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序章

3話

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 ドワーフ戦士団と王国軍が先頭に入って早々に、戦場は地獄と化していた。ゴブリン戦士団はほとんど統率力がなく、すぐ逃げ出したが、ドワーフたちは彼らの先進的な技術で作られたかたい鎧を身に着け大小のハンマーと盾を持ち、王国軍兵士の剣や頭を砕きながら戦線を押し上げていった。一方王国兵士はその勢いに押され、若干押し戻されながらもどうにか粘り続けた、ある者たちを待つために。この時先頭に立って戦っていたのは少年兵混成の大隊だ、しかしドワーフたちは背が低くともこちらよりもパワーがある。170センチある長身の青年を120センチにも満たないドワーフが大槌で体を叩き、吹き飛ばすくらいに力差があった。
 混成大隊はほかの師団の盾になりながら徐々にその数を削られていった。特に損耗が多いのは少年兵であることは言うまでもない、ドワーフとの圧倒的な力量さに次々に押しつぶされ、残っていた部隊員の半分を失った。
「どうするんだ! このままじゃ全滅だぞ!!」
 誰かがそう叫ぶ、しかしその叫びはすぐに断末魔に代わる。少年兵達はこの作戦の理由を知らされていないので徐々に統制が崩れてゆく。だが混成師団の正規兵達は、
「持ちこたえろ! 何としても耐えきるんだ!!」
 口々に‘’耐えろ‘’と言ってドワーフを切り倒すというよりは攻撃をいなしながら消耗させるように立ちまわっていた。ユナとレイは少年兵達の統制が崩れている中でも果敢にドワーフ戦士団に立ち向かった。レイの盾もドワーフに散々殴られいくつもへこみや傷ができている。しかし、長身の青年のように叩き飛ばされることはなく、攻撃を確実に跳ね返した。ユナは弾かれて体制の崩れたドワーフに攻撃を仕掛けるが、その厚く堅い鎧に阻まれ有効的な攻撃を出せずにいた。
「ユナ、下がって! これ以上は危険すぎるよ!」
 レイは攻撃をはねのけながら後ろのユナに大声で伝え、自身は守りの姿勢を解かないようにしつつジリジリと下がり始める。ユナもそれを理解してはいるが、周りの状況からそれは難しいと考えて言葉を返す、
「そんなこと言ったって引き返せないじゃない! どうしろってのよ!」
 言い争っても仕方はないがお互いの主張はどちらも正しくあるのでどっちつかずの結論になってしまった、そうこうしているうちに攻撃を受けすぎたレイの盾に亀裂がはいる。‘’まずい!!‘’彼がそう思った時、戦場に王国軍の指揮笛が鳴り響く。次に聞こえてきたのは馬のかけてくる音、現れたのは王国軍魔導騎兵隊の大隊だった。混成大隊とドワーフ師団の横に素早く周り込むと、‘’貫通‘’の属性を付与した魔法撃を直接叩き込んだ。ドワーフ戦士団は防御陣形を組んだが、鎧を貫通されて目に見えて戦力が減少した。
「行ける、行けるぞ!」
 王国軍の兵士全体と少年兵の中に戦意が再び沸き上がる。それとは真逆にドワーフたちは突然の出来事に統制が乱れ、混成大隊の後ろに控えていた正規師団が待ちかねたとばかりに突撃を開始し、戦場の血の匂いはさらに濃くなっていった。

 戦場から少し離れたところ、木の陰に一匹のゴブリン弓兵がいた。胸のあたりを切り裂かれ、瀕死の重傷を負っていた。彼は憎悪のこもった目で戦場を見る、おぼつかない足で立ち上がり死んだ仲間の矢筒から残った矢を1本取り出し、ボロボロの弓を限界まで引き絞った。その限界まで絞られた矢を放った弓の弦は音を立ててちぎれ、同時にゴブリンの命も切れるように失われた。しかしその矢は確実な殺意がこめられ、恐ろしい速度で戦場へ落ちていった。その意識外の一撃は誰の視界にとらえられることなく、

  レイの鎧、装甲と装甲の間……間をすり抜け、首へと突き刺さった。
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