上 下
11 / 19
二章

11-冒険者ギルド

しおりを挟む

「旦那ぁ! ここがこの街の冒険者ギルドですぁ!」
「そうか」

 イトは男達に案内され、冒険者ギルドと呼ばれる建物へ訪れた。
 中を見ると、先程街で見かけた武器や防具を装備した人で溢れている。

「冒険者になるにはここで受付を済ませた後、テストを受けて最初のランクが決まるんですがぁ……旦那ならB級は固い―――いや、いきなりA級なんてこともあるかもしれませんぜ」

 最初の態度とは打って変わり、男はあからさまにゴマを擂ってくる。

『なるほど、テストがあるのか……それじゃあ仕事がスムーズに進むように、ステータスやスキルとかいう項目も全部最高値に設定しておくよ』
「分かった」

『ビキビキビキッ』

 オルフが設定を弄ると、イトの体が筋骨隆々に変化し、周囲を異様なオーラが包む。

「ヒッ、ヒィィッ!」
「こっ、こんなバケモンみたいなオーラ、見たことねえよっ!」
「こりゃあA級……いや、その上のミスリル、伝説のオリハルコン級も目じゃねぇっ!」

 男達が畏怖と尊崇の目でイトを見る。周囲の冒険者達も、イトの禍々しいオーラに静まり返った。

「それで、冒険者になるには何処で手続きすればいいんだ?」
「あっあちらですぁ旦那っ!」

 イトが男に指差された方を見るとそこにはカウンターがあり、視線を送られた受付嬢が「ヒッ」と弱い悲鳴を上げた。

「冒険者になりたいんだが」

 イトが受付嬢に話しかけると、

「あっ……は、はいっ! こ、ここちらにお名前をご記入下さいっ!」

 受付嬢は手を震わせながら、イトに申込用紙を渡す。そしてイトが項目を書き終えると―――

「イッイト様はっ、ほほ他の街での冒険者等級はおいくつでしたかっ……?」
「いや、冒険者になるのは初めてだ」

「「えええっ!?」」

 受付嬢の質問に答えると、ギルド中に驚きの声が響いた。

「あ、あんなオーラを放ってる奴がルーキーだとか、ま、マジかよ……」
「どっかの国の傭兵上がりか?」
「だとしてもあんな装備、王国騎士レベルだろ……そんな奴が冒険者になるか?」

 イトが初めて冒険者となることを知り、場は騒然となる。

「で、では最初はテストを受けて頂いた上でイト様の等級を決定いたしますので、こちらにどうぞ」
「分かった」

 受付嬢から案内され、イトが奥の部屋へと消える。

「あんな奴がギルドのテストを受けるだとか、一体どんな等級になるんだ……?」
「わ、分からん……ただ、史上初の快挙が起こることは間違いない」

 イトがどの等級を与えられるかと、ギルド内の冒険者達全員が固唾を飲んでイトの消えた先を見送った―――



「わ、私がき、君の試験官を務める、こここここのギルドマスターだ。
 てててててテステステストトトのななな内容は、わわわわ私と模擬戦をををおこおこ行いいいい、ききき君のじじじじつ、じつ、実力を測るが……」

 ギルドマスターを名乗る屈強な男は、イトを前にして完全に萎縮しきっていた。

『イト、どうやらこのテストの結果次第で、君の等級が決まるみたいだ。
 仕事の遂行にも大きく関わるかもしれないから、本気で取り組んだほうが良さそうだね』

「ああ、全力で向かう」

「ヒッ、ヒイィィッ!」

 オルフの真剣なアドバイスにイトが応じると、ギルドマスターはその言葉にガクガクと足を痙攣させた。

「あ、あの、あの、べっベベベ別に、少しくらいてててて手を抜いてもいいんだぞ!?」
「いや、完璧に仕事を遂行するため、全身全霊をもってテストを受ける」

 ギルドマスターの願いも虚しく、イトはやる気に満ちた目を向ける。すると―――

「―――あ! そ、そうだ! と、とりあえず剣の素振りを見せてくれ!
 まずはそれで君の剣筋を確かめてみよう! うん! そうしよう!」

 ギルドマスターは突如立ち会いから素振りへと、舵を切り替えることで難を逃れた。

「分かった。全力で素振りに取り組む」
「へっ―――」

 イトは剣を構え、力を込める。すると―――

『ゴゴゴゴ……』

 イトの全身から剣の先まで、揺らめくオーラが包み込む。建物がギシギシと音を立てながら軋む。

「いや、ごめっ……! やっぱ素振りも無―――」
「フンッ!」

 ギルドマスターの静止も間に合わず、イトが渾身の力を込めて剣を振り下ろす。

『ズォォオオオーーーッ!』

 すると剣の先から龍、白虎、大蛇、更には獄炎と雹のオーラが猛烈に駆け抜けた。

『ドガァァーーーン!』

 ギルドの壁が物凄い音を立てて崩れ、

『バガァアーーーン!」

 隣家の屋根が跡形もなく消し飛び、

『グギャアオォーーーン!』

 空を飛ぶ龍が消し炭となり、

『ドッガァアーーーン!』

 遥か遠くの空で、まるで終末が到来したかのような大爆発を巻き起こした。

「あ、ああっ……はっはひはふはははっ」

 あまりに恐ろしい一振りに、ギルドマスターは腰を抜かして倒れ込んだ。

「おい、大丈夫か」

 イトが心配そうに声をかける。だがギルドマスターは気絶してしまったようで、答える代わりに口からブクブクと泡を吹いた―――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...