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15.優しくしてと妻が言うので

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イデオンは生まれたときから正式な王太子であり、現在は一国の主だ。幼い頃父に怒られたことはあるが、物心ついてからきつく叱られたことなど一度もなかった。しかもいくら貴族でもアルファの王に物言いするオメガなど前代未聞。
花嫁の思わぬ叱責に動揺していると、赤い顔をしたサーシャが更に言う。

「僕、彼女がいたこともないしキスだってさっきはじめてしたんだよ! 初夜でこっちは緊張してるし服はわやだし泣きそうなのに、もうちょっと優しくしてくれてもいいんでないの? そったらおっかない顔で睨むことないしょや!」

(な、なんなんだ……訛りがきつくてよくわからないが怒ってるな。使用人たちにはにこにこしてるくせに――国王である俺にはこんなに怒るのか……)
イデオンはストレートに怒られたことで反射的に謝罪しなければいけない気がした。

「それはすまなかった――つまり俺のキスが嫌だったということか?」
「はい? なんも、そんなこと言ってない。キスしたくないわけでないんだって。その……なんていうか、イデオン様にキスされたら胸がひゃっこいのも治ってぬくくなったし。それにその、気持ちいいし……?」

怒っていたサーシャは今度は急に恥ずかしそうにイデオンを見上げた。

「だから、ちょっと優しくしてほしいだけだって言ってるべさ」

さっきまでイデオンを睨んでいた大きな瞳には困ったような、甘えたような色が浮かんでいた。それを見てイデオンは猛烈にこのオメガの花嫁を喜ばせたいという欲望を感じた。

(こんな目で見つめられては、俺の決意すら揺らいでしまいそうだ――)

さっきまでイライラしていたイデオンだったが、サーシャに怒られたショックで不思議と心が落ち着き牙は元に戻った。しかも「キスされたら気持ちいい」と言われて妙に浮ついた気分になる。イデオンは無意識のうちに尻尾を揺らしていた。

「じゃあ、キスして良いのか?」

サーシャは顔を真赤にしてうんうんと頷いた。
さっきの剣幕はどこへやら、急にしおらしくなった妻に口づけする。強引なやり方ではなく、できるだけ優しく――甘い香りをゆっくりと吸い込みながら。
するとずっとこちらを拒むようにイデオンを掴んでいたサーシャの手から力が抜け、イデオンの首にするりと巻き付けられた。サーシャが自分を受け入れたのを肌で感じてイデオンの胸に今までとは違う熱が込み上げる。

「ふぅ……んっ」

彼の柔らかい唇を甘噛みし、舌で口中をくすぐってやるとサーシャは鈴の音のような声で悦んだ。妻の素直で可愛らしい反応にイデオンの胸にはじんわりと温かさが広がった。それが心地よくてイデオンはサーシャとのキスに夢中になっていく。小さな唇を覆うように自分の唇を押し付け、軽く下唇を吸う。ぷるんとした木苺色の唇は、イデオンの熱心なキスによって更に赤みを増していた。見た目も味も申し分なく扇情的だ。
サーシャはうっとりと快感に浸っている。とろんとした目の彼はすっかり自分に気を許しているようだった。

(さっきまで、なんで俺はあんなに怒っていたんだ――?)

サーシャが自分の思い通りに動かないのが腹立たしかった。言うことを聞かせたくて力ずくで押さえつけようとするほど抵抗され更に苛立ちが募っていった。しかしサーシャの願いを聞き入れた途端彼はイデオンに身を委ね、こちらの見たい表情を見せてくれた。

「サーシャ、体に触れてもいいか?」
「うん……どうぞ」

王族であるイデオンはこれまで抱いた相手にこんなことをいちいち確認したことなどなかった。しかし、妻に対してこうやって許可を得ることがイデオンにとっては屈辱ではなく、むしろ喜びにすら感じられた。

(与えよされば与えられん、か――)

良い匂いのする首筋から胸にかけてキスしながらゆっくりと舌を這わせていく。するとサーシャは熱いため息を吐き、ライラックの香りがイデオンの鼻をくすぐった。

(何を恐れていたんだ? 不安にかられずとも、サーシャは国王である俺の妻。触れられるのはこの俺だけに決まっているではないか)

「はじめてだと言うが、どこをどうするかはわかっているな?」
「えっと……動物の交尾とか出産なら見たことあるんだけども――僕たち男同士で赤ちゃんってどこにどうやってできるのか……」

(このオメガはどれだけ箱入り息子だったんだ?)

「ここだ」とイデオンはサーシャの尻に手を触れた。双丘の間の窄まりに指を添わせると彼の体がびくりと跳ねた。

「ひゃっ」
「落ち着け。ここに俺のものを入れる。オメガの体はこの奥に子宮がある」
「――そうなの?」

イデオンは目を丸くするサーシャに苦笑した。

「怯えなくて良い。望み通り優しくしてやるから安心しろ」
「あ……はい、お手柔らかにお願いします……」

サーシャを驚かせないようにほんの少しだけ後孔の入り口に指を擦り付ける。そこは既にしっとりと濡れており、イデオンの指を誘うようにひくついていた。

「ほら、もう濡れてきているだろう?」
「え? うそ……なんでお尻が……」

(本当に何も知らないんだな――)

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