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28 アクセサリ 2

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「あの島にあるんすか? そのブラックパンツって?」

 ミルクは海に浮かぶ孤島へ指をさす。
 俺たちは採石場からさらに北へ進み、綺麗な海が見える砂浜まで来ていた。マクドは、ビシッとつっこみをいれる。

「パンツやない! パール! ブラックパールや!」

 改めて考えると、パールは真珠のこと。
 陸の採石場ではなく、海の方にあるのは当然だ。ってか真珠って金属? 生体的な鉱物なのだろう。まぁ、いいや。一方、ミルクとマクドは島にいく方法を話していた。

「マクド、泳いで~」
「無理や! 溺れてゲームオーバーやで」
「じゃあ、どうするんすか? 船はチャプター3をクリアしないと手に入らないんすよ……マクドはメインクエストどこまでいったんすか?」
「メインクエストはチャプター2で諦めたわ……あの姫のワガママには付き合ってられへん」
「たしかにそうっすね……じゃあ、船を手に入れるまでブラジャーパールは、おあずけっすね」
「ブラジャーやない! ブラックパール!」

 つっこみをするマクド。
 俺は冷静に土魔法を詠唱していた。魔法陣の回転を見ながら、意識を島のなかにあるべくブラックパールへと集中させていく。ミルクは俺の顔をのぞいた。

「ツッチー、何やってるんすか?」
「物質を引き寄せる魔法ヴィエラ」
「え?」
「さすが師匠ぉぉぉおお!」

 マクドは飛び跳ねて喜ぶ。
 俺はさらに意識を集中させた。どれだ……ブラックパールは……やっぱりメタリクムも合わせないとダメか。よし、泥の仮面をかぶろう。魔法レベルが14から64になった。これなら連続で魔法ができる。

「メタリクムで金属探知して……そこからヴィエラでブラックパールを引き寄せる」

 きた!
 何かが島から飛び出て、ビューンと海をわたって俺の手もとで浮いている。黒く光る真珠だった。それをマクドにわたす。

「ブラックパールやー! 師匠ぉぉ! ホンマにありがとう!!」
「うん、魔法が上手くいってよかった……ん?」

 いいな~、とミルクが指を咥えていた。
 たしかにマクドだけはズルいよな。どうしよう、何かプレゼントしたい。

「何かないかな……メタリクム!」

 ざざーと耳をなでる寂しげな潮騒。
 じっと浜辺を見渡す。だが何もなく。そこにあるのは、寄せては返す波の音だけ。

「潮の満ち干きか……あ!」

 はっとして空を見上げた。
 月だ。うっすらと地球と同じような月が見える。テラフォーミングで作ったのだろう。よし、みんなに教えよう。

「島にいけるかもしれないぞ!」
「まじっすか?」
「ほんまかいな、師匠?」

 ああ、と俺は答えた。

「潮が引けば島まで歩けるかも、キャンプして待ってみよう」

 アイテムボックスを開く。
 テントを張って、焚き火を起こす。柔らかい豚肉に塩をふって焼いて食べながら、みんなとまったり話した。仮面は必要ないのではずしておく。

「ツッチーはなぜプロテルを始めたんすか?」
「俺はクリア後の追加コンテンツをやるためだ、ミルクはどうなんだ?」
「僕はモツといっしょに遊ぶためっす……でも最近、塾が忙しいみたいで寂しいっす……」

 ぱちぱち、と鳴る焚き火を見つめるミルク。
 たしかに、今日は剣士モツナベはいない。マクドはミルクの肩に触れた。

「まぁ、ワイらがおるやんけ、泣くな泣くな!」
「……マック、良いやつっすね」
「マクドやって!」

 あははは、笑ってしまう。
 ミルクはマクドに質問した。

「なんでプロテルを始めたんすか?」
「ん~嫁探しやな」
「嫁っすか? 彼女じゃなくて?」
「ワイももう30歳になるし、そろそろ結婚せんとな~と思って」
「……」

 ミルクは、すっと真顔になった。
 俺も他人事じゃない。焚き火を囲むと腹を割って話せるような、そんな気がする。

「で?」
「プロテルで結婚相手を見つけたって広告を見たんや! そんでワイもやってみとるんやけど……そんな甘いもんやあらへんな、ヴェリタスさんは師匠にラブやし」
「それな……ニヤッ」

