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3.周りの手のひら返し
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翌週仕事に行くと、皆にじろじろ不躾な視線を向けられた。
なんだ。もう知れ渡っているのか。
桐谷のおしゃべりには辟易する。
直接何か言ってくる勇気のある者はいないようだが、ヒソヒソと何か言われているのはわかる。
会議を終え、コーヒーを飲もうと給湯室へ行ったとき、部屋の中から女性社員の話し声が聞こえた。
「で~、神崎主任ってマグロらしいよ」
「え!?まじ!?」
……?!
ま、まぐろって…
さすがの俺でも一瞬立ち止まってしまった。
「確かに美形だけどぉ、色気とか感じる前に怖いっていうの?」
「わかる~。近寄り難いし壁感じるもん」
「光さんも大変だったよねぇ、そんなΩとえっちするの。別れられて清々してるんじゃない?」
女二人で俺の噂をして笑っているようだ。
くだらないし内容が下品すぎる。
これだから下級Ωは…
俺は気にせずそのままズカズカと室内に入った。
「…あっ!神崎主任!?」
「あ…ち、ちがうんです…私達その…」
「ああ、別にいいよ好きに言ってくれて。ただそんな無駄話してる時間あるなら書類のミス無くすようにチェックをお願いね」
「あ…はい!すみませんでした」
片方の女性社員はすぐに頭を下げたが、もう一人はカチンと来たのか口を尖らせながら言い返してきた。
「神崎主任ってぇ、そんな嫌味な言い方しかできないから光さんが愛想つかしたんじゃないんですかぁ?」
「ちょっと、麻友!」
俺は麻友と呼ばれた女性社員を見た。
ブラウンのボブヘアで服装やメイクは派手に装っているが、これといった特徴の無い地味顔の下級Ωだ。
たしか桐谷と浮気してたことがあるはず。
普通なら上司なので苗字で呼ぶべきところをあえて光さんと下の名前で呼んで関係を匂わせてくるところが忌々しい。
「そうだね。ご指摘ありがとう。それじゃあ失礼」
自分の実力以上にキャンキャン吠える系の女か。
相手にする価値もない。
桐谷も浮気するならもっとマシな女を選べば良いものを…
俺はコーヒーを入れ終えたので部屋を出た。
俺がマグロだって?
自分こそノーテク早漏男のくせに…桐谷め。
大体、声が耳障りだから黙れとか、あまりいやらしく動くなと言ったのは向こうの方だ。
俺の不妊が原因で婚約破棄したということだけでなく、有る事無い事周りに吹聴して回っているんだな。
普通、仮にも恋人関係だった相手が不妊とわかってこんなことするか?
どこまでもクズな奴。
慰めをちょっとでも期待した自分が馬鹿だった。
ここまでくると何か俺に恨みでもあるのかと思ってしまう。
俺はそれでも普通に業務をこなそうとしていた。
元婚約者の会社で働くのはいささか肩身が狭いが、重要な案件も抱えているし逃げ出すわけにもいかない。
悪口を言いたい奴は言ってれば良い。仕事に支障がなければそれで良いと思っていた。
しかし、上條麻友は違ったようだ。
あれからというもの、彼女によって根も葉もない噂を流されたり、全員に配られるお土産が俺にだけ配られなかったり、社内での飲み会の連絡が回ってこなかったりするようになった。
別にこんなのは仕事に関係ないからどうでもよかった。
しかし、上條の嫌がらせがだんだんエスカレートし、必要な書類を回してこなかったり、作成を頼んだデータの数字をわざとミスして提出してきたり、上司から俺への伝言を伝えなかったりと仕事にまで影響を及ぼすようになってきた。
「一体なんなんだ…」
彼女を通さずに自分で雑務までこなさなければいけなくなり、事務作業が増えて残業も増える羽目になった。
俺は既に桐谷のマンションからは引っ越して実家に戻っていた。
出戻りで肩身が狭いので、家にいる時間が短くなるのはある意味では好都合だった。
しかし、これもミスやデータの改竄が社内で済んでいるうちは、の話だった。
なんだ。もう知れ渡っているのか。
桐谷のおしゃべりには辟易する。
直接何か言ってくる勇気のある者はいないようだが、ヒソヒソと何か言われているのはわかる。
会議を終え、コーヒーを飲もうと給湯室へ行ったとき、部屋の中から女性社員の話し声が聞こえた。
「で~、神崎主任ってマグロらしいよ」
「え!?まじ!?」
……?!
