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第14章 Sin fin
第406話 再び降臨3
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(俺はダークエルフだ)
色白で黒眼黒髪の若い親父がそう言った。
リーゼロッテが色白なのは、エルフである祖母のカリンの影響であろう。
そしてエルヴィーノはエルフ王ディーデリック・ファン・デ・ブリンクスの遺伝子を強く受け継いでいる。
それは、リーゼロッテは肌の色だけだがエルヴィーノは潜在能力もエルフの力を受け継いでいるからだ。
当然だが子供たちにも無作為に能力が受け継がれているのだ。
ボノスの場合は現在オスクロ・マヒアだけの様だが、潜在的な力は未知数だ。
「・・・知らない人種だな。この辺りでは聞いたことが無い」
(そりゃ、一族が住んでいるのはかなり離れた場所だからな)
「それで・・・親父殿は今頃になって現れてどうするつもりだ?」
(さっきも言っただろう、お前たち二人を連れて俺の国に帰るつもりだ)
「何を今更っ、俺たちはもう歳だっ! 母上は歩く事すら出来ないのだぞぉ!!」
(心配するな。アポストルの準備が出来たら説明してやる)
ボノスはフロルの体調を思って憤っているようだと、即座に理解したエルヴィーノだ。
(ところで二人に確認したいことがある)
「・・・」
フロルは笑顔で沈黙している。
「今更何を確かめると言うのだ!?」
(次の国王だ)
「親父殿が血族を罰し、現国王を退位させるのであれば一体誰を国王にする気なのだ?」
(それだけどな、”こいつ”にさせようと思ってる)
エルヴィーノが推挙した者は、先ほどまで闘技場で怯えていたガルダだった。
「ええぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「理由を聞かせてくれるか?」
ガルダは吃驚仰天している。
当たり前だがボノスは訳を知りたかったし、フロルは沈黙して見守っていた。
エルヴィーノは自らが現在のイスラを見て感じ取り、ガルダの生い立ちや行いを説明した。
そして国王にさせる一番の理由は、自らが辛い時でも弱者を守り、身を挺して仲間を守ってきた事だ。
他人に褒められて耳まで赤くなっているガルダを見て微笑んでいるフロル。
「・・・話は理解した。こやつの性格も悪くない。しかし親父殿よ、こやつでは若すぎるではないか!」
「そうかぁ? フロルも若かったけど国王やって来たよなぁ!?」
フロルは自らの記憶を思い出し微笑んでいた。
「母上にはアポストルや重臣も居たからではないか!」
「じゃガルダにもだれか付けば良いだろう?」
「しかし・・・そんな都合の良い奴は・・・今の国内にはおらんぞ」
「大丈夫だ、心配はいらん。俺に任せろ」
フロルは終始笑顔だった。
何故ならば、夢にまで見た男が昔と変わらない姿で目の前に立っているからだ。
ボノスの表情は硬いが、内心は嬉しかった。
何故ならば、心の底では憧れていた魔法使いの父親に会って話をしているからだ。
ガルダは驚きと不安で一杯だった。
何故ならば、同族の”おっちゃん”が伝説の魔法使いだと知り、自分を次期国王に指名したからだ。
闘技場を見下ろすと、アポストルが重臣と観客として来訪していた縁者の代表を集めていた。
(じゃ、そろそろ行くか。全員手を繋いでくれ)
フロルとボノスに使える召使い二人とガルダと共にエルヴィーノは闘技場に転移した。
「こ、これはっ!! 親父殿!! これも魔法なのかっ!!」
(ん!? 転移魔法の事か?)
「転移魔法と言うのか!?」
闘技場の最上階にある特別観覧室から神龍の足元に転移したからだ。
闘技場は騒然となっていた。
投げ出す者。
跪き拝む者。
興味津々で凝視する者など巨大な神龍が目の前で鎮座しているからだ。
フィドキアが抑えていても漏れだす波動は、只の人族には恐れ尊ぶ感情が沸き起こっていたのだ。
アポストルが兵士を使い、闘技場を整理しているとエルヴィーノ達が忽然と現れて驚いた様子だ。
(フィドキア、いったん戻ってくれ)
(ふむ)
フィドキアは飛び立つことも無く、頭上に現れた魔法陣が下りてきて、消える様に居なくなった。
エルヴィーノ達は闘技場の中心に移動し、関係者を円になるように侍らせた。
そこに、さっきまで国王だった男が跪いて進言して来た。
「黒龍王様!! 我らの血族をどうかお救い下さいっ!!」
それは”四断”を行った者達の事だ。
医務室に集められ処置を行ったが、一向に改善せず痛みは増すばかりで、その激痛により歪んだ顔から出る怨嗟の声は聞くに堪えないもので医療従事者も手が付けられない程だった。
縁者からの強い要望で”元国王”から黒龍王へ懇願し、救済してもらおうと考えたのだ。
「黒龍王様!! どうか我らの血族に寛大な慈悲をお与え下さいっ!!」
(お前たちが殺してきた者達も同じでは無かったのか?)
「ぐぅっ、しかしそれは・・・」
(なに、簡単な事だ。首を切ればよい)
「はぁ!?」
元国王は驚いた。
(聞こえなかったのか?)
「い、いえ。しかし首を切ればあの者達は・・・」
(今のまま死ぬまで苦しみ続けるか、お前たちの手で安息を与えるか二つに一つだ)
「・・・!!!」
苦悶の表情で絶句する元国王。
そのやり取りが聞こえていた縁者たちも同じだった。
余談だが、折角手に入れた力を失いたくない縁者たちは、絶叫して苦しむ手足の無くなった者を延命させようとするが、痛みで眠る事も食べる事も出来ずに衰弱していく姿を目の当たりにし、最後は”殺してくれ”と当事者から懇願されて命を絶つ事を選択する。
その様な事例を見て、全ての報告を聞いた元国王は恐怖と同居する事となる。
今までの行いが始祖である黒龍王に知れて自分だけが生き残ったからだ。
もっとも血族の娘は数人いるが、実行したのは自分達だからだ。
☆
関係者を集めて何をするのやら。
色白で黒眼黒髪の若い親父がそう言った。
リーゼロッテが色白なのは、エルフである祖母のカリンの影響であろう。
そしてエルヴィーノはエルフ王ディーデリック・ファン・デ・ブリンクスの遺伝子を強く受け継いでいる。
それは、リーゼロッテは肌の色だけだがエルヴィーノは潜在能力もエルフの力を受け継いでいるからだ。
当然だが子供たちにも無作為に能力が受け継がれているのだ。
ボノスの場合は現在オスクロ・マヒアだけの様だが、潜在的な力は未知数だ。
「・・・知らない人種だな。この辺りでは聞いたことが無い」
(そりゃ、一族が住んでいるのはかなり離れた場所だからな)
「それで・・・親父殿は今頃になって現れてどうするつもりだ?」
(さっきも言っただろう、お前たち二人を連れて俺の国に帰るつもりだ)
「何を今更っ、俺たちはもう歳だっ! 母上は歩く事すら出来ないのだぞぉ!!」
(心配するな。アポストルの準備が出来たら説明してやる)
ボノスはフロルの体調を思って憤っているようだと、即座に理解したエルヴィーノだ。
(ところで二人に確認したいことがある)
「・・・」
フロルは笑顔で沈黙している。
「今更何を確かめると言うのだ!?」
(次の国王だ)
「親父殿が血族を罰し、現国王を退位させるのであれば一体誰を国王にする気なのだ?」
(それだけどな、”こいつ”にさせようと思ってる)
エルヴィーノが推挙した者は、先ほどまで闘技場で怯えていたガルダだった。
「ええぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「理由を聞かせてくれるか?」
ガルダは吃驚仰天している。
当たり前だがボノスは訳を知りたかったし、フロルは沈黙して見守っていた。
エルヴィーノは自らが現在のイスラを見て感じ取り、ガルダの生い立ちや行いを説明した。
そして国王にさせる一番の理由は、自らが辛い時でも弱者を守り、身を挺して仲間を守ってきた事だ。
他人に褒められて耳まで赤くなっているガルダを見て微笑んでいるフロル。
「・・・話は理解した。こやつの性格も悪くない。しかし親父殿よ、こやつでは若すぎるではないか!」
「そうかぁ? フロルも若かったけど国王やって来たよなぁ!?」
フロルは自らの記憶を思い出し微笑んでいた。
「母上にはアポストルや重臣も居たからではないか!」
「じゃガルダにもだれか付けば良いだろう?」
「しかし・・・そんな都合の良い奴は・・・今の国内にはおらんぞ」
「大丈夫だ、心配はいらん。俺に任せろ」
フロルは終始笑顔だった。
何故ならば、夢にまで見た男が昔と変わらない姿で目の前に立っているからだ。
ボノスの表情は硬いが、内心は嬉しかった。
何故ならば、心の底では憧れていた魔法使いの父親に会って話をしているからだ。
ガルダは驚きと不安で一杯だった。
何故ならば、同族の”おっちゃん”が伝説の魔法使いだと知り、自分を次期国王に指名したからだ。
闘技場を見下ろすと、アポストルが重臣と観客として来訪していた縁者の代表を集めていた。
(じゃ、そろそろ行くか。全員手を繋いでくれ)
フロルとボノスに使える召使い二人とガルダと共にエルヴィーノは闘技場に転移した。
「こ、これはっ!! 親父殿!! これも魔法なのかっ!!」
(ん!? 転移魔法の事か?)
「転移魔法と言うのか!?」
闘技場の最上階にある特別観覧室から神龍の足元に転移したからだ。
闘技場は騒然となっていた。
投げ出す者。
跪き拝む者。
興味津々で凝視する者など巨大な神龍が目の前で鎮座しているからだ。
フィドキアが抑えていても漏れだす波動は、只の人族には恐れ尊ぶ感情が沸き起こっていたのだ。
アポストルが兵士を使い、闘技場を整理しているとエルヴィーノ達が忽然と現れて驚いた様子だ。
(フィドキア、いったん戻ってくれ)
(ふむ)
フィドキアは飛び立つことも無く、頭上に現れた魔法陣が下りてきて、消える様に居なくなった。
エルヴィーノ達は闘技場の中心に移動し、関係者を円になるように侍らせた。
そこに、さっきまで国王だった男が跪いて進言して来た。
「黒龍王様!! 我らの血族をどうかお救い下さいっ!!」
それは”四断”を行った者達の事だ。
医務室に集められ処置を行ったが、一向に改善せず痛みは増すばかりで、その激痛により歪んだ顔から出る怨嗟の声は聞くに堪えないもので医療従事者も手が付けられない程だった。
縁者からの強い要望で”元国王”から黒龍王へ懇願し、救済してもらおうと考えたのだ。
「黒龍王様!! どうか我らの血族に寛大な慈悲をお与え下さいっ!!」
(お前たちが殺してきた者達も同じでは無かったのか?)
「ぐぅっ、しかしそれは・・・」
(なに、簡単な事だ。首を切ればよい)
「はぁ!?」
元国王は驚いた。
(聞こえなかったのか?)
「い、いえ。しかし首を切ればあの者達は・・・」
(今のまま死ぬまで苦しみ続けるか、お前たちの手で安息を与えるか二つに一つだ)
「・・・!!!」
苦悶の表情で絶句する元国王。
そのやり取りが聞こえていた縁者たちも同じだった。
余談だが、折角手に入れた力を失いたくない縁者たちは、絶叫して苦しむ手足の無くなった者を延命させようとするが、痛みで眠る事も食べる事も出来ずに衰弱していく姿を目の当たりにし、最後は”殺してくれ”と当事者から懇願されて命を絶つ事を選択する。
その様な事例を見て、全ての報告を聞いた元国王は恐怖と同居する事となる。
今までの行いが始祖である黒龍王に知れて自分だけが生き残ったからだ。
もっとも血族の娘は数人いるが、実行したのは自分達だからだ。
☆
関係者を集めて何をするのやら。
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