419 / 430
第14章 Sin fin
第418話 新天地8
しおりを挟む
「二人とも、どうだったか?」
エルヴィーノが問いかけたのは、数か国を回ってボノスたちが移住する国を決める事だ。
「直ぐに決めなきゃダメなの? あなた」
「非常に悩ましいな、親父殿」
「定住先を決めるだけで、他の国に行けない訳じゃないぞ」
「そうだけど・・・」
「どの国も素晴らしい国だから母上も迷ってるのだ、親父殿」
放置していた息子からその様に言われて嬉しいエルヴィーノだ。
「まぁ、直ぐに決める必要も無いし、もう一度見て回るか?」
「本当っ!!」
「是非そうして欲しい親父殿よ」
三人は予定期間を倍にして、順路を逆に戻る事にした。
妻たちに言い訳のエマスコを送り、戻る時は親族の手間は取らせない措置をして、夫が手配したのだ。
想いもよらず、親子三人の家族旅行が長期となったので、後日フロルから姉嫁たちに感謝のエマスコが送られる事となったのだが、これが一悶着を呼んでしまった。
手紙を読んだ妻たちは”ある言葉”に激昂したと言う。
それは家族旅行だ。
例によってフロルを除く妻たちが緊急会議を開き、順番に家族旅行を行う事で合意したと、事後報告を受けた夫だった。
確かにそれぞれの家族単位で休暇を過ごしたことは無かったのは事実だ。
エルヴィーノは各国を飛び回り仕事に励んでいると子供たちに伝えていたし、本人もそのつもりだった。
しかしながら妻たちには通用しないのだ。
同等の存在が楽しい思いをしたのなら、自分たちも同じく楽しみたいと夫を無視して強引に予定を決めたのだ。
毎度の事ながら、この程度の事で騒ぎ立てせずに妻たちの意見に合わせて事なきを得るエルヴィーノだった。
バリアンテかサルクロスか。
獣人が多く、比較的魔法を使える者が少ない国か、直系種族でボノスの魔法属性である新興国か。
だが実際は・・・龍に騎乗する。
これが二人のバリアンテを外せない理由だったのだが、あからさまに表に出すと思慮が浅い者と思われたくなかったからだ。
しかし、二人を洞察していたエルヴィーノにはお見通しだった。
視察を兼ねて城下街アルバからルカ平原の農耕地帯を眺めながら、一息ついてたたずむ三人だ。
「良い国だな親父殿」
「・・・あぁ」
そう言われても、実際の所はエルフの国が一番馴染みが無く知らないのだ。
産まれてから旅立つまでは生家とロザリーの屋敷に居たので、国内を散策した事が無いからだ。
「お前たちが龍に乗りたいのは解ってる」
「「・・・」」
「だがな、バリアンテで龍戦隊に入るには色々と規則が有るし、今のお前の体格では無理だろうな」
「・・・」
「セサルは入隊したと聞いたが?」
「人族と獣人では基礎体力が違うからだ。魔法を使わなければお前が5人掛かりでもセサルには勝てないだろうな」
「それほどとは・・・」
「でもあなた・・・私は黒龍王の妻として国の内外に認められていたわ」
「だから騎乗したいと?」
「それは俺も同じだ」
「しょうがない。お前たちが定住先を決めて、何かしらの仕事をすれば龍を貸し出す事を許可しよう」
「貸し出す?」
「そうだ。龍の世話は難しいぞ、馬と一緒にするなよ」
「あぁ、会話出来るのだよな」
「その通りだ。互いに認め合い友として接しなければ騎乗はさせてくれないからな」
「じゃあの場所に居る獣人さんたちは全員が会話できるの?」
「勿論だフロル。それも条件の一つだ」
「しかし、一体どうやって会話するんだ?」
「そこがバリアンテの秘密だ。勿論騎士団関係者しか知らない秘密事項だからな」
するとフロルが腕に絡みついてきた。
「・・・」
「だーめ。教えないよ」
「ケチ」
「だから数日の貸し出しだったら大丈夫だろう」
「何故数日なんだ?」
「お前たち自分たちの国に凱旋して見せびらかしたいのだろ?」
「そ、それは・・・」
「良いじゃない、私は黒龍王の妻よ」
「だからだ。龍の食事や寝床に世話係も居た方が良いかもな」
「あなた・・・それは・・・」
「一度戻って準備も必要だろうな」
「本当に!?」
「ただし、一体だけの貸し出しだ」
「ええぇっ、私とボノスは別々で乗りたいなぁ」
「だーめだ。三人で乗るんだよ」
目の前で母と父が口論しているが、ボノスはその条件で十分だった。
実際問題として、国の者は召喚された巨大な黒龍を見ているのでバリアンテの龍は小さいと思うだろう。
しかし、実際に乗る事が出来るとなれば話は別だ。
怖くて近づけなかった存在に乗れるのだから。
例え一体でも軍事的にも戦略的にも効果が有るだろう。
ボノスは親子三人で空を駆ける妄想をしていた。
「ボノス、聞いて!!」
先程まで口論していた両親だがフロルが笑顔で問いかけて来た。
「今の貴方が成人の年齢になったら専用の龍を一体用意してくれるって!!」
「本当か親父殿!!」
「あぁ・・・」
それはボノスを放置していた罰としてフロルが見返りに要求した事だった。
「だけど母上の龍はどうするのだ?」
「ボノス、騎乗するには魔法が使えないとダメだからだ」
「そうなのか・・・」
「良いのよボノス。私は貴方の後ろに乗るから。でもボノス、貴方専用の龍よ」
「あぁ、ありがとう親父殿、母上」
子供らしい笑顔を見て嬉しかったエルヴィーノだ。
今更だが、若返りの魔法を妻や子供達に一部の者は知っているが、関係者に知らない者が多い。
したがってフロルとボノスは年相応の女性と子供に認識されるようだ。
この事も二人には注意しておいた。
☆
数年後には俺も龍騎士だぜ。
エルヴィーノが問いかけたのは、数か国を回ってボノスたちが移住する国を決める事だ。
「直ぐに決めなきゃダメなの? あなた」
「非常に悩ましいな、親父殿」
「定住先を決めるだけで、他の国に行けない訳じゃないぞ」
「そうだけど・・・」
「どの国も素晴らしい国だから母上も迷ってるのだ、親父殿」
放置していた息子からその様に言われて嬉しいエルヴィーノだ。
「まぁ、直ぐに決める必要も無いし、もう一度見て回るか?」
「本当っ!!」
「是非そうして欲しい親父殿よ」
三人は予定期間を倍にして、順路を逆に戻る事にした。
妻たちに言い訳のエマスコを送り、戻る時は親族の手間は取らせない措置をして、夫が手配したのだ。
想いもよらず、親子三人の家族旅行が長期となったので、後日フロルから姉嫁たちに感謝のエマスコが送られる事となったのだが、これが一悶着を呼んでしまった。
手紙を読んだ妻たちは”ある言葉”に激昂したと言う。
それは家族旅行だ。
例によってフロルを除く妻たちが緊急会議を開き、順番に家族旅行を行う事で合意したと、事後報告を受けた夫だった。
確かにそれぞれの家族単位で休暇を過ごしたことは無かったのは事実だ。
エルヴィーノは各国を飛び回り仕事に励んでいると子供たちに伝えていたし、本人もそのつもりだった。
しかしながら妻たちには通用しないのだ。
同等の存在が楽しい思いをしたのなら、自分たちも同じく楽しみたいと夫を無視して強引に予定を決めたのだ。
毎度の事ながら、この程度の事で騒ぎ立てせずに妻たちの意見に合わせて事なきを得るエルヴィーノだった。
バリアンテかサルクロスか。
獣人が多く、比較的魔法を使える者が少ない国か、直系種族でボノスの魔法属性である新興国か。
だが実際は・・・龍に騎乗する。
