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「これ、今日の分。確認をお願いします」
「ああ。ありがとう」
夜。帰ってきたディアンに魔法陣の束を渡し、ダイニングテーブルの椅子に座り直した。
ちゃんと書けているか、チェックを受けるのが日課だ。不備があれば作り直しになる。
紙をめくる音だけが響く中、私はディアンを見つめた。端正な相貌は目の保養だ。
魔法塔のある王都で姿絵が売られるくらい、魔術師として有名で有能で、女性に人気らしい。
本人は持て余しているようだけど……。
それなりにモテる人生も大変なんだろう。
なんで人嫌いになったのか気になるけど、聞ける日は来そうにない。
「……よく出来ている。明日もよろしく頼む」
「もう少し一日の仕事量を減らして欲しいな。身体が悲鳴をあげるから」
「もっと増やしたいくらいだが……」
「鬼」
「ルナが優秀だから」
「おだてても無駄だよ?」
冬が近付く季節。ゆっくり湯船に浸かって身体をほぐしたいけど、この家には浴槽がない。シャワーしかないので、魔法で家の中は暖かいけど、心は渇いていた。
週末にはたまに温泉に連れて行ってもらえるけど、お風呂が恋しいのは、この世界に迷い込んでからずっとだった。
「無理にこなしてくれとは言ってない。可能なら今まで通り、渡した分はあげて欲しいけどな」
「頼まれるとイヤとは言えないんだよなあ……」
頑張っちゃう自分が虚しい。
「いつもありがとう」
「そういうの、ズルいですよ……」
だらしなくテーブルに突っ伏してふうと息を吐き出した。
素っ気ないのに、外さない。
この人、誰にでもそうなんだろうか。
「明日の分の見本も見ておいてくれ」
「はいはい」
複雑で難しい魔法陣は、ディアンが見本を用意してくれている。
私が作成した魔法陣をディアンがチェックし終えたら、私は明日の分の見本を確認して、わからないところがあれば、今日のうちに教わって備える。
生活魔法陣なら言われれば一人で作れるようになったけど、魔法塔で専門的な魔法に使われる魔法陣は書き込みが多い上に間違えたら大変なことになるので、神経を使うのだ。
だからこそ、ディアンが確認してるんだけど。それでももしもがあったらいけない。
シャワーを浴びに行ったディアンの後ろ姿を見つつ、私はダイニングテーブルの上に置かれた明日のノルマを見始めた。
「ああ。ありがとう」
夜。帰ってきたディアンに魔法陣の束を渡し、ダイニングテーブルの椅子に座り直した。
ちゃんと書けているか、チェックを受けるのが日課だ。不備があれば作り直しになる。
紙をめくる音だけが響く中、私はディアンを見つめた。端正な相貌は目の保養だ。
魔法塔のある王都で姿絵が売られるくらい、魔術師として有名で有能で、女性に人気らしい。
本人は持て余しているようだけど……。
それなりにモテる人生も大変なんだろう。
なんで人嫌いになったのか気になるけど、聞ける日は来そうにない。
「……よく出来ている。明日もよろしく頼む」
「もう少し一日の仕事量を減らして欲しいな。身体が悲鳴をあげるから」
「もっと増やしたいくらいだが……」
「鬼」
「ルナが優秀だから」
「おだてても無駄だよ?」
冬が近付く季節。ゆっくり湯船に浸かって身体をほぐしたいけど、この家には浴槽がない。シャワーしかないので、魔法で家の中は暖かいけど、心は渇いていた。
週末にはたまに温泉に連れて行ってもらえるけど、お風呂が恋しいのは、この世界に迷い込んでからずっとだった。
「無理にこなしてくれとは言ってない。可能なら今まで通り、渡した分はあげて欲しいけどな」
「頼まれるとイヤとは言えないんだよなあ……」
頑張っちゃう自分が虚しい。
「いつもありがとう」
「そういうの、ズルいですよ……」
だらしなくテーブルに突っ伏してふうと息を吐き出した。
素っ気ないのに、外さない。
この人、誰にでもそうなんだろうか。
「明日の分の見本も見ておいてくれ」
「はいはい」
複雑で難しい魔法陣は、ディアンが見本を用意してくれている。
私が作成した魔法陣をディアンがチェックし終えたら、私は明日の分の見本を確認して、わからないところがあれば、今日のうちに教わって備える。
生活魔法陣なら言われれば一人で作れるようになったけど、魔法塔で専門的な魔法に使われる魔法陣は書き込みが多い上に間違えたら大変なことになるので、神経を使うのだ。
だからこそ、ディアンが確認してるんだけど。それでももしもがあったらいけない。
シャワーを浴びに行ったディアンの後ろ姿を見つつ、私はダイニングテーブルの上に置かれた明日のノルマを見始めた。
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