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もう一度、あの甘さを知りたい。
①
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「ねぇ...角砂糖何個入れる?」
「んー。5個かな。」
「はい。」
「ありがとう。」
「朔っていつも、5個入れるよね。コップ一杯のコーヒーにそんな入れるとか余っ程甘党なんだね。」
「うん。集中しないとだからね。」
昔からある雰囲気が漂う喫茶店で朔と神奈は2人で参考書を広げて勉強をしていた。
テスト前日。それは、誰でも勉強する日。2人は必死で勉強していた。
「どうしたの朔?」
「ここの問題。わからない。。」
「というか、2時間やってて計算問題2問しか解けてないの?みんな、長くとも3分で出来るよ?」
「やっぱり無理だ。僕には。」
「そんなことない。私が毎日協力してあげてるじゃん。」
「そうだね。本当に神奈には申し訳ないと思ってる。」
「なんで、そこまでしてくれるんだ?」
「それはさ...」
僕たちふたりが集まって勉強するのには理由がある。
それは、テストの点が取れなくて焦っているのではない。
それは、2人が恋人だからでもない。
じゃあ、なんだって?
それは...
いつからか...
僕は、緊張を忘れたからだ。
緊張を忘れた僕に、神奈は寄り添ってくれた。体育の授業で怪我をしたり、テストで悪い点を取ったり、車に轢かれたりと言い出すとキリがないほど負なことが起こっていた。
それらが少ないのは、緊張をしているせいであって、注意をしながら生きるから防がれることである。
そんな、明らかに変な僕を気にしてくれていた。
高三の夏。受験を控えていて、緊張をしなければ勉強もしないだろうし受かるはずもないだろう。
これは、僕が緊張を思い出すように生きるそんな他人からしたらなんともない物語である。
テスト前日の夜。僕は神奈と別れたあと家に真っ直ぐ帰った。時刻はもう21時を回っていた。もちろん、明日がテストという衝動に駆られて勉強しているわけでもなかった。ただぼーっとしてるだけ。時々目を閉じたり、たまにのんびりと小説を読んだりその程度の何も面白みのない方法で暇を潰している。
そんなことをしていると着信がなる。
いや、多い。
何件だ?
ちょっとまって。見ようとして椅子に座っていた腰を上げるまでの数秒でもう電話?
なんでそんなに心配してくれるんだ。神奈は。
俺は電話に出た。
「どうし...」
「ねぇ、勉強してないでしょ?大丈夫なの?」
「してないし。大丈夫では無いと思うけど。心配しなくていいよ。別に僕の人生だし、神奈は困らないよ。」
「あのね。そういう困らないとかの問題じゃないの。見てられないの。人生退屈そうだし、いつも上の空だし。」
「ありがとう。嬉しいよ。」
「いいから、ビデオ通話で手元見せてよ。勉強するよ。」
勉強が始まった。僕は流石に勉強するしかなかった。考えているふうに装っても直ぐにバレて注意をされる。こんな僕を心配しないで神奈自身の勉強時間に当ててくれれば毎回学年2位から1位に上がれると思うのにな。
「どこ見てんのかな。ペン止まってるよ。これで高三最後のテストだよ?最後ぐらい頑張ろうよ。」
「そっか、もう最後か何も成し遂げられなかったな。」
「いやいや。直ぐに受験来るからそこで結果出そうよ。」
「え。受験勉強も一緒にしてくれるの?」
「もちろん。頑張ろうね。」
そして、
最後のテストが終わり
採点が終わり
返却された。
平均点(朔)
23点
40点以下は全て赤点。
最後のテストでも結果は出なかった。
あー。やっぱり僕はダメなんだ。
一体、どこへ向かっているんだろう。
死の前にはどこへ進めばいいのかな。とりあえず歩いてはいるけど、幸せも何も見えない。見えてこない。高校を出たらどうしたい?大学受験することになっているけど、こんな調子で行けるの?大学行かなかったら何がしたいの?