これが二人のバリアンテを外せない理由だったのだが、あからさまに表に出すと思慮が浅い者と思われたくなかったからだ。
しかし、二人を洞察していたエルヴィーノにはお見通しだった。
視察を兼ねて城下街アルバからルカ平原の農耕地帯を眺めながら、一息ついてたたずむ三人だ。
「良い国だな親父殿」
「・・・あぁ」
そう言われても、実際の所はエルフの国が一番馴染みが無く知らないのだ。
産まれてから旅立つまでは生家とロザリーの屋敷に居たので、国内を散策した事が無いからだ。
「お前たちが龍に乗りたいのは解ってる」
「「・・・」」
「だがな、バリアンテで龍戦隊に入るには色々と規則が有るし、今のお前の体格では無理だろうな」
「・・・」
「セサルは入隊したと聞いたが?」
「人族と獣人では基礎体力が違うからだ。魔法を使わなければお前が5人掛かりでもセサルには勝てないだろうな」
「それほどとは・・・」
「でもあなた・・・私は黒龍王の妻として国の内外に認められていたわ」
「だから騎乗したいと?」
「それは俺も同じだ」
「しょうがない。お前たちが定住先を決めて、何かしらの仕事をすれば龍を貸し出す事を許可しよう」
「貸し出す?」
「そうだ。龍の世話は難しいぞ、馬と一緒にするなよ」
「あぁ、会話出来るのだよな」
「その通りだ。互いに認め合い友として接しなければ騎乗はさせてくれないからな」
「じゃあの場所に居る獣人さんたちは全員が会話できるの?」
「勿論だフロル。それも条件の一つだ」
「しかし、一体どうやって会話するんだ?」
「そこがバリアンテの秘密だ。勿論騎士団関係者しか知らない秘密事項だからな」
するとフロルが腕に絡みついてきた。
「・・・」
「だーめ。教えないよ」
「ケチ」
「だから数日の貸し出しだったら大丈夫だろう」
「何故数日なんだ?」
「お前たち自分たちの国に凱旋して見せびらかしたいのだろ?」
「そ、それは・・・」
「良いじゃない、私は黒龍王の妻よ」
「だからだ。龍の食事や寝床に世話係も居た方が良いかもな」
「あなた・・・それは・・・」
「一度戻って準備も必要だろうな」
「本当に!?」
「ただし、一体だけの貸し出しだ」
「ええぇっ、私とボノスは別々で乗りたいなぁ」
「だーめだ。三人で乗るんだよ」
目の前で母と父が口論しているが、ボノスはその条件で十分だった。
実際問題として、国の者は召喚された巨大な黒龍を見ているのでバリアンテの龍は小さいと思うだろう。
しかし、実際に乗る事が出来るとなれば話は別だ。
怖くて近づけなかった存在に乗れるのだから。
例え一体でも軍事的にも戦略的にも効果が有るだろう。
ボノスは親子三人で空を駆ける妄想をしていた。
「ボノス、聞いて!!」
先程まで口論していた両親だがフロルが笑顔で問いかけて来た。
「今の貴方が成人の年齢になったら専用の龍を一体用意してくれるって!!」
「本当か親父殿!!」
「あぁ・・・」
それはボノスを放置していた罰としてフロルが見返りに要求した事だった。
「だけど母上の龍はどうするのだ?」
「ボノス、騎乗するには魔法が使えないとダメだからだ」
「そうなのか・・・」
「良いのよボノス。私は貴方の後ろに乗るから。でもボノス、貴方専用の龍よ」
「あぁ、ありがとう親父殿、母上」
子供らしい笑顔を見て嬉しかったエルヴィーノだ。
今更だが、若返りの魔法を妻や子供達に一部の者は知っているが、関係者に知らない者が多い。
したがってフロルとボノスは年相応の女性と子供に認識されるようだ。
この事も二人には注意しておいた。
☆
数年後には俺も龍騎士だぜ。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる