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黒書

~黒書~3話

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 来た道を加速魔法で大急ぎで戻ったユナは魔法支援部隊の野営地まで戻った。ここには待機している魔導士連隊の部隊と先に帰らせた少年兵と自分の指揮下の部隊がいるはず……確かにそこに部隊はいた。全員倒れているが、
「ちょっと! どうしたの⁉」
 息のある魔導士を引き起し、事情を聴こうとする。しかし、
「に、にげろ……逃げるんだ!」
 いった次の瞬間彼の体がボコボコと沸騰するかのように乱れ、皮膚を引き裂き異形の怪物が出てくる。周りの倒れている兵からも次々と異形の人型怪物が出てきた。それにユナは心当たりがある。
「下級魔法のデスワームか……でもなんで」
 闇信仰魔法の初級魔導書で中盤に書いてあるデスワームという魔法、死体、または瀕死の供物によって怪物を生成するという初級にしては内容的に重い魔法だ。闇信仰魔法なので、一度自分の信仰している宗教を捨てないと唱えても効果のない魔法なので、犯人は一度己の神を見限っている。ちなみにユナは王国の国教であるイリス教徒である。そのため唱えることができる魔法も、イリス教信仰魔法と汎用魔法だけである。シズとの魔法練習以外でも独学で学んでいるが、そのほとんどは唱えることができても効果を発揮しない魔法だ。と、立体視覚の魔法が遠くの熱源を探知する。方角の空を見ると、都市の空が赤く染まっている。1軒だけの火事ではどうやってもあそこまで赤く染まることはない、恐らくは……

 そんなことを考えていたせいでデスワームで生み出された怪物のひっかき攻撃を受ける。国の支給品の中からスクロールが1枚激しく飛び出して燃えて消え、ユナの正面にバリアを生み出し、ユナ自身を後方に風が押し飛ばす。スクロールには”ウィンドガード”が印されており、所持者が危険な目に合いそうなときに自動で消費されるようになっている。支給品のスクロールは合計で13枚あり、今消費されたので3枚目の消費だ。2枚は道中で使ったため、残りの11枚でやりくりしなくてはならない。とにかく今はこの怪物達を倒して王都に戻らなくては……ユナは覚悟を決めて、戦闘を開始する。
「水の精よ! 汝に力を貸したまえ!」
 詠唱をして魔法を唱える。魔方陣が二つ現れて、水の精霊が2体召喚される。中級魔法の”精霊召喚”、それの水元素バージョンだ。敵のデスワームに似ているが、術者自身の精神力の強さで召喚される精霊の強さも変わる点が違う。デスワームはどんなに強い精神力を持っていても一定の強さの怪物しか生み出すことができない。ユナ含めて3人対、怪物およそ20体。その戦闘の火ぶたは切って落とされた。
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