ま、まぐろって…
さすがの俺でも一瞬立ち止まってしまった。
「確かに美形だけどぉ、色気とか感じる前に怖いっていうの?」
「わかる~。近寄り難いし壁感じるもん」
「光さんも大変だったよねぇ、そんなΩとえっちするの。別れられて清々してるんじゃない?」
女二人で俺の噂をして笑っているようだ。
くだらないし内容が下品すぎる。
これだから下級Ωは…
俺は気にせずそのままズカズカと室内に入った。
「…あっ!神崎主任!?」
「あ…ち、ちがうんです…私達その…」
「ああ、別にいいよ好きに言ってくれて。ただそんな無駄話してる時間あるなら書類のミス無くすようにチェックをお願いね」
「あ…はい!すみませんでした」
片方の女性社員はすぐに頭を下げたが、もう一人はカチンと来たのか口を尖らせながら言い返してきた。
「神崎主任ってぇ、そんな嫌味な言い方しかできないから光さんが愛想つかしたんじゃないんですかぁ?」
「ちょっと、麻友!」
俺は麻友と呼ばれた女性社員を見た。
ブラウンのボブヘアで服装やメイクは派手に装っているが、これといった特徴の無い地味顔の下級Ωだ。
たしか桐谷と浮気してたことがあるはず。
普通なら上司なので苗字で呼ぶべきところをあえて光さんと下の名前で呼んで関係を匂わせてくるところが忌々しい。
「そうだね。ご指摘ありがとう。それじゃあ失礼」
自分の実力以上にキャンキャン吠える系の女か。
相手にする価値もない。
桐谷も浮気するならもっとマシな女を選べば良いものを…
俺はコーヒーを入れ終えたので部屋を出た。
俺がマグロだって?
自分こそノーテク早漏男のくせに…桐谷め。
大体、声が耳障りだから黙れとか、あまりいやらしく動くなと言ったのは向こうの方だ。
俺の不妊が原因で婚約破棄したということだけでなく、有る事無い事周りに吹聴して回っているんだな。
普通、仮にも恋人関係だった相手が不妊とわかってこんなことするか?
どこまでもクズな奴。
慰めをちょっとでも期待した自分が馬鹿だった。
ここまでくると何か俺に恨みでもあるのかと思ってしまう。
俺はそれでも普通に業務をこなそうとしていた。
元婚約者の会社で働くのはいささか肩身が狭いが、重要な案件も抱えているし逃げ出すわけにもいかない。
悪口を言いたい奴は言ってれば良い。仕事に支障がなければそれで良いと思っていた。
しかし、上條麻友は違ったようだ。
あれからというもの、彼女によって根も葉もない噂を流されたり、全員に配られるお土産が俺にだけ配られなかったり、社内での飲み会の連絡が回ってこなかったりするようになった。
別にこんなのは仕事に関係ないからどうでもよかった。
しかし、上條の嫌がらせがだんだんエスカレートし、必要な書類を回してこなかったり、作成を頼んだデータの数字をわざとミスして提出してきたり、上司から俺への伝言を伝えなかったりと仕事にまで影響を及ぼすようになってきた。
「一体なんなんだ…」
彼女を通さずに自分で雑務までこなさなければいけなくなり、事務作業が増えて残業も増える羽目になった。
俺は既に桐谷のマンションからは引っ越して実家に戻っていた。
出戻りで肩身が狭いので、家にいる時間が短くなるのはある意味では好都合だった。
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