7 / 15
7
しおりを挟む
◇
「リアム、今日は遅くなる?」
「いや、なるべく早く帰ってくるよ」
「じゃあ、今日は外でご飯食べようよ!今年もララシナ漁が解禁されたし!」
「ああ、そうだな。そうしよう」
──夢から覚めて、ぱちっと目を開く。
今日の夢には音があった。
あの人の名前はリアムなんだ。
僕の言葉にリアムは穏やかに微笑んでいた。
幸せそうな朝のひととき。
二人は一緒に暮らしていたんだ。
でも本当になんで最近こんな夢を見るようになったのか。
夢の中では身体は自由にならないけど、湧き上がる感情は確かに僕の中にあって、息苦しくなってしまう。
あんな終わり方をしていても僕はただ夢を見るだけで、どうしてあげることも出来ない。
リアムと僕と意識を共にした誰かにごめんねと心の中で呟いたあと、僕は起き上がって顔を上げた。
◇
ゲームの中だとしても、剣を持つのはしっくりきた。
懐かしさも感じるような気がして、小さく笑った。
騎士の仕事に誇りを持っていたのだ。
鍛錬を欠かさなかったことを覚えている。
「オリバー……」
時刻はもう深夜。ゲームの中のフィールドで独り、前世の番の名前を口にして、手に持った剣を見つめた。
君の魂は今どこに……。
もし生まれ変わっていたとしたら、もうその人はオリバーではない別の人だということになるだろう。
それでも、記憶さえ持っていてくれれば、また自分を受け入れてくれるだろうという甘い期待に蝕まれていた。
オリバーの生まれ変わりなら、悪い人ではないはずなのだ。
だから、俺もきっとその人を受け入れられる。
俺に前世の記憶があるのも、記憶をもとに足掻くのも、決して無駄じゃない。そう思いたい。
「律くん、ごめん……」
俺はこの執着を捨てられそうにない……。
◇
僕の項に、まだ噛み跡はない。
湊さんと身体を重ねた時も首にはネックガードをしていたし、鍵は母に預かってもらっていた。
湊さんは運命の番で僕に優しくしてくれるし、多分拒まれてはいないと思うけど、湊さんの思ってきた人は僕ではないわけだし、もし湊さんの探してる人が見つかったら、僕はもしかしたら見限られちゃうのかな……?
運命の番とは言え、想い人にはどうしても劣ってしまうんじゃないだろうか……僕に湊さんを引き止められるだけの魅力があるとも思えない。
フェロモンには抗えないとは言え、そばにいなかったら何の効力もないし、フェロモンにしか頼れないのもどうなのか……。
もっと湊さんと仲良くなりたい。
心に残りたい……。
僕は欲深くなってきている。
そう自覚するものの、まだコントロールが僕には難しかった。
「リアム、今日は遅くなる?」
「いや、なるべく早く帰ってくるよ」
「じゃあ、今日は外でご飯食べようよ!今年もララシナ漁が解禁されたし!」
「ああ、そうだな。そうしよう」
──夢から覚めて、ぱちっと目を開く。
今日の夢には音があった。
あの人の名前はリアムなんだ。
僕の言葉にリアムは穏やかに微笑んでいた。
幸せそうな朝のひととき。
二人は一緒に暮らしていたんだ。
でも本当になんで最近こんな夢を見るようになったのか。
夢の中では身体は自由にならないけど、湧き上がる感情は確かに僕の中にあって、息苦しくなってしまう。
あんな終わり方をしていても僕はただ夢を見るだけで、どうしてあげることも出来ない。
リアムと僕と意識を共にした誰かにごめんねと心の中で呟いたあと、僕は起き上がって顔を上げた。
◇
ゲームの中だとしても、剣を持つのはしっくりきた。
懐かしさも感じるような気がして、小さく笑った。
騎士の仕事に誇りを持っていたのだ。
鍛錬を欠かさなかったことを覚えている。
「オリバー……」
時刻はもう深夜。ゲームの中のフィールドで独り、前世の番の名前を口にして、手に持った剣を見つめた。
君の魂は今どこに……。
もし生まれ変わっていたとしたら、もうその人はオリバーではない別の人だということになるだろう。
それでも、記憶さえ持っていてくれれば、また自分を受け入れてくれるだろうという甘い期待に蝕まれていた。
オリバーの生まれ変わりなら、悪い人ではないはずなのだ。
だから、俺もきっとその人を受け入れられる。
俺に前世の記憶があるのも、記憶をもとに足掻くのも、決して無駄じゃない。そう思いたい。
「律くん、ごめん……」
俺はこの執着を捨てられそうにない……。
◇
僕の項に、まだ噛み跡はない。
湊さんと身体を重ねた時も首にはネックガードをしていたし、鍵は母に預かってもらっていた。
湊さんは運命の番で僕に優しくしてくれるし、多分拒まれてはいないと思うけど、湊さんの思ってきた人は僕ではないわけだし、もし湊さんの探してる人が見つかったら、僕はもしかしたら見限られちゃうのかな……?
