欲しいのはただ君一人

hina

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タロウは俺と律くんが運命の番だという事を知らない。


リアルでも交流がある事は言っているけれど、第二性は俺も律くんもタロウには明かしていないし、タロウも自分の第二性を俺達に知らせていない。

だから俺が律くんにタロウが絡むのを止めた時も不思議そうにしていたのだろう。


たとえVRゲームの中だとしても、律くんに他の誰かが触れると考えただけで駄目だった。ほとんど本能的に動いていた。
運命の番を目の前にしたアルファは狭量になるとはこういう事だったのかと思った。
それほどまでに俺には余裕がなかった。


「律くん……」
「湊さん、どうしたんですか?」

三人で食事をしてから、暫くフィールドに出て遊んだ後、タロウとは別れて律くんと律くんのホームに二人で戻ってきた。

はじめの頃は殺風景だった部屋も今は家具が揃い、ナチュラルテイストの居心地の良い空間になっている。
白いソファに座った俺は隣に座る律くんのそばに寄って、そっと抱き寄せた。

「フェロモンを感じられないのがな……」
「フェロモンが感じられたら、ゲームをするにも集中出来なさそうです」
「でも今はフェロモンを感じたい……気持ちがざわついて落ち着かないんだ」
「大丈夫ですか?」
「うん。律くん、リアルで会いたいな。週末会いに行っても良い?」
「え、来てくれるんですか!? 僕も会いたいです!」

今まではオリバーのことばかり考えていたけれど、律くんのこともちゃんと知っていこう。
その上で、答えを出そう。
律くんにばかり、俺達の関係を任せるのも酷いしな。

こんな俺に好意を示してくれる律くんに癒されながら、俺は律くんを離して、その後頭を撫でる。

「日曜の昼に会いに行って、月曜の朝に帰ろうと思うんだけど良いかな」
「あ、じゃあ僕の部屋に泊まって下さい」
「有難う、そうさせて貰うよ」

嬉しそうにする律くんが眩しく見えて、俺は思わず息をのんだ。

それから少しの間近距離で話をして、俺達はログアウトした。
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