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第13章 建国

第382話 建国

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「今日、ここに我らダークエルフが治めるサルクロスの建国を宣言します!!」

この日の朝、国王との謁見の場所である大広間は、親族に各国の代表や大勢の招待者と選ばれた国民で賑わっていた。
最奥にある壇上の壁には種族の印が大きく彫り込まれており、小柄だが品のある女王専用の椅子に腰かけてサルクロスの女王であるリーゼロッテ・デ・モンドリアンが建国を宣言した。

城内の歓声が伝播して、城下街に広がり港町にも伝わったようだ。
全ての者達が歓喜している様に見えたエルヴィーノだ。
何故ならば、”建国”などと言う偉業は誰も経験した者はおらず、その瞬間に立ち会ったのだから体感する感動は、奇声を上げる者、踊りまくる者に酒精を酌み交わす者たち、見た目に新しい料理をむさぼる者も大勢見受けられた。


エルヴィーノは前日に、姻戚関係となったそれぞれの国の義父や義母たち一人一人に心の籠ったお礼をした。

「我とモンドリアン殿の中ではないか、こちらの国の事も頼むぞ」
魔王が余計な事を言うと三兄弟に睨まれた。
「俺は自国の事で手いっぱいだからな。それより三人に来てもらって嬉しいよ」
「喜ばしい事だが、我はてっきりモンドリアン殿が国王になると思っていたのだがな」
「それは我も同感だ」
デセオとレスぺトだ。
「こうなる事は以前聞いたと思うけどなぁ」
以外にもブスカドールが覚えていたようだ。

「黒龍王、建国おめでとう。実に素晴らしい国ではないか! ガハハハハッ!!」
(内心自国の城の大きさで優っていると思っているんだろうなぁ)
「黒龍王、湖面に建つ美しい城と建国おめでとう」
前獣王夫婦にお祝いの言葉を頂いた。
「ありがとうございます。お二人の支えが無ければここまで出来ませんでした。本当にありがとうございます」

「「「国王、建国おめでとう」」」
アルモニアの歴代国王夫婦四人にお祝いの言葉を頂いた。
教祖と大司教はお留守番で、入れ替わりに訪れる予定だ。
「ありがとうございます。これも皆さんの援助が有っての事だと感謝してます」
「何を言う国王。全て国王の努力の賜物ではないか」
その事はあまり言えないので苦笑いで誤魔化した。

そして極秘裏に城下町にある専用の部屋へ転移して来た四人と会った。
「親父・・・来てくれてありがとう」
「ふむ、見事な城と街だ。良くやったな息子よ」
短い言葉だが二人の意思は通じたのだった。
「ジャックも来てくれて嬉しいよ」
「建国おめでとうございます」
「ロザリー。言葉では伝えきれないけど・・・ありがとう」
「良いのよ、あなた・・・」
「父上、おめでとうございます」
「ありがとうエアハルト」

エルフ王一行は変化の魔法で黒髪にしてあるので会場の誰にもバレてはいない。
名目上、会場でのエルフは先々代のアルモニア国王のマルソだけになっている。


肝心の妻たちだが、ロザリーの入国はエルフ王と同行が条件となっていて極秘扱いだ。
ロリとパウリナは簡単で形式的な挨拶だけだったが、最後の一言で理解した。
「「夜にね・・・」」
その意味する所は・・・

シーラは出産と同時にメルヴィの懐妊報告を知り、予定より早くエルヴィーノの蹂躙を始め、建国日は義姉たちを招いて思い出に残る一夜にする計画を立てていたのだ。


今のところダークエルフに貴族は存在しない。
したがって国として序列はモンドリアン家とその親族に一族を率いていたアルコンくらいだ。
シーラは一族では無いが、ノタルム国の手前エルヴィーノの夫人で同族を生んだ母として参列を許された。
アロンソを含む全員が壇上の下で一列に並び来客と謁見の挨拶をする。
壇上に腰かける女王には直接の挨拶は認めなかった。

本人からは言葉をかけたいと要望があったが、一族全員から反対されて礼をとるだけとなった。
他国の親族にも相談したが、新興国だろうとも王たる者が簡単に下々の者達と言葉を交わすと軽く見られると助言をもらった。
(・・・俺は良いのかよ)
自分の過去を思い出し、話が違うと思っていた。

