退廃芸術 大展覧会

淀川 乱歩

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第二章 密林の奥、秘密の花園 

密林の奥、秘密の花園 大地の精霊(SPIRIT OF THE Earth)Jourmngald

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 ……其れは、毎月、満月の日の祭りで、第一の神の使いは蟻(アリ)で、大地の精霊だったのです。
 ……其の蟻は、学名をアマカミアリと云い、人間の大人の背丈程の円錐形の蟻塚(アリヅカ)を、土で作ったのでした。

 ……其の、月に一度の、大地の精霊の祭りの日には、村の未成年の少年達が全員、森の中のアマカミアリの蟻塚(ありづか)の有る場所へ行き、未精通(おぼこ)の全裸の幼い少年達は、両乳首と男性器(おちんちん)の亀頭の三か所に、アマカミアリの大好物の甘い香りのする、蟻酔木(ありび)の実や樹液の軟膏を塗ったのです。
 ……そして、蟻塚の横の赤い土の上に、仰向(あおむ)けに、手足を大の字に広げて寝たのでした。

 ……忽(たちま)ち蟻塚から、芥子粒(ケシつぶ)の様に小さな、透明な蟻達が無数に湧き出し、村の未成年の全裸の少年達の小さな裸身に這い上がったのです。
 ……全裸の子供達は、裸身の全身を小さな蟻達に這い回られる、其の擽(くすぐ)ったい感触に身悶(みもだ)え、笑い声を上げていたのですが、やがて、其の子供の幼い声は、快楽の喘(あえ)ぎに変化したのでした。

 ……村の裸族の少年達の両乳首と、性器の粘膜に無数の微細な蟻達が集まり、繰り返し甘噛みし続け始め、其の擽ったい様な刺激は、強烈な性的快感へと変化して行ったからだったのです。
 ……実は、其の無数の小さな蟻達は、大きな顎(あぎと)で子供達の裸身に咬み付いては、腹部の先端の目には見え無い程に小さな針で刺して、毒液を注入し続けていたのですが、其の蟻の毒は、人間には強力な催淫剤だったのでした。

 ……地面の土の上に、仰向けに全裸で寝た勃起(ぼっき)した男の子は、無数の蟻達に性的快感で責(せ)め苛(さいな)まれ続けて、ふーん、ふーんと可愛(あい)らしく喘(あえ)ぎ続けては、幼い性的絶頂(オーガズム)を日が暮れて、蟻達が全て蟻塚の中へ戻るまで、繰り返し続けていたのです。
 ……そして、そんな光景を、村人達全員が、少し離れた樹の影から、見守り続けていたのでした。


 ……また、毎月、新月の日には、第二の神の使いの蚊(カ)、つまり風の精霊の祭りが開催されたのです。
 ……其れは、学名をヌマインカと云う小さな蚊で、やはり未成熟な村の男児達が全裸で、村の近くの小さな沼へ行き、草の上に仰向(あおむ)け寝ると、快感への期待に赤面した顔で、Mの字に沼に両足を大きく開いたのでした。

 ……そして、紐で腰に結び付けた、小さな壺の中に指を入れて、村の蟲寄せの秘薬を両乳首と、亀頭の粘膜へ、自らの指で塗り付けたのです。
 ……やがて、フーンと沼が鳴き、灰色の煙が全裸の少年達の上に、ゆっくりと伸びて来たのでした。

 ……其れは、無数の微細な羽虫達で、全裸の子供達の秘薬が塗られた部分に集まり、血を吸っては、其の猛烈な搔痒(むずがゆ)さで一日中、責(せ)め苛(さいな)み続けだのです。
 ……実は、そんな小さな蚊達の唾液には、催淫性で即効性の麻痺毒の成分が含まれていて、全裸の少年達は身動き出来ずに、為(な)す術(すべ)も無く無数の蚊達に、刺され続けていたのでした。


 ……そして、毎月二回、満月と新月の間の日には、第三の神の使いの水の精霊の祭りが開かれたのです。
 ……水の精霊は、村の近くの湿地帯にいて、未成熟な村の男の子達は、手にした石や木の枝を枕にして、柔らかな泥の上に仰向けに、大の字に寝たのでした。

 ……そして、腰紐の小壺の中の、蟲避けの秘薬を自分の顔と両耳の穴へ、塗り付けたのです。
 ……其の湿地帯は、村人達が黒腐沼と呼ぶ、森の高い樹々の根元の地面が全て、一面に柔らかな黒い泥の土地で、全裸の子供達の足の裏は、温かな泥の中へ、にゅぬるりと少し沈み、小さな足の跡が其の湿地帯の奥へと、点々と、一列に続いて行ったのでした。

 ……そして、そんな黒い泥は、子供達が沼の中心へ進むと、次第にねばねばとした、生き物の粘液の様に変化して行ったのです。
 ……やがて、そんな全裸の少年達の前に、人間の大人の背丈位の、大小の石を積んで作られた円錐が、姿を現したのでした。

 ……其れは、昔の村の大人達が、子供達の為に積み上げた、沼の中心を意味する石の小山だったのです。
 ……其処(そこ)は、高い樹々に囲まれた昼間でも薄暗い場所で、灰色の石の小山も、鮮やかな緑色の苔(コケ)に包み込まれて仕舞っていたのでした。

 ……全裸の子供達の頭上の、高い樹々の枝からは、無味無臭の透明な、生温かな液体が小雨の様に、周囲一面に降ったのですが、其れは、まるで巨大な獣の唾液の様に滴(したた)り続け、黒い泥の上に仰向(あおむ)けに全裸で寝た、少年達の裸身を流れ落ちたのです。
 ……何時(いつ)の間にか周囲は、生温かい白い濃霧(キリ)に覆われ、森の奇妙な静けさ中、無数の透明な液体の滴(しずく)が滴り落ちる、五月雨(さみだれ)の様な音だけが聞こえていたのでした。
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