運命の番とは言え、想い人にはどうしても劣ってしまうんじゃないだろうか……僕に湊さんを引き止められるだけの魅力があるとも思えない。
フェロモンには抗えないとは言え、そばにいなかったら何の効力もないし、フェロモンにしか頼れないのもどうなのか……。
もっと湊さんと仲良くなりたい。
心に残りたい……。
僕は欲深くなってきている。
そう自覚するものの、まだコントロールが僕には難しかった。
37
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
王子様の愛が重たくて頭が痛い。
しろみ
BL
「家族が穏やかに暮らせて、平穏な日常が送れるのなら何でもいい」
前世の記憶が断片的に残ってる遼には“王子様”のような幼馴染がいる。花のような美少年である幼馴染は遼にとって悩みの種だった。幼馴染にべったりされ過ぎて恋人ができても長続きしないのだ。次こそは!と意気込んだ日のことだったーー
距離感がバグってる男の子たちのお話。
発情期アルファ王子にクッキーをどうぞ
小池 月
BL
リーベント国第五王子ロイは庶民出身の第二公妾の母を持つ貧乏王子。リーベント国は農業が盛んで豊かな国。平和だが貴族や王族の権力争いが絶え間ない。ロイと母は、貴族出身の正妃と第一公妾、その王子王女たちに蔑まれて過ごしていた。ロイの唯一の支えは、いつか国を脱出し母と小さな洋菓子店を開き暮らすこと。ある日、ロイが隣国アドレアに友好のため人質となることが決定される。国王の決定には逆らえず母をリーベントに残しロイは出国する。
一方アドレア国では、第一王子ディモンがロイを自分のオメガだと認識したためにロイをアドレアに呼んでいた。現在強国のアドレアは、百年前は貧困の国だった。当時の国王が神に救いを求め、卓越した能力を持つアルファを神から授かることで急激な発展を実現した国。神の力を持つアルファには獣の発情期と呼ばれる一定の期間がある。その間は、自分の番のオメガと過ごすことで癒される。アルファやオメガの存在は国外には出せない秘密事項。ロイに全てを打ち明けられないまま、ディモン(ディー)とロイは運命に惹かれるように恋仲になっていく。
ロイがアドレアに来て二年が過ぎた。ロイは得意の洋菓子でお金稼ぎをしながら、ディーに守られ幸せに過ごしていた。そんな中、リーベントからロイの母危篤の知らせが入る。ロイは急いで帰国するが、すでに母は毒殺されていた。自身も命を狙われアドレアに逃避しようとするが、弓矢で射られ殺されかける。生死をさ迷い記憶喪失になるロイ。アドレア国辺境地集落に拾われ、シロと呼ばれ何とか生きて行く。
ディーの必死の捜索により辺境地でロイが見つかる。生きていたことを喜び、アドレア主城でのロイとの生活を再開するディー。徐々に記憶を取り戻すロイだが、殺されかけた記憶が戻りパニックになる。ディーは慈しむような愛でロイを包み込み、ロイを癒す。
ロイが落ち着いた頃、リーベント国への友好訪問をする二人。ディーとリーベント国王は、王室腐敗を明るみにして大掛かりな粛清をする。これでロイと幸せになれる道が開けたと安堵する中、信頼していた親代わりの執事にロイが刺される。実はロイの母を殺害したのもこの執事だった。裏切りに心を閉ざすロイ。この状態ではアルファの発情期に耐えられないと思い、発情期を一人で過ごす決意をするディー。アルファの発情期にオメガが居なければアルファは狂う。ディーは死を覚悟するが、運命を共にしようと言うロイの言葉を受け入れ、獣の発情期を共にする。狂ったような性交のなかにロイの愛を感じ癒されるディー。これからの人生をロイと過ごせる幸福を噛みしめ、ロイを守るために尽くすことを心に誓う。
ちょろぽよくんはお友達が欲しい
日月ゆの
BL
ふわふわ栗毛色の髪にどんぐりお目々に小さいお鼻と小さいお口。
おまけに性格は皆が心配になるほどぽよぽよしている。
詩音くん。
「えっ?僕とお友達になってくれるのぉ?」
「えへっ!うれしいっ!」
『黒もじゃアフロに瓶底メガネ』と明らかなアンチ系転入生と隣の席になったちょろぽよくんのお友達いっぱいつくりたい高校生活はどうなる?!
「いや……、俺はちょろくねぇよ?ケツの穴なんか掘らせる訳ないだろ。こんなくそガキ共によ!」
表紙はPicrewの「こあくまめーかー😈2nd」で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる