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第14章 Sin fin

第418話 新天地8

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「二人とも、どうだったか?」

エルヴィーノが問いかけたのは、数か国を回ってボノスたちが移住する国を決める事だ。

「直ぐに決めなきゃダメなの? あなた」
「非常に悩ましいな、親父殿」
「定住先を決めるだけで、他の国に行けない訳じゃないぞ」
「そうだけど・・・」
「どの国も素晴らしい国だから母上も迷ってるのだ、親父殿」
放置していた息子からその様に言われて嬉しいエルヴィーノだ。

「まぁ、直ぐに決める必要も無いし、もう一度見て回るか?」
「本当っ!!」
「是非そうして欲しい親父殿よ」


三人は予定期間を倍にして、順路を逆に戻る事にした。
妻たちに言い訳のエマスコを送り、戻る時は親族の手間は取らせない措置をして、夫が手配したのだ。

想いもよらず、親子三人の家族旅行が長期となったので、後日フロルから姉嫁たちに感謝のエマスコが送られる事となったのだが、これが一悶着ひともんちゃくを呼んでしまった。

手紙を読んだ妻たちは”ある言葉”に激昂したと言う。
それは家族旅行だ。

例によってフロルを除く妻たちが緊急会議を開き、順番に家族旅行を行う事で合意したと、事後報告を受けた夫だった。

確かにそれぞれの家族単位で休暇を過ごしたことは無かったのは事実だ。
エルヴィーノは各国を飛び回り仕事に励んでいると子供たちに伝えていたし、本人もそのつもりだった。
しかしながら妻たちには通用しないのだ。
同等の存在が楽しい思いをしたのなら、自分たちも同じく楽しみたいと夫を無視して強引に予定を決めたのだ。
毎度の事ながら、この程度の事で騒ぎ立てせずに妻たちの意見に合わせて事なきを得るエルヴィーノだった。



バリアンテかサルクロスか。
獣人が多く、比較的魔法を使える者が少ない国か、直系種族でボノスの魔法属性である新興国か。
だが実際は・・・龍に騎乗する。
これが二人のバリアンテを外せない理由だったのだが、あからさまに表に出すと思慮が浅い者と思われたくなかったからだ。

しかし、二人を洞察していたエルヴィーノにはお見通しだった。
視察を兼ねて城下街アルバからルカ平原の農耕地帯を眺めながら、一息ついてたたずむ三人だ。
「良い国だな親父殿」
「・・・あぁ」
そう言われても、実際の所はエルフの国が一番馴染みが無く知らないのだ。
産まれてから旅立つまでは生家とロザリーの屋敷に居たので、国内を散策した事が無いからだ。

「お前たちが龍に乗りたいのは解ってる」
「「・・・」」
「だがな、バリアンテで龍戦隊に入るには色々と規則が有るし、今のお前の体格では無理だろうな」
「・・・」
「セサルは入隊したと聞いたが?」
「人族と獣人では基礎体力が違うからだ。魔法を使わなければお前が5人掛かりでもセサルには勝てないだろうな」
「それほどとは・・・」

「でもあなた・・・私は黒龍王の妻として国の内外に認められていたわ」
「だから騎乗したいと?」
「それは俺も同じだ」
「しょうがない。お前たちが定住先を決めて、何かしらの仕事をすれば龍を貸し出す事を許可しよう」
「貸し出す?」
「そうだ。龍の世話は難しいぞ、馬と一緒にするなよ」
「あぁ、会話出来るのだよな」
「その通りだ。互いに認め合い友として接しなければ騎乗はさせてくれないからな」
「じゃあの場所に居る獣人さんたちは全員が会話できるの?」
「勿論だフロル。それも条件の一つだ」
「しかし、一体どうやって会話するんだ?」
「そこがバリアンテの秘密だ。勿論騎士団関係者しか知らない秘密事項だからな」
するとフロルが腕に絡みついてきた。
「・・・」
「だーめ。教えないよ」
「ケチ」

「だから数日の貸し出しだったら大丈夫だろう」
「何故数日なんだ?」
「お前たち自分たちの国に凱旋して見せびらかしたいのだろ?」
「そ、それは・・・」
「良いじゃない、私は黒龍王の妻よ」
「だからだ。龍の食事や寝床に世話係も居た方が良いかもな」
「あなた・・・それは・・・」
「一度戻って準備も必要だろうな」
「本当に!?」
「ただし、一体だけの貸し出しだ」
「ええぇっ、私とボノスは別々で乗りたいなぁ」
「だーめだ。三人で乗るんだよ」

目の前で母と父が口論しているが、ボノスはその条件で十分だった。
実際問題として、国の者は召喚された巨大な黒龍を見ているのでバリアンテの龍は小さいと思うだろう。
しかし、実際に乗る事が出来るとなれば話は別だ。
怖くて近づけなかった存在に乗れるのだから。
例え一体でも軍事的にも戦略的にも効果が有るだろう。
ボノスは親子三人で空を駆ける妄想をしていた。

「ボノス、聞いて!!」
先程まで口論していた両親だがフロルが笑顔で問いかけて来た。
「今の貴方が成人の年齢になったら専用の龍を一体用意してくれるって!!」
「本当か親父殿!!」
「あぁ・・・」
それはボノスを放置していた罰としてフロルが見返りに要求した事だった。

「だけど母上の龍はどうするのだ?」
「ボノス、騎乗するには魔法が使えないとダメだからだ」
「そうなのか・・・」
「良いのよボノス。私は貴方の後ろに乗るから。でもボノス、貴方専用の龍よ」
「あぁ、ありがとう親父殿、母上」
子供らしい笑顔を見て嬉しかったエルヴィーノだ。


今更だが、若返りの魔法を妻や子供達に一部の者は知っているが、関係者に知らない者が多い。
したがってフロルとボノスは年相応の女性と子供に認識されるようだ。
この事も二人には注意しておいた。





数年後には俺も龍騎士だぜ。
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