その謁見の数だが、事前に許可した国民の者達も含めるとかなりの数だ。
アルコンから始まり、オリビア、デイビット、シーラ、メルヴィ、アロンソ、エルヴィーノで、最後に女王たるリーゼロッテだ。

順番はノタルムから始まりバリアンテ、アルモニアでメディテッラネウスはマルソが代理を務めてくれた。
その次からは有力な友好国の王族や大使に貴族たちが続き、最後に選定された国民たちが列をなす。

個別に祝辞を伝えるにあたり、エルヴィーノが一番緊張したのが魔王から女王への挨拶だ。
前日に邂逅を果たしたと言え、大勢の前であの魔王が余計な事を言わないかドキドキしていたからだ。
しかし、会場の全員が見守る中でつつがなく進んでいった。
それとなく謁見の休憩時に聞いてみたら思ってもいない返事が返ってきた。

「大魔王よ、我を何だと思っているのだ。あの程度の祝辞くらいは出来て当然だ」
(いや、余計な事言わないか心配だっただけだよ) 
「そうだぞ、大魔王。我らは義理とは言え親族になるのだからな」
何故かジャンドール親子が、女王への祝辞が終わるとエルヴィーノの呼称がモンドリアン殿から大魔王に戻ってしまった。
全てを聞かなかった事にして、休憩を挟んで二度目の謁見が始まると遠くだが見知った一団が視界に入った。
その数七人だ。
しかし七人目を見た途端、エルヴィーノは青ざめた。
(どうやって紛れ込んだんだぁ?)


シーラ目線。
「インスティント様ぁ!!」
「おめでとうシーラ」
「はい、ありがとうございます」
(先ほど”あの方”からも祝いの言葉を頂きました)
(ああ、お前には感謝しているぞシーラ)
(もったいないです。あのぉ、もしかして他の方々も・・・)
(ああ、我が兄弟たちだ)
(ひぃっ、恐れ多いです)
(安心しろ、ではまたな)
(はい)


アロンソ目線。
(フィドキアがデカくなってる・・・)
(ふむ、変身しただけだ)
(すっげぇぇ)
(フィドキアはこっちに来ないの?)
(心配しなくとも既に家は用意してある)
(じゃ又一緒に)
(ふむ、例の計画を立てなければな)
(楽しみだね)
(まったくだ)


メルヴィ目線。
コラソンは終始笑顔で。
龍人たちは緊張の表情で。
周りからは無難に会釈していたように見えていただけだが、誰にも聞かれないように念話で話していた。

念話が出来る者同士は、重要な要件は念話で意思を伝えていたのだ。


エルヴィーノ目線。
「コラソン、来てくれたんだな」
「勿論ですよ、おめでとうモンドリアンさん」
「ありがとう、コラソン。本当にありがとう」
「良いんですよ」
(ところでさぁ、ヴィオレタが来ているけど・・・)
(大丈夫ですよ)
(しかし・・・)
(今日の日を台無しにはしませんから安心してください)
(解った・・・食事店は準備できているから、あとは一度二人で行った方が良いと思う)
(了解だよ)

エルヴィーノが心配したのはヴィオレタとの関係をメルヴィとシーラに感づかれる事だ。
順番にメルヴィに挨拶する龍人たちはかしこまって見えた。
アロンソはフィドキアと手を握り、大きく振って喜んでいた。

「おめでとうモンドリアン」
「ありがとう、フィドキア。色々有ったが本当にありがとう」
「うむ」

「おめでとうモンドリアンさん」
「ありがとう、ラソン。世話になったね、本当にありがとう」
笑顔で返すラソン。

「おめでとうモンドリアンさん」
「ありがとう、インスティント。これからもシーラの事見守ってくれな」
うなづくインスティント。

「おめでとうモンドリアン」
「ありがとう、カマラダ。本当にありがとう。これからは”あの場所鮮魚店”にいつでも来てくれ」
「ああ、楽しみにしているよ」

「おめでとうモンドリアンさん」
「ありがとう、バレンティア。何度も何度も無茶言って本当にありがとう。次の街も楽しみにしてるよ」
「任せてくれ!」

「おめでとうモンドリアンさん」
「ありがとう、アルセ・ティロ。本当にありがとう、畑や果実は本当に助かっているよ。いつでもこっちに来てくれな」
「コラソン様の許しが出たらお邪魔するよ」

