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第三章 平民の実習期間

58 獣なオネエ

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攻略対象の狼男でオネエな「ルジェルガ」、ゲーム「マカリ」公式でも一応触れられているが、あの王立の魔法学園に友好の証として留学してきた彼女――いや彼は女性陣とひたすらに友好関係を保っていた。獣人、という貴族社会においてのネガティブ要素を見事に払拭してみせた。
おしゃれへのアドバイス、恋の相談、キャットファイトのトラブル仲裁。
そんな中で、毛色の変わった娘が目に留まる。
最初はその野生を抱えたような、素朴な少女を、ルジェルガは妹のようにかわいがった。

ここからは私が見たことは、ゲーム「マカリ」の流れとほとんど変わらない。ただ、当事者でないということと、――一部の事情が隠されていただけ。

『満月の夜だけは会えないの』
そう言って、夕暮れに赤く染まったケモミミを風に揺らし、薄影にその身を紛れさせて彼は言う。
友好関係を深めると、オネエ言葉が時折抜けるようになる。
オネエ言葉が抜けて5、6回目、その間に手紙やら故郷の猫じゃらしイベントを経ると、お届け人とごっつんこ、謎の粉末大散布イベントにあたる。
『これから一週間、私はこの部屋から一歩も出ない』
オネエはそう言う。
オネエには多数の女友達がいる。主人公も含め、来る日も来る日もその友人たちが心配でオネエの部屋を訪れてくる。
他の友だちは招き入れるのに、主人公は門前払い。
嫌われたと思った彼女のとった行動は、ドアの前で彼への思いを告げること。
出会い、友人関係を経て、自分は嫌われた、でも貴方のことを嫌いになんかならない。ごめんなさい、ごめんなさい。
それはちょうど満月の夜であった。
女子が男子寮に夜忍び込んで、なおかつ扉の前で大声で泣いて喚いて告白している間、周囲がどうなってたのかというツッコミは不要である。――せーの、だって、『加護』があるからーーー!
兎にも角にも、そうやって必死に言い募ると、いつの間にか扉が空いている。
『私の本当の姿を見ても、貴方はそう言ってくれる?』
そこには、全身を毛で覆われた、屈強な獣人が立っていた。
窓から見える満月の下、獣人は告白する。これが、自分の本当の姿だと。
普段は薬で抑制するが、それを主人公の失態で摂取できなかったのだ。
この姿の時、更に満月の夜は特に自分の感情を抑えられない。
『可愛い妹が、私の心をいっぱいにするの。――ええ、あの日から満月のよる以外も、そうなってしまった』
そう言って悲しそうに微笑むオネエに、主人公は選択を迫られる。
抱きしめるか、見守るか。
どちらにしてもルートクリア。クリアの時のスチルと後日談のスチルは差分があるから、それぞれ4回はプレイして回収しましょう。

要はオネエな獣人がオネエだったわけは、獣人の本能を去勢するための薬の副作用だったという話。
主人公のアリアさまの神対応により、その抑制を超えて愛情が芽生え、薬ですらも会うと役立たずになった。アリアたんのドジっ子イベントで、薬すらもなくなり、欲望を抑えられないことを危惧して引きこもるも、アリアたんの告白タイムに理性と許容が崩壊して扉は開かれる。

私の目の前でも、同じようなことが起き、そしてすっきりした顔のオネエが現れた。
――それだけなら、私だって彼を呼びつけたりはしない。

問題は、オネエの部屋に訪れた女友達に何をしたかだ。
全世界のゲイに謝れこの*****野郎。
――そう、こいつはあろうことか、心配して訪ねてきた女生徒複数人と関係を持ったのだ。
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