていた精霊達は、鼻を摘みながら散り散りになって逃げていく。涙を流しながら吐き気を抑え込んでる奴もいて、地味にメンタルが削られていく。

 私は罠の中心部にいた奴を、ひょいっと虫籠の中に放り込んだ。

「グワァ!クセぇ。貴様ぁぁぁ、はかったな!」

「ね、ねぇ。貴方、私と契約してくれないかな?」

「ぐっ、俺様に近づくんじゃねー!鼻がひん曲がりそうだ。」

「そ、そこをなんとか。お願いします。」

「人間如きにこの俺が、くそぉー。離せ!」

「せ、せめて話だけでも聞いてよ!」

「貴様のような奴はいらん。消えろ!」

「はぁ、あんたって精霊の癖に、まるでピカロ悪役ね。」

 私はムカついて、罵るようにコイツをピカロと呼んでしまった。

 その途端、口の悪い精霊が謎の光に包まれる。
 この妖精と何処かで繋がったような気がした。

「はぇ!?」

「貴様ぁー!!この俺様に勝手に名前を付けるなんて反則だぞぉぉぉ!!」

「え、何!?何が起こったの??」

「何、ボケたふりしてやがる!!貴様がムリヤリ俺様を契約で繋いだんだろーがよぉぉ!」

「ご、ごめん??」

「う、嘘だ嘘だウソだぁぁぁー、俺様にこんな変な名前をつけやがってぇぇぇ。お前、ブッ殺してやるぅぅ。」

 そう言いながら、ピカロと言う名前になってしまった私の精霊は、カゴの中でぴょんぴょんと暴れ回った。

「す、すまぬ。」

 どうやら、精霊に名前をつけてあげると契約できる仕組みだったらしい。こうして、私は無理矢理1匹の精霊を仲間にした。




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