2 / 6
2
しおりを挟む
「樹、ご機嫌だね。良い事でもあった?」
「え、聞く? 聞いちゃう?」
「何だよー。勿体ぶってないで話せ話せ」
「実はFTOですっごい綺麗な人と知り合ってさ」
「へー。どんな人?」
駅から学校までの通学路を歩きながら、同じくオメガの翼と盛り上がる。
オメガだからって肩身が狭い思いをせずに遊べるVRのFTOはオメガからの支持が高いらしい。
「俺と同じソロプレイヤーで、アランって名前の腰くらいまである長いプラチナブロンドの二十歳くらいのお兄さん」
「え、アラン様!? ヤバいな。俺にも紹介して!」
「アラン様? 知り合いじゃないのに知ってるってなんで?」
「FTOのソロプレイヤーで凄く美しくてアランって名前の人と言ったら、あちこちから誘われてるのに、ソロを貫く孤高の人のあの人しか思い浮かばない」
あの人、有名な人だったのか。でも言われると納得してしまう。
「多分その人だと思うけど、俺も知り合ったばっかりだから紹介するのはまた今度な。それにお前、海辺の丘の白い街よりも先に進んでるだろ?」
「よくご存知で。アラン様って海外の人らしいよ。自動通訳発動してた?」
「え、そうなの? 違和感なかったから気が付かなかった。今まで知り合った人にも海外の人いたのかな」
「いたかもねー。俺にもいたかもだし、いるかもだし、これから知り合うかもだし」
「ま、でもゲーム内だけならどこの人でも関係ないけどな」
「確かに。言葉が通じるなら楽しく遊べるからなあ。何にせよ良かったな。新しい出会いがあって」
「うん。仲良く出来たらなって思ってる」
気ままなソロプレイは続けるつもりだけど、誰かと一緒に遊ぶのもまた楽しい。
◇
「極海鳥の卵スープめちゃうまですね。でも高いからあんまり食べられない……」
アランさんと海辺の丘の白い街の高級レストランで食事をしている。
目も舌もこれ以上ないほど至福です……。
「現実にない味をVRで味わえるって不思議な感覚だよね。ヘッドセットの口に含む部分だけでそれが可能なんだからテクノロジーは凄い」
「難しいことはわからないですけどね。恩恵を受けられるのは素直に嬉しいです」
俺は小さな器に入ったスープを残さずスプーンですくった。
「極海鳥の卵を取ってくるクエストもあるらしいよ。報酬も良いし、余ったらレストランに持ち込んで料理してもらう事も可能らしい。極海鳥の巣は断崖絶壁の上にあるらしいけど行ってみる?」
「え、うーん。高所恐怖症なんですよね。どうしよう」
ロッククライミングはハードルが高い。
「じゃあさ、ツーの風魔法で、僕を断崖絶壁の上まで飛ばしてもらうのはどうかな。それならツーが上に行く必要も、絶壁を登る苦行も避けられるし」
「飛ばせるかな……」
「ものは試しだ。食事が終わったら行ってみよう」
「は、はい」
アランさんは行動で示すタイプみたいだ。
〈無事到着。卵も発見。でも下には自力で降りるしかないみたいだね。失念してたよ。卵はインベントリに入れたから心配しないでね。じゃあ今から降ります〉
〈気をつけて!〉
メッセージ機能でもちゃんと翻訳されてるらしく、俺でも読めている。
でもアランさんは本当に外国人らしい。欧州の人らしいけど、詳しいことは教えてくれないので、俺からも聞いていない。
関係が壊れることが怖いので、今のままでいいかなとも思っている。
本音はちょっと寂しいけど、。
俺は崖を見上げて、アランさんが降りてくるのを待つ。
まだアランさんと行動したのは海辺の丘の白い街周辺だけだけど、アランさんはその美しさからどこでも目を引いていた。
百九十近くある長身もサラサラの髪も端正な顔立ちも均整の取れたしなやかなモデルのような身体も、華やかなのに透明感がある雰囲気も、優しい眼差しも、たまに見せる冷たさにも惹かれていた。
近付きたいのに、今以上近付いたらいけないような、神聖さともどかしさがあった。
「俺のことどう思ってるんだろう……」
知りたいけど、知るのは怖い。
アランさんがもし上から落ちて来ても、風によって衝撃を吸収出来るようにと、いつでも魔術が発動出来るように目を凝らして上を見上げる。
アランさんはそんなヘマなんてしないかな。
アランさんも一応魔法が使えるから心配し過ぎるのも失礼な気がするけど、出来るサポートはしたい。
魔術は魔法よりも強力だし。
「無事に降りて来てくれますように」
今日の空も快晴なので、雨で手や足が滑るなんてことも無さそうだし、そこは、安心かな。
「え、聞く? 聞いちゃう?」
「何だよー。勿体ぶってないで話せ話せ」
「実はFTOですっごい綺麗な人と知り合ってさ」
「へー。どんな人?」
駅から学校までの通学路を歩きながら、同じくオメガの翼と盛り上がる。
オメガだからって肩身が狭い思いをせずに遊べるVRのFTOはオメガからの支持が高いらしい。
「俺と同じソロプレイヤーで、アランって名前の腰くらいまである長いプラチナブロンドの二十歳くらいのお兄さん」
「え、アラン様!? ヤバいな。俺にも紹介して!」
「アラン様? 知り合いじゃないのに知ってるってなんで?」
「FTOのソロプレイヤーで凄く美しくてアランって名前の人と言ったら、あちこちから誘われてるのに、ソロを貫く孤高の人のあの人しか思い浮かばない」
あの人、有名な人だったのか。でも言われると納得してしまう。
「多分その人だと思うけど、俺も知り合ったばっかりだから紹介するのはまた今度な。それにお前、海辺の丘の白い街よりも先に進んでるだろ?」
「よくご存知で。アラン様って海外の人らしいよ。自動通訳発動してた?」
「え、そうなの? 違和感なかったから気が付かなかった。今まで知り合った人にも海外の人いたのかな」
「いたかもねー。俺にもいたかもだし、いるかもだし、これから知り合うかもだし」
「ま、でもゲーム内だけならどこの人でも関係ないけどな」
「確かに。言葉が通じるなら楽しく遊べるからなあ。何にせよ良かったな。新しい出会いがあって」
「うん。仲良く出来たらなって思ってる」
気ままなソロプレイは続けるつもりだけど、誰かと一緒に遊ぶのもまた楽しい。
◇
「極海鳥の卵スープめちゃうまですね。でも高いからあんまり食べられない……」
アランさんと海辺の丘の白い街の高級レストランで食事をしている。
目も舌もこれ以上ないほど至福です……。
「現実にない味をVRで味わえるって不思議な感覚だよね。ヘッドセットの口に含む部分だけでそれが可能なんだからテクノロジーは凄い」
「難しいことはわからないですけどね。恩恵を受けられるのは素直に嬉しいです」
俺は小さな器に入ったスープを残さずスプーンですくった。
「極海鳥の卵を取ってくるクエストもあるらしいよ。報酬も良いし、余ったらレストランに持ち込んで料理してもらう事も可能らしい。極海鳥の巣は断崖絶壁の上にあるらしいけど行ってみる?」
「え、うーん。高所恐怖症なんですよね。どうしよう」
ロッククライミングはハードルが高い。
「じゃあさ、ツーの風魔法で、僕を断崖絶壁の上まで飛ばしてもらうのはどうかな。それならツーが上に行く必要も、絶壁を登る苦行も避けられるし」
「飛ばせるかな……」
「ものは試しだ。食事が終わったら行ってみよう」
「は、はい」
アランさんは行動で示すタイプみたいだ。
〈無事到着。卵も発見。でも下には自力で降りるしかないみたいだね。失念してたよ。卵はインベントリに入れたから心配しないでね。じゃあ今から降ります〉
〈気をつけて!〉
メッセージ機能でもちゃんと翻訳されてるらしく、俺でも読めている。
でもアランさんは本当に外国人らしい。欧州の人らしいけど、詳しいことは教えてくれないので、俺からも聞いていない。
関係が壊れることが怖いので、今のままでいいかなとも思っている。
本音はちょっと寂しいけど、。
俺は崖を見上げて、アランさんが降りてくるのを待つ。
まだアランさんと行動したのは海辺の丘の白い街周辺だけだけど、アランさんはその美しさからどこでも目を引いていた。
百九十近くある長身もサラサラの髪も端正な顔立ちも均整の取れたしなやかなモデルのような身体も、華やかなのに透明感がある雰囲気も、優しい眼差しも、たまに見せる冷たさにも惹かれていた。
近付きたいのに、今以上近付いたらいけないような、神聖さともどかしさがあった。
「俺のことどう思ってるんだろう……」
知りたいけど、知るのは怖い。
アランさんがもし上から落ちて来ても、風によって衝撃を吸収出来るようにと、いつでも魔術が発動出来るように目を凝らして上を見上げる。
アランさんはそんなヘマなんてしないかな。
アランさんも一応魔法が使えるから心配し過ぎるのも失礼な気がするけど、出来るサポートはしたい。
魔術は魔法よりも強力だし。
「無事に降りて来てくれますように」
今日の空も快晴なので、雨で手や足が滑るなんてことも無さそうだし、そこは、安心かな。
21
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
VRMMO内で一目惚れした相手は運命でした。
hina
BL
VRMMOゲームを初めて数ヶ月の高校生、空(そら)。実際の顔はわからないけれど、偶然見かけたその人のオーラに惹かれてファンクラブのようなギルドに入り、一緒に遊ぶために順番待ちをする日々。そんな中で何が引っかかったのか、その相手縁(えにし)から、現実で会わないかと誘われる。実際に会いに行ってみると、縁はどうやら運命の番で……!?
人気アイドルと恋愛中です
hina
BL
『愛してもいいですか?』に登場した龍之介の話。
Ωの高校生奈良龍之介(ならりゅうのすけ)は友人の颯に勧められてVRMMOゲーム、フェアリーテイルオンラインを始めた。
初心者ゆえに操作方法が分からず困っていたら、通りがかった美形の男性に助けてもらう。
その男性と仲良くなってリアルで会ってみたら、彼は人気アイドルグループlink.のメンバー、旭(あさひ)で─────
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
獅子王と後宮の白虎
三国華子
BL
#2020男子後宮BL 参加作品
間違えて獅子王のハーレムに入ってしまった白虎のお話です。
オメガバースです。
受けがゴリマッチョから細マッチョに変化します。
ムーンライトノベルズ様にて先行公開しております。
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
甘えた狼
桜子あんこ
BL
オメガバースの世界です。
身長が大きく体格も良いオメガの大神千紘(おおがみ ちひろ)は、いつもひとりぼっち。みんなからは、怖いと恐れられてます。
その彼には裏の顔があり、、
なんと彼は、とても甘えん坊の寂しがり屋。
いつか彼も誰かに愛されることを望んでいます。
そんな日常からある日生徒会に目をつけられます。その彼は、アルファで優等生の大里誠(おおさと まこと)という男です。
またその彼にも裏の顔があり、、
この物語は運命と出会い愛を育むお話です。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる