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戦場の花は儚く脆く
~逃走、偽装~
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彼女の端末には、ニュースのように軍部の情報が、飛んでくる。手配をされている端末は補給部隊に引き渡し、部隊から端末を1台もらったため、情報が途切れることなく入ってくる。今日は、北の戦線に爆撃をしたようだ。
爆撃、と言っても、近くにいた師団の反応も、消えてしまったので、恐らく核だろう。既にこの戦争で、10以上の核が、大地に落とされている。国土は更地と化し、住む場所を失った国民は少なくない。
帝国も、公国も、核は抑止力になる。と、公言して生産をしていたが、いざ戦争となると、お互いの領地に、一般人、兵士や兵器、人間でも、機械でも、何があっても関係無い。そう言うかの様に、核を落とした。所詮力を持ってしまった人間同士、どちらも考えている事は、さほど変わらないのだ。
彼女は再び不毛の地を抜け、公国と帝国の国境に位置するいくらか森林の残っている場所を歩いていた。途中で食料を食べ、荷物を整理して出発しようとした時、思わぬ事態が起こった。
「おい! 貴様!!どこの国の兵だ! 言え!」
近くを歩いていた、帝国の警戒兵に、見つかってしまったのである。腕章と部隊章、使用武器から2人組の、帝国第3国境警戒兵であると理解した。
「私は…」
04大隊の生き残り……そう言おうとして、慌てて口を噤んだ。大隊の生き残りは今、世間的に脱走兵扱いなのである。
「その軍服、遠征兵だな? 帝国軍側の所属を答えよ! ……3秒以内に答えなければ撃つ!」
警戒兵は、そう言って、銃をこちらに向ける。数えながら上がる兵士の銃口がまっすぐαを捉えようとした瞬間。突如として彼女は手にしていたサブマシンガンを、腰うちで警戒兵の足元に向けて発砲した。
タカタカタカッ。という軽快な音をたてて、弾を吐き出すサブマシンガン。
対人訓練されている警戒兵の2人は、さすがの反射神経で、左右に転がって、倒木の影に身を潜めた。その隙に、αは木の間を縫うように走り出した。
警戒兵はそれに気づき発砲しながら追いかけたが、咄嗟に撃たれたことや、小柄で元々運動神経の良いαに追いつくことは至難の業で、ついに追いつけずに見失ってしまった。
αは警戒兵を撒いたあと、近くの洞穴に身を潜めた。これで、警戒兵が通報し、さらに自分の立場は無くなってしまうだろう。帝国に捕まれば戦争犯罪者として軍法会議か、それ以上の罪に問われるかもしれない。しかし、この程度で彼女がとまるはずは、なかった。
どんなに世間から避難を浴びようと、自分はどうにでもなる。そう言う自信があるからだ。しかし、警戒兵から長時間走って逃げ続け、さすがの彼女も疲労が溜まってしまっていた。幸いこの洞窟は入り口がとても発見しづらい位置にあり、αが見つけられたのもほぼ偶然であった。これ以上ないほどの好条件であるため、ここで野宿をする事にした。
陽も落ち、彼女は起こした火の近くで横になり、ふと、隊長のピストルをホルスターから抜き出して、それを見る。瞬間、04大隊のみんなの顔が浮かんできた。今、自分が不安で、辛くても、04の仲間が見てくれている。そう思うと不安が、少し薄れた気がした。
疲れと、不安の緩和と、気持ちの緩みから、αは、そのまま夢の世界へと誘われた。今だけは、彼女に安息のひと時を。
明日からまた、彼女はこの現実という、辛く非情な世界を生きて行くのだ。
だから今は、しばしの休息を。
爆撃、と言っても、近くにいた師団の反応も、消えてしまったので、恐らく核だろう。既にこの戦争で、10以上の核が、大地に落とされている。国土は更地と化し、住む場所を失った国民は少なくない。
帝国も、公国も、核は抑止力になる。と、公言して生産をしていたが、いざ戦争となると、お互いの領地に、一般人、兵士や兵器、人間でも、機械でも、何があっても関係無い。そう言うかの様に、核を落とした。所詮力を持ってしまった人間同士、どちらも考えている事は、さほど変わらないのだ。
彼女は再び不毛の地を抜け、公国と帝国の国境に位置するいくらか森林の残っている場所を歩いていた。途中で食料を食べ、荷物を整理して出発しようとした時、思わぬ事態が起こった。
「おい! 貴様!!どこの国の兵だ! 言え!」
近くを歩いていた、帝国の警戒兵に、見つかってしまったのである。腕章と部隊章、使用武器から2人組の、帝国第3国境警戒兵であると理解した。
「私は…」
04大隊の生き残り……そう言おうとして、慌てて口を噤んだ。大隊の生き残りは今、世間的に脱走兵扱いなのである。
「その軍服、遠征兵だな? 帝国軍側の所属を答えよ! ……3秒以内に答えなければ撃つ!」
警戒兵は、そう言って、銃をこちらに向ける。数えながら上がる兵士の銃口がまっすぐαを捉えようとした瞬間。突如として彼女は手にしていたサブマシンガンを、腰うちで警戒兵の足元に向けて発砲した。
タカタカタカッ。という軽快な音をたてて、弾を吐き出すサブマシンガン。
対人訓練されている警戒兵の2人は、さすがの反射神経で、左右に転がって、倒木の影に身を潜めた。その隙に、αは木の間を縫うように走り出した。
警戒兵はそれに気づき発砲しながら追いかけたが、咄嗟に撃たれたことや、小柄で元々運動神経の良いαに追いつくことは至難の業で、ついに追いつけずに見失ってしまった。
αは警戒兵を撒いたあと、近くの洞穴に身を潜めた。これで、警戒兵が通報し、さらに自分の立場は無くなってしまうだろう。帝国に捕まれば戦争犯罪者として軍法会議か、それ以上の罪に問われるかもしれない。しかし、この程度で彼女がとまるはずは、なかった。
どんなに世間から避難を浴びようと、自分はどうにでもなる。そう言う自信があるからだ。しかし、警戒兵から長時間走って逃げ続け、さすがの彼女も疲労が溜まってしまっていた。幸いこの洞窟は入り口がとても発見しづらい位置にあり、αが見つけられたのもほぼ偶然であった。これ以上ないほどの好条件であるため、ここで野宿をする事にした。
陽も落ち、彼女は起こした火の近くで横になり、ふと、隊長のピストルをホルスターから抜き出して、それを見る。瞬間、04大隊のみんなの顔が浮かんできた。今、自分が不安で、辛くても、04の仲間が見てくれている。そう思うと不安が、少し薄れた気がした。
疲れと、不安の緩和と、気持ちの緩みから、αは、そのまま夢の世界へと誘われた。今だけは、彼女に安息のひと時を。
明日からまた、彼女はこの現実という、辛く非情な世界を生きて行くのだ。
だから今は、しばしの休息を。
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