そして
「おめでとうございます、モンドリアン様」
「ありがとう、ヴィオレタ。本当にありがとう・・・」
(何も言うなよぉぉぉぉ!!)
(もう、私だってわきまえてますから!)
心の声が念話となって聞こえていたらしい。



そして謁見が終わると、あの夫婦がくわだてた娯楽が始まるのだ。
夕方から始まる特別な演目は、プリマベラが発案の幻想剣舞団と言うらしい。

変化した開祖のガブとファルソが先陣を切って舞い始めると、一部のクエルノ族たちが騒ぎ出した。
勿論、”あのファルソ”だと認識したからだ。
そのあとから出てくるクエルノ族の踊り子たち。

アルモニア式剣舞物語として5人から10人の多人数剣舞を行い、2対2の疑似対戦剣舞を舞うのだ。
舞は三段階あり、最初は徐々に人数が増え10人の乱舞の後に、まるで真剣勝負のような魔法と刃の激突音が臨場感を出す疑似対戦剣舞の次は、少数の美しい舞だ。
獣人達の笛と太鼓の音楽も強弱を付けて舞に合わせているようだった。
会場の観衆は目を皿のようにして見入っていた。

最後は全員が列を成し流れるような舞を繰り広げるさまに見とれていた会場の者達だ。
時を忘れて見入っていた剣舞が終わると奏でていた音楽もみ静寂が支配した。
すると関を切ったかの様に一斉に喝さいが鳴り響いた。

ガブとファルソは満足しただろう。
達成感と充実感に体が震えていた。
苦しい指導を乗り越えたクエルノ族に獣人の音楽隊も感動していた。
ただただ感動で体が震え、涙が溢れる者も多かった。


会場は二階が吹き抜けになっているので、国民は二階から見ることが出来た。
一階は招かれた王侯貴族に同族が近距離で迫力のある舞を堪能していたのだ。

女王からの賛辞を貰い幻想剣舞団は初めての褒美を貰う事となった。
ガブからは祝宴の為の舞で褒美を辞退したが、団員の為にと女王からの下知で受け賜わる事となった。

そうなると、一斉に幻想剣舞団へ質問攻めとなった。
しかし、これを予期した者は即座に隠れて変化を解き、何食わぬ顔で質問する側に変わっていた。
目立つのは幻想剣舞団と踊り子たちであり開祖は雲隠れして師範に押し付けたリアムだった。

その流れで会場は一気に祝宴となり、遅くまで宴の明かりは消える事は無かった。







ついに目標地点に到達しました。
長々とつたない文章でしたが、ご覧いただいてありがとうございます。

さて、この物語には事前に制限したことが有りました。
人の殺し方やおとしめ方では無く、生命の生み出し方に重点を置きました。
どちらも言葉の表現方法と物語で多様に違いが有ると思いますが、生命を創生させる過程の表現です。
また、無駄な戦闘で無意味なレベル上げを出さない。
(結果的に出たような・・・)
個々の物語を深堀りしない。
(多少は深くしたような・・・)
これらはサクサク物語を進める為でした。

そして英語禁止。
ですが早々に使ってました・・・ベッド。
いや、これは単に寝台と言う死語よりもベッドの方がエロかっただけなので・・・
自身も無意識に洗脳されてましたと、言い訳がましく弁解します。
途中にも、ちらほらあったような・・・
一応ですが、エロとは略しただけで英語以外の言語にも同じ意味でエロ~があり、読み出しはエロです。

更に、イラつかせる言動とキャラを出さない。
出しても最小限で即座に消えてもらう。
これは個人的に不快感が有り、本来の面白さにはそのようなモノが必要なくとも良いと考えているからです。

固有の方言的な言語の禁止。
全て標準語とし、過度な語尾と言い回しを無視。
個別の言語設定は他で飽き飽きなので止めました。

また、敵対勢力とライバルなどのセオリー無視。
ありきたりなので出しませんでした。
登場人物を”そのように”しても良かったけど、不快になるだけでやめました。
刺激の強いスパイスを効かせるよりも、ダシを効かせた方が後味もさっぱりすると思ったからです。


まぁ稚拙な表現の言い訳ですけど・・・
では、もう少し続きます。
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