 俺のことを見るミルク。
 な、なんだよ? マクドは、ふっと笑った。

「そんでもプロテルをやってよかったわ! 師匠とミルクに出会えて、ワイは楽しいで!」
「そうっすね……」
 
 うんうん、と俺はうなずいた。
 ふと海を見る。時刻は夕暮れ。潮が引いており、島までの道ができている。

「よし、島にいこう!」

 俺たちは浜辺から干潟を歩く。
 島に到着してみると、小さな森のなかに祠を発見した。そびえる神秘的な樹木の枝が、カサカサと風に揺れている。調べてみると採取できるようだった。ミルクは目を輝かせ、

「これ……ドラゴンツリーっすよ! レアアイテムの素材になるっす!」

 と言って採取した。
 俺とマクドも[ドラゴンツリーの枝葉]を手に入れた。

「よし、潮が満ちる前に帰ろう」

 ミルクとマクドに指示した。
 キャンプに戻り、一息つく。もうすっかり夜だ。大きな月が笑ってるように見える。そのままテントで寝て、朝になったら出発した。

「いこう」

 砂漠を歩く。
 目指すは採石場だ。俺は銃の弾を作りたいので、メタリクムをしつつ歩いた。魔法レベルが14だから簡単ではなかったが、それでも魔法の鍛錬になるので何とか頑張り、炭と硝石を採取できた。

「ん?」

 その道中で不思議な現象が起きた。なんと巨大蛇が遠くに見えたのだ。

「あれ? ボスディザネークがまだ生きてる……なんで?」

 マクドは平然と答えた。

「師匠、今はミルクのパーティにおるやん」
「どういうこと?」
「師匠のやったイベントは反映されんちゅうことや、逆に師匠のパーティにワイらがいけば、これと同じことになるんよ」
「つまりパラレルワールドってことか?」
「そやね」
 
 ふーん、なるほど。
 ということは、ミルクのパーティで巨大蛇を倒してシュリルを助ければ、また褒美の魔導書をもらえるな。でも、それはミルクの魔導書か……。

「ツッチー、またいっしょに巨大蛇を倒しにいくっすよ!」
「ああ、じゃあちょっとワステタの宿屋によっていいか? 温泉にある硫黄をミルクに取ってきて欲しいんだ」
「いいっすよ」

 友達との協力プレー。
 ゲームやっててよかった!  心からそう思いながら、マーキングに触れた。移動場所はワステタの井戸場。その足で宿屋にいく。

「本当だ、まだ付き合ってないや……」

 シュリルとカルドスがいる。
 二人は離れたところで仕事をしていた。カルドスに話しかけても、どこかよそよそしい。

「ツッチー、硫黄、取ってきたっすよ~」
「ありがとう。じゃあ、いこうか」

 宿屋から出た。
 マーキングからフルゴル広場に移動する。その足で工房までいく。俺はミルクに質問した。

「アクセサリには設計図はいらないの?」
「いらないっすよ。ボビーに素材をわたすと作ってくれるっす」
「わかった」

 カウンターから鍛冶屋に話しかける。

「ボビー、アクセサリを作ってくれ」

 アイテムボックスを開く。
 砂龍の皮、ドラゴンツリーの枝葉を選択した。ボビーは煙草の煙を吐いている。

「その素材ならドラゴンブレスレットが製作できるぜ、5000ポイントでどうだ?」

 俺の資産は8000ある。
 足りてよかった。ボビーに製作を依頼した。ミルクは弓の強化、マクドは縦の強化をする。みんな楽しそうだ。俺は銃の弾を製作した。しばらくしてから、ボビーに話しかける。

「できたか?」
「ああ、装備してみろ」

 ドラゴンブレスレットを手に入れた。
 能力を見てみる。

[ ドラゴンブレスレット 効果:ドラゴン属性からの攻撃を半減 魔法や必殺技の魔力消費を半減 ]

 おお! すごいレアアイテムだ!
 だけど、装備できるアクセサリはひとつだけか。敵の属性に合わせて色々持ってると良さそう。ん? ミルクが俺を見てる。

「ツッチー、もうログアウトするっすか?」
「いや、まだだけど」
「じゃあ、巨大蛇を倒しにいこ!」

 ああ、いいよ、と俺は答えた。
 すると後ろからマクドが声をあげる。

「ワイもいくー!」

 あはは、すごく楽しい。
 盾役のマクドがいて、弓で遠距離攻撃できるミルクがいる。俺は土魔法で敵の動きを封じよう。そのような作戦を考えながら歩き出す。工房でボビーが、フッと笑ってるような、そんな気がした。




 

 

 
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