欲しいのはただ君一人

hina

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「リアム、今日は遅くなる?」
「いや、なるべく早く帰ってくるよ」
「じゃあ、今日は外でご飯食べようよ!今年もララシナ漁が解禁されたし!」
「ああ、そうだな。そうしよう」



──夢から覚めて、ぱちっと目を開く。
今日の夢には音があった。


あの人の名前はリアムなんだ。
僕の言葉にリアムは穏やかに微笑んでいた。
幸せそうな朝のひととき。

二人は一緒に暮らしていたんだ。


でも本当になんで最近こんな夢を見るようになったのか。
夢の中では身体は自由にならないけど、湧き上がる感情は確かに僕の中にあって、息苦しくなってしまう。

あんな終わり方をしていても僕はただ夢を見るだけで、どうしてあげることも出来ない。

リアムと僕と意識を共にした誰かにごめんねと心の中で呟いたあと、僕は起き上がって顔を上げた。






ゲームの中だとしても、剣を持つのはしっくりきた。
懐かしさも感じるような気がして、小さく笑った。

騎士の仕事に誇りを持っていたのだ。
鍛錬を欠かさなかったことを覚えている。


「オリバー……」

時刻はもう深夜。ゲームの中のフィールドで独り、前世の番の名前を口にして、手に持った剣を見つめた。
君の魂は今どこに……。

もし生まれ変わっていたとしたら、もうその人はオリバーではない別の人だということになるだろう。
それでも、記憶さえ持っていてくれれば、また自分を受け入れてくれるだろうという甘い期待に蝕まれていた。

オリバーの生まれ変わりなら、悪い人ではないはずなのだ。
だから、俺もきっとその人を受け入れられる。

俺に前世の記憶があるのも、記憶をもとに足掻くのも、決して無駄じゃない。そう思いたい。


「律くん、ごめん……」

俺はこの執着を捨てられそうにない……。





僕の項に、まだ噛み跡はない。
湊さんと身体を重ねた時も首にはネックガードをしていたし、鍵は母に預かってもらっていた。

湊さんは運命の番で僕に優しくしてくれるし、多分拒まれてはいないと思うけど、湊さんの思ってきた人は僕ではないわけだし、もし湊さんの探してる人が見つかったら、僕はもしかしたら見限られちゃうのかな……?

運命の番とは言え、想い人にはどうしても劣ってしまうんじゃないだろうか……僕に湊さんを引き止められるだけの魅力があるとも思えない。

フェロモンには抗えないとは言え、そばにいなかったら何の効力もないし、フェロモンにしか頼れないのもどうなのか……。


もっと湊さんと仲良くなりたい。
心に残りたい……。

僕は欲深くなってきている。

そう自覚するものの、まだコントロールが僕には難しかった。
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