もう...分からないよ。
「ねぇ。何ぼーっとしてるの?ほら電柱に当たるよ。」
テスト返しで学校は早く終わった。
帰りは神奈といつもの道を帰っていた。
夏休みが始まるのにワクワクもなかった。僕には何も無いからだ。
「あ、ちょっとね。」
「夏休み毎日勉強会するからね。」
「え。ちょっと、それは。」
「いつもの喫茶店だから。強制。」
神奈はいつも真っ直ぐな目をしている。短いふわっとした黒髪がサラサラしている。なんでこんな顔立ちがいいのに僕なんかと。
でも、ここまで助けようとしてくれるなんて本当に嬉しい。僕はそれに応えたい。あの日の出来事から脱したい。
「んー。5個かな。」
「はい。」
「ありがとう。」
「朔っていつも、5個入れるよね。コップ一杯のコーヒーにそんな入れるとか余っ程甘党なんだね。」
「うん。集中しないとだからね。」
昔からある雰囲気が漂う喫茶店で朔と神奈は2人で参考書を広げて勉強をしていた。
テスト前日。それは、誰でも勉強する日。2人は必死で勉強していた。
「どうしたの朔?」
「ここの問題。わからない。。」
「というか、2時間やってて計算問題2問しか解けてないの?みんな、長くとも3分で出来るよ?」
「やっぱり無理だ。僕には。」
「そんなことない。私が毎日協力してあげてるじゃん。」
「そうだね。本当に神奈には申し訳ないと思ってる。」
「なんで、そこまでしてくれるんだ?」
「それはさ...」
僕たちふたりが集まって勉強するのには理由がある。
それは、テストの点が取れなくて焦っているのではない。
それは、2人が恋人だからでもない。
じゃあ、なんだって?
それは...
いつからか...
僕は、緊張を忘れたからだ。
緊張を忘れた僕に、神奈は寄り添ってくれた。体育の授業で怪我をしたり、テストで悪い点を取ったり、車に轢かれたりと言い出すとキリがないほど負なことが起こっていた。
それらが少ないのは、緊張をしているせいであって、注意をしながら生きるから防がれることである。
そんな、明らかに変な僕を気にしてくれていた。
高三の夏。受験を控えていて、緊張をしなければ勉強もしないだろうし受かるはずもないだろう。
これは、僕が緊張を思い出すように生きるそんな他人からしたらなんともない物語である。
テスト前日の夜。僕は神奈と別れたあと家に真っ直ぐ帰った。時刻はもう21時を回っていた。もちろん、明日がテストという衝動に駆られて勉強しているわけでもなかった。ただぼーっとしてるだけ。時々目を閉じたり、たまにのんびりと小説を読んだりその程度の何も面白みのない方法で暇を潰している。
そんなことをしていると着信がなる。
いや、多い。
何件だ?
ちょっとまって。見ようとして椅子に座っていた腰を上げるまでの数秒でもう電話?
なんでそんなに心配してくれるんだ。神奈は。
俺は電話に出た。
「どうし...」
「ねぇ、勉強してないでしょ?大丈夫なの?」
「してないし。大丈夫では無いと思うけど。心配しなくていいよ。別に僕の人生だし、神奈は困らないよ。」
「あのね。そういう困らないとかの問題じゃないの。見てられないの。人生退屈そうだし、いつも上の空だし。」
「ありがとう。嬉しいよ。」
「いいから、ビデオ通話で手元見せてよ。勉強するよ。」
勉強が始まった。僕は流石に勉強するしかなかった。考えているふうに装っても直ぐにバレて注意をされる。こんな僕を心配しないで神奈自身の勉強時間に当ててくれれば毎回学年2位から1位に上がれると思うのにな。
「どこ見てんのかな。ペン止まってるよ。これで高三最後のテストだよ?最後ぐらい頑張ろうよ。」
「そっか、もう最後か何も成し遂げられなかったな。」
「いやいや。直ぐに受験来るからそこで結果出そうよ。」
「え。受験勉強も一緒にしてくれるの?」
「もちろん。頑張ろうね。」
そして、
最後のテストが終わり
採点が終わり
返却された。
平均点(朔)
23点
40点以下は全て赤点。
最後のテストでも結果は出なかった。
あー。やっぱり僕はダメなんだ。
一体、どこへ向かっているんだろう。
死の前にはどこへ進めばいいのかな。とりあえず歩いてはいるけど、幸せも何も見えない。見えてこない。高校を出たらどうしたい?大学受験することになっているけど、こんな調子で行けるの?大学行かなかったら何がしたいの?
もう...分からないよ。
「ねぇ。何ぼーっとしてるの?ほら電柱に当たるよ。」
テスト返しで学校は早く終わった。
帰りは神奈といつもの道を帰っていた。
夏休みが始まるのにワクワクもなかった。僕には何も無いからだ。
「あ、ちょっとね。」
「夏休み毎日勉強会するからね。」
「え。ちょっと、それは。」
「いつもの喫茶店だから。強制。」
神奈はいつも真っ直ぐな目をしている。短いふわっとした黒髪がサラサラしている。なんでこんな顔立ちがいいのに僕なんかと。
でも、ここまで助けようとしてくれるなんて本当に嬉しい。僕はそれに応えたい。あの日の出来事から脱したい。
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