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第一章【レイシア編】
多勢
しおりを挟むシンは食事を終えた後、リザと共に墓地に向かって歩いていた。
「薬屋はもう閉まっていたからポーションを買い足せなかったのが若干不安だけど……まあ食事で回復したし大丈夫だろう」
シンが一応クエスト前にステータスを確認してみると、そこには殆ど満タン近くまで回復した体力と魔力が表示されていた。
食事だけでも体力や魔力は回復するのだが、ここまでの回復力はきっと暴飲暴食の体質に変化したものによるのだろう。
更に沢山セックスしたことにより、レベルも35にまで上がっていた事が、シンを安心させるプラス要因となっていた。
「新しくスキルも増えたけど……これは絶対ソフィーヤさんを犯しまくったせいだよな……」
シンのステータスのスキル欄には、新たに【チャーム】Lv1の表示が加わっていた。
「淫魔を使って犯しまくったせいか……或いは単純に淫魔と性交を重ねた結果か……」
原因は分からなかったが、人間であるシンが淫魔のスキルを手に入れた事に何とも複雑な気持ちを抱いた。
(で、でもまぁこれで色んな女性を誘惑出来るようになって、あれやこれやと……)
新しく得たスキルに様々な妄想が膨らむシンだったーー
「ーー確か墓地はこの辺りだったな……」
しばらく歩いていると、家が少なく閑散とした山の麓まで辿り着いていた。
明かりのない道を歩いていると、やけに肌寒い感覚を覚える。
動物も寝静まり虫の鳴き声一つせず、『ジャリッジャリッ』というシンの足音だけが物悲しい場所に鳴り響く。
そのおどろおどろしい雰囲気に、シンは『ブルッ』と身を震わせた。
『フンフン♪』
かたや隣に浮かんでいるリザはデート気分なのか、鼻歌を歌いながら上機嫌だ。
そもそも闇に住まう魔族にとっては、アンデッドでなくとも夜の墓地などホームタウンのようなものなのかもしれない。
「あ! ダーリンあれじゃない?」
リザが指差す方を見ると、そこには『立ち入り禁止』と書かれた看板の掛けられた柵があった。
「こ、ここがリビングデッドの出る墓地か……」
シンは意を決して柵へと近付いていく。
墓地に近付くにつれ、奥から聞こえる『オオオオ』という謎の呻き声が大きくなる。
一歩、また一歩と墓地に近付くと、ぼんやりとした墓地の姿が見えてくる。
そして墓地をはっきりと確認出来る距離まで到達した時、その光景にシンは驚愕した。
「ーーな、なんだこれは!?」
そこは無数のリビングデッドが墓地全体を埋め尽くしていた。
体の腐ったゾンビ達が『オオオオオ』と呻き声の大合唱を響かせ、墓地を囲う柵を『ガシャンガシャン』と激しく音を立てながら揺らしている。
その数は100や200どころの話ではない。
「こんなのが街に溢れたら大パニックになるぞ……」
千のゾンビが街を襲う光景を想像し、シンはゾッとする。
(こんなにリビングデッドが増殖するまでギルドや国は放置し続けたのか……)
勿論国やギルドも放置していた訳ではなく、Dランクの魔物の討伐クエストとしては異例のCランク付けで金貨20枚という高額の報酬も用意していた。
だが増えすぎたリビングデッドは最早Cランク冒険者の手には負えず、かといって高ランク冒険者でも殲滅には長時間かかるため、割に合わないと敬遠される。
ギルドも夜にしか活動しないリビングデッドの討伐の為にこれ以上の報酬も掛けられず、墓地を封鎖する事でその場をしのいでいるのが現状だった。
「このまま放置する訳にもいかないし、降魔術師の俺なら疲労せずに戦えるから、俺が何とかしてみよう。
リザ、やれそうか?」
「うーんとりあえずヤってみるねー!」
流石に数が多いため出来るか心配だったが、リザは元気良く柵の向こうへと向かっていった。
「すうぅ~~っ」
リザはリビングデッド達の頭上で停止すると、大きく息を吸い込んだ。
「オオオオオ!?♥️」
すると腐った死体達が妙に嬉しそうな声を上げながらバタバタと倒れていく。
リザがリビングデッドの精を吸い取ったようだ。
倒れたリビングデッド達は魔石を残して消えていった。
「どうやらリビングデッドに触れなくても精を吸い取れるみたいだな。
それにしてもまさに昇天って感じで倒れていくな……」
リビングデッド達が幸悦の表情を浮かべながら消えていく様子に、シンは若干の吐き気を催す。
『どうだリザー? 行けそうかー?』
『うーん。精を吸い取るのは簡単だけど、キリがないよー』
リザは一度に10体程のリビングデッドを倒しており、それだけでも凄いのだが、何せ相手が多すぎる。
このままでは夜明けまでに間に合わず、夜が明ければリビングデッド達は地中に潜り、明日の夜にはまた復活して増殖してしまう。
(うーん……他の淫魔を召喚するか……)
シンは頭数を増やす作戦を考える。
だが召喚する魔族が多ければ多いほど魔力の消費は激しくなる。
いくら魔力自然回復のスキルがあるとは言っても、消費魔力の方が大きければいずれ尽きてしまう。
シンがどうすべきか攻略法を考えあぐねているとーー
『ねーねーダーリン。リザが他の淫魔を呼び寄せてもいーい?』
リザが自ら淫魔を召喚すると提言してきた。
『え、そんな事出来るのか?』
『うん! リザはサキュバスクイーンだもん!』
シンの問いかけに対し、リザが胸を張って応える。
(そうか……リザが呼び寄せた淫魔なら俺の降魔術で召喚する訳じゃないから、ひょっとしたら魔力を消耗せずに済むかもしれない)
リザの提案にシンが一筋の光明を見出だした。
『よし、物は試しだ! リザ、淫魔を沢山呼び寄せてくれ!』
『はーい! 皆リザの所に現れてー!』
シンの命令を受け、リザが何もない所に向かって呼び掛けた。
するとそこに1体、また1体と淫魔が現れる。
「キャハハ! 久々の人間界だ~!」
「粋の良い雄はいるかしらー?」
「何あのアンデッドの大群~気持ち悪~い」
墓地の上空に艶かしい姿をした淫魔が「キャッキャウフフ」と現れる。
気付けば総勢50体程のサキュバスがリザによって呼び寄せられた。
「これだけの淫魔を呼び出せるとは、流石はサキュバスクイーンだな……
っと。一応魔力が減っていないか確認してみよう」
シンは大勢の淫魔に驚きながら、自分のステータスを確認する。
「よし。魔力も減っていないぞ。予想通り俺の降魔術は関係していないみたいだ。
これならあのリビングデッドも殲滅出来るかもしれない!」
シンは淫魔の軍勢に期待がこもる。
「皆ー! あのリビングデッドの魔素を吸い取っちゃってー!」
「「はーいリザ様ー!」」
淫魔達はリザの指示に従いリビングデッド達に向かっていくと、敵の数をどんどん減らしていった。
「「オオオアアア♥️」」
大量のリビングデッド達がうなり声なのかあえぎ声なのかよく分からない声を上げながら次々倒れていく。
「こ、これは見方によっては乱交パーティとも取れなくもないのか……
まさに阿鼻叫喚、いやどちらかというと歓喜の宴だな……
い、いずれにせよこのペースなら真夜中には全部倒せそうだな!」
リビングデッドと淫魔達が繰り広げる光景にシンは微妙な表情を浮かべながらも、想定よりも早く進む掃討作業に心を躍らせたーー
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